±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

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1 新天地は食事が美味い

1260kaは軍馬を乗り捨てながら昼夜走らせ21日の距離

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 国境都市ブルームガルドを越えてサンストン領に入った俺は、最低限の食料を得ると脇目も振らず西へと向かっていた。先行していた追っ手を先んじて発見出来たからに他ならない。馬鹿みたいに鞍に家紋を付けた馬が陽動でなければの話だが、越境先で巻く事が出来ればだいぶ時間を稼げるハズだ。

名前:アウディ一
性別:男 年齢:15
肉体Lv:559new! 精神Lv:562new!
スキル:剣技(Lv547/∞)new! 乗馬(Lv546/∞)new! 基礎魔法(Lv100/-) 読み書き(Lv548/∞)new! 礼儀作法(Lv548/∞)new!
恩恵:±(Lv100/-)
称号:乱用者

 ブルームガルドへ向かう25日で4回【恩恵】を使用した。Lvが一度に100も上がるので、その度に動きを確認しながらの移動を余儀なくされた。肉体Lv159の状態で跳び移れていた木の幅が、いきなり100も上がっては跳び越えてしまうのも然りであった。

 魔物との戦闘も経験した。剣が軽過ぎて間合いが読めず、斬れる前に振り抜いてしまう失敗もあったが、同時に上がった剣技Lvのおかげで慣れるのも早かった。4回目の【恩恵】を使用した後は、斬った感覚が無くなった。

─暗くなる前に火を使っておく、か─

 夜間に火を使うのは敵に見付かる機会を増やす。なので食事は日のある時間に1日分を作り、分けて食べるようにした。森の奥、大樹の根元に竈を組んで、煙を木に纏わせる事で煙を拡散させられる。その様な発想を得られたのは精神Lvが上がった効果だろう。料理等した事もなかった俺が魔物の肉に塩を振って焼くのも、ただ焼いただけの肉を抵抗なく食べられた事も精神Lvの効果なハズだ。

 夜の森は闇に包まれ人の移動を阻む。肉を焼いた森から山1つ越えた先の尾根で休憩を取った。肉体Lvの向上により夜目は利くようにはなったが睡魔には敵わないし疲れもする。1日で60kaもカート 移動すれば当然だ。街道を走る馬であっても1日の移動距離は30kaにカート 届かない。さらに山を迂回する街道を通るのだから1日分以上の余裕は出来た。慢心は出来ないが、寝る。

 サンストン領の首都、ブリクストンに着いたのはそれから15日後。買った食料と塩が尽きていたが、5日毎に1度、都合【恩恵】を3回使って馬車で70日掛かる距離をここまで短縮出来た。本当なら途中の街に寄れば良かったのだが、情報を得られたくなかったのだ。しかし本当に遠かった。服や身体は【±】で汚れを落としているが、傷んだ服や装備は直せなかった。装備を変える必要があるだろう。一番の後悔は塩を増やせるか試す前に使い切ってしまった事だ。岩塩は、大事だ。

─とにかく、味のある食事をせねば─

 ジョッキにフォークとナイフの看板の店は大体酒場と決まっているが、朝から営業しているかはお国柄もあって分からない。だが、俺には分かる。強化された肉体Lvが肉を焼く音と匂いを感知した。香草も使われている。俺の足は躊躇わなかった。

「いらっしゃいませー」

「美味そうな匂いがしてな。席はあるか?」

「好きなトコ座って。カウンターで良いならソコね?」

 給仕の女に誘われるまま、カウンターに着く。テーブル以外で食事をするのは初めてだが、昨日までの手掴みよりは文化的な食事だ。肉焼きとスープとパンのセットが前金で銀貨1枚。酒は銅貨5枚の果実酒を頼んだ。

「あの、もしかして、お貴族様?」

「見ての通り、縁は切れてるから安心しろ」

 果実酒を頼んだ事で貴族だとバレてしまったようだ。平民は銅貨3枚のエールを嗜むそうで、いずれ機会があれば頼む事にした。

 久しぶりに美味い食事をして、ついでに服屋と武具屋、食料品店の場所を聞く。旅支度であれば冒険者ギルドの直営店があると教わった。

─加入はまだ先…にすべき、か─











ka:カー アト。1aを1000倍したもの。1aは地球で約1m。

 
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