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1 新天地は食事が美味い
18-10歩兵隊
しおりを挟む周囲2000a、自分も含めて害意を取り去ってしまったアウディーは湯から上がってギルドへ向かった。ランクアップ依頼を請けるためだ。ギルドの受付嬢には出たら街には入れないと念を押されたが、姫様達の滞在が明後日までなのを知っている彼は、どうせ野営もあるからとゴネて依頼をもぎ取った。
門前には、王都や各都市に向かう馬車が列を成して街を出る。この数日足止めを食っていた者達だ。徒歩で出る冒険者の姿もあり、アウディーもそれに乗じて街を出た。
「お前も王都に行くのか?」「だったら一緒に行こうぜ!」
「いや、俺は依頼で何日か森の中だ」
同行していた冒険者達とはいくつか言葉を交わしたが、畑の切れ目で別れると1人森へと向かった。
─街への行きにでも狩っておけば…、だが依頼前にやったモノを依頼達成と見なされるかは分からんか─
過去を振り返っても仕方がない。切り替えて討伐に挑む。ランクアップ依頼の内容はニュールンベルク周辺の魔物討伐10体。指定された証明部位をギルドに持ち込めば依頼達成となる。今のアウディーにとっては瑣末事であった。
─あそこか─
街の周りをぐるりと歩いて夜。【限定察知・生命】は人の群れを見付けた。森の中に集落はなく、いるのはろくな者ではないだろう。アウディーは51人の人の群れから害意を減らし、群れに向かって歩み寄った。
「誰だ?」「こんな夜更けに我等の野営に何用だ」
「こちらこそ、こんな所で野営しているのを見付けてな。軍の演習であるならば要らん世話であったようだ」
「こちらは演習ではなく作戦行動中である」「貴様こそどうしてこんな場所に居る。街に入れんで路頭に迷ったか」
見た目で分かる揃いの鎧は軍人以外の何者でもない。演習であれ作戦行動であれ、部外者が近付けば排除するのが軍人だ。だがこの場にいる誰もそれをしようとしない。誰かに対する害意が消えてしまったからだ。兵達はアウディーを街に入れず難儀している者と認めると、一時停泊の許しを得るために隊の代表の元へ案内した。
「その者が、難儀している冒険者か」
「お初にお目にかかる。俺は冒険者アウディーと申す。保護を受け入れて頂き感謝致す」
「ふむ、貴族の生まれか。私はホールブレン帝国第18歩兵部隊10番隊隊長、グエン・マットロアである。物資は出せんが休んで行くが良い」
アウディーはマットロアの好意を増やす。相手が男でも好意は増えたようで、軽食付きで話の場を設けられた。とは言え異性とするような話はせず、彼等の作戦行動の内容を聞き出す事に終始した。
「殿下を亡き者にした所で喜ぶのは残るお二方の派閥だけ。それは分かっておるのだ」
「それならば、婿入りさせてしまえば排除したのと変わりますまい。マットロア殿の主様もお喜びになられるのでは?」
「そう、上手くは行くまいよ…」
マットロアの主を聞いて、我が家とは大違いだと感じるアウディーだが、それならば解決も容易いと考えた。
「マットロア殿、俺に主様へのお目通りの名誉を賜りたい。王子殿下の誰をも失わず次代を立てる事、身命を賭してお約束致そう」
「……承知した」
その日は遅くまで話し合い、朝には朝食を頂いた。第三王子が王都へ向かうまで街に入る事は出来ないので、翌日まで依頼の狩りをして過ごす。狩りたての生肉は兵達にとても喜ばれた。
「では、手筈通りに」
「隊長殿もご武運を」
夜明けの開門と共に、第三王子と姫様の一行はニュールンベルクを王都へ向けて出立した。帝国側にある停泊地からは馬車が列を成して向かっているに違いない。アウディーとマットロアは言葉を掛け合うと礼をして別れた。兵達は夜になるのを待って帝国に戻る。アウディーはニュールンベルクへと向かった。
「王都へ、戻られるのですね…」
「後10日はここに留まるが、構わないな?」
「必ずや、私のの元へっ。必ずやっ」
ファルナーを、ついでにエルデルも抱いた。
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