±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

1 新天地は食事が美味い

これが知られていたら目の前で斬り付けられていただろう

「野盗に襲われてな」

　俺の答えに動揺したか、女は身を強ばらせた。

「野盗なんて儲からん商売、する意味あるのか？この辺りなら乾パン焼いて山登りするだけで十分食べて行けるだろうに」

「っ！知った口聞くんじゃないよ!!あンたは何モンで男達をどうしたかって聞いてんだ!?」

─この女から、俺への負の感情を全て減らせ。この女から、俺への性的欲求を子を成したくなるまで増やせ。この女から、汚れを全て減らせ─

「あ……、まあ、良いさ」

『リタから、アウディーに関する負の感情を減らしました。負の感情は消滅しました。リタから、アウディーへの好意を増やしました。リタから、汚れを減らしました。新たな汚れが発生しました』

　頭の中でリタと呼ばれた女は【恩恵】の力により立ち居振る舞いが変わった。怒りの表情は穏やかな笑顔に変わり、強ばらせていた体は脱力し、しなやかに俺に近付いた。

─感情の変更も出来るのか─

「長く使ってなかったんだ。良いだろ？」

「アタシなんかに遠慮は無用さ。好きなだけ孕ませておくれよ」

　丸太の家に誘わいざな　れ、寝室へ向かう。先程まで他の男と交合っていたベッドは皺が寄り、気持ち悪い臭いが漂って来そうだ。

「いつだって良いよ」

　女をベッドで四つん這いにさせると、女とベッドから汚れを減らし、装備を外した。

　肉体Lvの恩恵もあり、朝まで腰を振り続けた程度では疲れなくなった。だが睡魔には勝てない。コイツ等の仲間が残っていたなら俺は殺される可能性がある。寝る訳には行かない。

─物は試し、か─

　睡魔避けに打ち付けていた腰を止める。女は既に気絶していた。自分から好きなだけと言ったのだから問題は無いな。

─俺から、生命探知スキルを1つ増やせ─

　既にある物を増減させる事は出来た。使いかけの岩塩は使いかけの状態で増える。元々無い物を増やす事は出来るのか？これが出来ればやりたい放題だが…。

『アウディーから、スキル【限定察知･生命】が増えました』

─限定？そうなるのか…。ステータス─

名前:アウディ一
性別:男　年齢:15
肉体Lv:1159　精神Lv:1162
スキル:剣技(Lv1147/∞)　乗馬(Lv1146/∞)基礎魔法(Lv100/-)　読み書き(Lv1148/∞)　礼儀作法(Lv1148/∞)　限定察知･生命(1/10)new!
恩恵:±(Lv100/-)
称号:乱用者

限定察知･生命(1/10):周囲100aに存在する生命を察知する。目標を指定する事が可能。地中、水中の察知は出来ない。

　出来てしまった。早速人物を指定して使ってみると、中心には俺と、重なった女が青い色の人型となって頭に浮かんだ。100aの範囲にはそれだけで、人は俺と女の2人だけであると示された。

─俺から、1日分の眠気を減らせ。この女から、昨夜使っただけの体力を増やせ─

『アウディーから、眠気を1日分減らしました。リタから、昨日消費した体力を増やしました』

「あ…、起きてたんだね。ごめんよ、寝ちまって」

「食事をしたら、続けるぞ？」

「あは、お安い御用さ。愛してるよ…旦那」

　簡単な食事を摂って昼まで交合った。俺とリタの交合いは3日続いたが、その間人の往来は無かった。

「そこで待ってれば良いんだね？」

「飯炊きとして働けば食うに困らないだろう」

　俺は集落で見付けた背嚢に増やした乾パンを詰めて、金と共にリタに持たせた。女の足では時間が掛かるかも知れないが、こんな所で待たせていては飢えるだけ。料理が出来るこの女なら働いて食べて行けるだろうと送り出した。そして俺は女に背を向け、さらに西へと歩き出す。

　それから30日。アレイムーム領の首都アレイムガルトに入り、10日程金策のための魔物討伐依頼をこなしていた。野盗から得た金は女にも多少分けたし、生活するには足りなかったのだ。乾パンを増やせるから空腹に困る事はないが、美味い食事は必要だ。