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1 新天地は食事が美味い
聖職者は嘘を吐かない
しおりを挟む「あら、お得意なのですね。ではコチラに」
帰れなかった。この女、監視系のスキルでも持っているのか?
「まだ何か?」
「奉仕のお礼に礼拝なさってください」
─神が感謝の言葉でもくれるのか?─
「ちゃんと奉仕させて頂いた事を感謝なさってくださいね」
表情でも読まれたか、念を押されてしまった。礼拝堂に連れ込まれ、教壇の前で膝を着く。両膝を着く平民スタイルだ。それは構わない。
「戻るまで感謝なさっててくださいね」
全く冗談ではない。
─全く、冗談ではない─
「全く…、冗談ではないぞ…」
有用な【恩恵】を賜った事には感謝しているが、それで家を追われたのは勘弁して欲しかった。そこそこ有用で、あの凡夫が許容出来る程度のモノで良かったのだ。これでまた弟達に有用過ぎる【恩恵】が付いて、凡夫が弟達に殺意を向けるような事になったなら、俺は絶対に許さん。この世の教会を破壊し尽くし、この命果てるまで聖職者を殲滅至らしめる事を誓う。
─だから神よ、弟達に慈悲を…─
「熱心ですね。きっと神様はお聞き届け下さりますよ」
「意外と敬虔でしたのですね」
愚痴が長かったようで、あの女が戻って来ていた。そしてその傍らには司祭服の女が立ち、俺の愚痴を神が聞いてくれていると言う。あの女の上司だろうが、こちらの方が人間が出来ていると思われる。
「返事があれば分かりやすいのですがね」
「普通の方が神様の声を耳にすれば召されてしまうと言われています」
「良かったですね、息があって」
「エルデル、言葉が過ぎますよ?」「はい。申し訳ございません」
「名乗りが遅れまして。私、この地で司祭を任されております、ファルナーと申します。此度は炊き出しのお手伝いを賜りまして深く感謝致します」
「丁寧な挨拶痛み入る。俺はアウディー、見ての通り冒険者をしている。この街が清らかなのは執政官殿と貴女のお力の賜物でしょうな」
「神のご寵愛の賜物ですっ」
「エルデル?神様のご寵愛は全ての人に分け隔てなく賜われているのですよ?」
「そう、ですね。申し訳ございません」
その一言に関してはエルデルと呼ばれた女に同意せざるを得ない。神が人を愛すると言うのなら、不幸を背負って生きる者は愛してはいないのか。人を愛すると言うのなら、他の生き物はどうなのだ。
「貴方、また神を疑っておりますね?懺悔なさいませ」
また表情に出ていたか?だが懺悔する程の悪さをした覚えは無い。
「懺悔よりありがたい話を聞きたいね」
「まあ。でしたらお礼も兼ねて少し話をしましょうか。エルデル、少し時間を取ります。調整なさって」
「司祭様っ」
司祭はエルデルの言葉を遮り、頑なな態度を見せる。エルデルはそれ以上言葉を挟めなくなり、俺を誘う司祭の後ろに付いて来た。
「ここは?」
「私の執務室です。どうぞお入りになって」
階段を上がって廊下を行き、尖塔の上の部屋。城であれば牢屋がある部屋が司祭ファルナーの執務室であると言う。中はキレイに整えられていて、魔道具の灯りが外と変わらぬ程度に明るく照らされていた。
「さあ、お掛けくださいな。エルデルは炊き出しの準備にお戻りなさい」
「しかし、それでは…」
「私がアウディー様に何かなさるとでも?」
エルデルは少しゴネたが、結局は上司の強権で追い出されてしまった。
─ファルナーから、俺に対する好意を増やせ─
「全く、心配性なのだから…」
『ファルナーから、アウディーへの好意を増やしました』
「何かなさるのは私では無いと言うのに…ふふっ」
ファルナーはそう言いながらも司祭服を外して行く。体から離れた衣服はその場で丁寧に畳まれて、ソファーに座る俺の対面に置かれる。その度に突き出される尻に俺の鼓動は速まった。
「お気になさらず。私に奉仕させてくださいな」
こちらも武装を外さねばと、帯剣ベルトを外す音が聞かれてしまった。
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