±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

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1 新天地は食事が美味い

貴族と宗教には関わらない方が良い

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 親書を携え街道を行く。姫様がお休みになられてすぐ、俺は停泊地を離れた。姫様に同行すれば10日で着く場所であれど、後9日もお喋りに付き合えるだけのネタが無い。もし次があるのなら、芸人一座や吟遊詩人を同行させるべきであろう。

 夜が明けて、ニュールンベルクに到着する。ここは王都カストル・デラクトスへの流通の中心となる都市で、東西南北の街道が交わる商業の都。もちろん国の直轄領だ。領主は王都から派遣された執政官が務めていて、親書を見せるとこの地に隣国の公爵家が立ち寄る事は予定されていると聞かされた。

「その割に…いや、俺が口を挟む事ではありませんな」

「いえ、その通り。まだ予定日ではないので街道の魔物狩りを冒険者にさせている所である。貴殿も冒険者であれば今を好機とするがよろしかろう」

「元々ランクアップの依頼にて参じた身。上手く重なれば喜んで働かせて頂こう」

 執政官に礼を取り、最後に気になった点をいくつか上げて役所を後にした。

 後8日、暇である。出発から到着が早過ぎる俺は、ギルドに行けば移動の速さを問われかねない。勝手に街道の掃除をしても報酬を得られないとなると、やる事が無くなってしまうのだ。街の中をブラブラする事に決めた俺は宛もなく大通りを歩く。

─気を付けて見ると割と多いか。コレは指出口を叩いてしまったな─

 通りの端々には軽装の兵が立っていて、街に溶け込んでいる。あの執政官には失礼な事を言ってしまったと自分を恥じた。そして兵を溶け込ませているだけあって治安が良い。王都にすらある貧困区でさえある程度清潔に保たれているし、朝の炊き出しを終えたのであろう、帰り支度をしている教会の一団の周りには飢えを我慢している者はいない。いるのは手伝いを買って出る者だけだ。

「貴方も炊き出しへ?申し訳ございませんが、朝の部は終えてしまったのです」

 見過ぎてしまったか、片付けをしていた修道服の女が寄って来て、詫び言を受けてしまった。

「俺はコレで食って行けるので心配ご無用。この区域の秩序に感心していたのだ。良く整えられている」

「神のご意思の賜物です」

「人の行動の結果でもある」

「神のお導きの賜物です」

「信じた者の多さでもある」

「貴方はお信じになられない、と?」

「正直分からないな。良き【恩恵】を得たせいで、不幸を負った者が居る」

「それで、人の行動の結果、と」

「神を蔑ろにするつもりが一切無い事。これだけは承知置き頂きたい。俺も不幸を負いかけた身でね」

 神を信ずる証拠をと、片付けの手伝いをさせられた。言い方が卑怯である。

「兄ちゃん、あの女は止めときな」「ああ、アレは神様にほの字だかんな」

「そう言うつもりは…」

 俺はそこらの平民より学を修めている自信がある。宗教を修める女が神の妻になるべくして努めている事は知っているのだ。

「神は静寂を好みます」

─うわ来た。逃げるな平民っ─

「…神は森の獣が嫌いと見える」

「ここは人の住まう街ですよ?戻り次第夜の分の仕込みがありますので、き事風の如く、ですよ」

─それは兵法の一節だろうに─

 家事は女の戦争と聞くが、人は争いから逃れられぬ生き物なのだな。その場の片付けを終えても離してもらえず、宗教戦争の現場へと連れて来られてしまった。

「荷降ろししたら洗い物です。貴方は神を軽んじ過ぎます。奉仕の心を授かる場を得られた事に感謝してご奉仕なさい」

「全く、冗談ではない」

「神は静寂を好みますっ」

 賑やかな修道女には、神様もうんざりしておられるに違いない。仕方無く、奉仕の心を授かった。

 荷降ろしした食器と鍋が井戸前に備えられた洗い場に並べられ、俺からの奉仕を待っている。

─麦粥か…。俺の周囲5aにある物から、汚れをあるだけ減らせ─

『アウディーの周囲5aにある物から、汚れを全て減らしました。新たな汚れが発生しました』

 後は水で濯いで拭いたら終了。これで帰れる。











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