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1 新天地は食事が美味い
ランクを上げる意味等あるのだろうか
しおりを挟む「アウディーさん、今日も有り得ない程キレイな状態での持ち込み、ありがとうございました」
─嫌味なのかそれは─
脳を減らして殺す俺の殺り方は受付嬢から嫌がられている。生きたまま持ち込まれたと勘違いされるのだ。解体士からは喜ばれていると言うのに。ちなみに今日はオオミヅチと言う大型の蛇で見た目は酒樽の毒の無い種類だ。棒とロープで組んだ橇に10匹積んで、金貨5枚の成果であった。
「ケッ、ランク外の獲物ばっか狩りやがって」「俺等の獲物奪うんじゃねーよ」
買取りが終わり、踵を返すとぞろぞろとやって来た男達。狩り草を見て難癖つけて来る辺り俺よりランクが上なのだろうが、口を開いたのは2人だけ。暇なのだろうな。
「狩れるのだから仕方無いだろ。襲って来るのを無視も出来んし、お前等も狩れば良いだけの話だ。散れ散れ」
「クソが」「精々外で勝ち合わねぇ事だな」
─あの男から、戦闘時のみ全ての能力を1にまで減らせ─
『ジャムハーンから、戦闘時のみ全ての能力を1に減らしました』
─これで良し─
飯を食って寝るに限る。金も貯まったしそろそろ街を出るのも良いかも知れんな。
背負子と、コレに取り外しが出来る背嚢。そして初めて、鍋とお玉とお椀とスプーンを買った。肉は昼夜構わず狩る事が出来るが、乾パンは中々食べ難く、以前食べたパン粥が恋しくなったのだ。そして乾燥ハーブ。【恩恵】を使えば肉の臭みも無くなるが、香り付けは必要だと感じて購入した。
「その格好、街を出るのですか?」
2日経って、冒険者ギルド。受付嬢は何かを察して言葉を発する。多分勘違いだろうが気にしても仕方が無い。
「王都に向かう予定なんだ。旅費も貯まったから立とうと思ってな」
「でしたら早めにランクを上げた方が良いですね。王都ではランク上げがしづらいようですし」
聞くと、王都周辺では獲物の数も質も低く、ランク上げに遠征させられたりするのだと言う。王都周辺に凶暴な魔物が彷徨いていては治世に関わるよな。ここでなくても良いので、近くの街でランク上げをしておくよう勧められた。
さりとて街を出てしまえば全速力での移動となる。街にも寄らず、焼いた肉とパン粥で済ませて王都へ着いてしまった。今思えば愚かな選択であった。
「それは、遠いな…」
俺の足なら遠くはないが、それを披露するにはこの王都では目立ち過ぎる。王都カストル・デラクトスの冒険者ギルドにて受付嬢の放った言葉に思わず声が出た。
「馬車の往復で10日程です。遠くはありませんよ」
2日で戻ったら不正を疑われるのは間違いない。
「コレを請けないとランクが上げられませんし、請けられる依頼の質も上がりませんから。頑張ってくださいね」
請けざるを得なかった。2日で戻り、残る8日は宿に引き篭ろうかとも思ったが、馬車の利用記録を調べられてしまっては引き篭った事がバレてしまう。ギルドを出ると、馬車屋に明日の予約をし、食事付きの宿に身を寄せた。食事は良かった。
翌日になり、南門にある馬車の停留所に向かうが、乗客が全て乗り込んでも発車する様子がない。行商人らしき男が馭者に文句を垂れる。
「なぜ出発せんのだっ、街に着くのが遅れてしまうだろうが!」
「そろそろ来やすよ。…ほらアレ」
馭者が顎で示した方向は南門。アレと言うのは不敬であろう、豪奢な4頭引きの馬車が門へと近付いて来ていた。門兵も総出で出迎え、中に御座す者の位の高さを連想させる。
─な、あれは、御用馬車ではないか─
御用馬車。王家と公爵家が使う馬車の総称だ。護衛と荷物用馬車を引き連れて門を出て来た。通り過ぎざまに家紋を確認する。
─知らない家紋…だが紛い物でもこれだけの馬車は作るまい─
国王と王妃の家紋を左右に合わせ、下に見知らぬ家紋が組み合わされた紋様に、なるほどと感じた。これは王子か王女の馬車に違いない。でもなぜだ?特にどこへ行くと言うお歳でもないだろうに…。
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