±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

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1 新天地は食事が美味い

力は使うべき時に使う

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 宿屋の値段は素泊まり無料。しかし食費は高いのですぐに下山の運びとなる。下りは荷運びの猛者達の後ろに着き、降り方を真似ながら素早く下山する事が出来た。落石や、ルートを外れて罰せられる事を無視すればもっと早く降りられるだろうが、麓からは監視の目もある。不用意な事は避けるべきだろう。

「あんた早いな」「お前もコレで食ってけるぜ?」

「見様見真似で降りただけだ。それに上がるのはコレの比じゃないのだろ?俺はコイツで食って行くよ」

 荷運び達と仲良くしてたら役人の当たりが弱くなった気がする。コイツ等の収入は入山料に掛かっているのだろう。常連贔屓だな。

─さて、そろそろか…─

 サットルを素通りし、進路を西へ。しばらく歩いて耕作地を抜け、整った林の街道に入ると足を早めた。

─アンクト・エヴァンズから、肉体を1つ減らせ─

 俺にはその権利がある。

『アンクト・エヴァンズから、肉体を1つ減らしました。アンクト・エヴァンズは消滅しました』

 肉体が消滅すると、傍目にはどう見えるのだろう。服だけになって床に落ちるのだろうか。街道を全力で走りながら、俺は考える事を止めた。

「おいおい、危ねぇなあ」「兄ちゃん、こんな所で焚き火なんてしてたら魔物に襲われるぜぇ?」

 夜になり、干し肉を炙りながら過ごしていると、ガサガサと低木の葉を鳴らしながら男達が姿を現す。注意を引いて、不意打ちを掛けるつもりだろう。俺も迂闊だが、お前等も迂闊だ。

─俺の周囲100aから、視界外にいる人の肉体を全て…違うな─

「俺はコレで食っている。魔物なら歓迎だな」

 得物を叩く音に、男達は警戒して足を止めた。見てくれからして野盗だが、野盗ならアジトがあるハズだ。

「お前等は魔物か?でなければ住処に戻るんだな。魔物に襲われるぞ?」

「へえ、兄さん肝が据わってんじゃねえの」

─俺の周囲100aから、視界外にいる敵意ある者を全て減らせ─

「腕も立つんだ。1人で焚き火出来るくらいにはな」

『アウディーの周囲100aから、ゲーブルを減らしました。アウディーの周囲100aから、ドルンを減らしました。アウディーの周囲100aから、キックスを減らしました。アウディーの周囲100aから、ガンを減らしました。アウディーの周囲100aから、エリウス・トン・イネルズを減らしました。アウディーの周囲100aから、ピットを減らしました。視界外の敵意持つ人物は消滅しました』

「取り敢えず、5人だ」

「あ?何言ってやがる」

「今殺した。ドルン、キックス、ガン、エリウス、ピット。元貴族もいるのだな。後何人居る?」

「なっ!?」「何で名前知ってやがる!」

 魔物が出ると言うのなら少しは静かにして欲しいモノだ。消滅させた男達の名前を挙げると動揺したのか声を荒らげた。

─俺の周囲100aから、俺以外の人物の移動力を全て減らせ─

「うっ、何しやがった!?」「動けっねえっ」

「動けなくした。さあ、お前等何者だ」

 騒いで煩い順から1人ずつ首を撥ね、最後に残った小男がやっと口を開いた。やはり野盗だったようだ。元貴族の男は野盗の用心棒だと。そんなに儲かるのか?働いた方がマシだと思った。

 定期的に範囲の敵を消滅させながらアジトに案内させると、森の中にひっそり佇む集落に着いた。家は10戸程だろうか。そんな事より、魔物が出るのに住めるのか?殺す前に聞けば良かった。

─さて、と…。俺の周囲500aから、俺以外の男の意識を減らせ─

 頭の中で、いくつもの名前が意識を減らす。そして全ての意識が消滅すると、静かに集落へ近付いた。

 集落には家が12軒あり、小さい小屋には誰も居なかった。外で俺に殺られたのか、集落内で殺られたのかは分からない。そして最後に残した一際大きい丸太の家に、ソレは居た。家に入ると寝室から飛び出して来た女は、裸にシーツを纏うだけであった。

「あンた、何モンだい?」

「野盗に襲われてな」









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