±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

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2 王国から帝国へ

ディクストプンの街

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 アウディーは街道を人並みの速度で走り、いくつかの村を素通りして街へと辿り着く。大量の魔物の皮が積み上げられた背負子を見て、門兵達は感心した。アウディー的には大した敵ではなかったが、並の者では太刀打ち出来ない魔物であり、買取りに持ち込んだ冒険者ギルドでは同業者からの視線が至る所から飛んで来ていた。

「お客さん、初めて、よね?」

「今着いたばかりだ。コレが売れんと宿も取れんのでな、良い食事もしたいから買えるだけ買ってくれ」

「ギルド証見せてくれる?」

「場所を変えるなら構わんよ」

 同業者からの視線も嫌だし、ギルド証の内容を読まれても嫌なので、場所を変えるなら…と提案すると、奥にある会議スペースへ誘導された。

「査定の道具を用意しますんで、少々お待ちを」

 20人程が入れそうな部屋には8人掛けのテーブルセットがあるだけで、窓の外はすぐ路地の薄暗い部屋であった。買取嬢は魔道具の灯りを付けるとすぐに部屋から出てしまった。1人暇な彼はテーブルの上に店開きして時間を潰す。そしてそれからしばらく経って、ようやく買取嬢が戻って来た。

「お客さん、お待たせしてすみません」

「お前が馬鹿みたいに高い素材を持ち込んだ奴か」

「高いのかコレ。馬鹿でも狩れるだろこんなモノ」

 買取嬢の後ろにいた男がズカズカと店に寄って来て人を小馬鹿にする。アウディーも倣い、椅子を離れると男の前に居直った。

「お客さん、ギルドマスターですよ。マスターもお客さん煽らないでくださいっ」

「ランク4の素材だぞ?何人の冒険者が出張ってっと思ってんだ。ンなモン何十枚も獲って来やがって、ソイツ等の食い扶持が無くなっちまうだろうが」

「ソイツ等が弱いだけだろう。俺のせいにするな。それにコレは砦からの移動中に獲った物だ。ココの雑魚がどれだけの移動が出来るかは知らんが、そこまで遠征出来るのか?」

「やめてください!」

 買取嬢が割って入り2人の言葉を止める。

「お前が連れて来たのだろ」

「勝手に付いて来ちゃったんですっ。マスターは煽ってますが、冒険者さん達の生活の事を考えての言葉ですから、気持ちは汲んであげて欲しいです」

「俺も冒険者で今金がない。気持ちを汲んで欲しいがな」

「分かりましたっ」

 ギルド証を提示して、買取りの査定が始まった。

─勝手に覗くな─

「っ!…チッ」「マスター、もう出てってくださいよ…」

 アウディーの放つ圧にギルドマスターは舌を打つ。買取嬢は覗き見男に睨みを利かすと一言吐いて査定に戻った。

「ランク2の力じゃねぇだろお前」

「野良の買取りで食えていたのでな」

「それだと査定額が下がりますよ?けどこれだけ良い物だと下げられないんですけど」

「最低まで下げちまえ」

「命を懸けたいならやってみろ」

「やめてくださいったら!」

 買取嬢が怖い顔をするので2人は黙った。そしてやや時間を掛けて売り物の査定が終わった。査定額はだいぶ割り引かれたと言うが、ギルドマスターの顰み面を見てその額で渋々手を打った。

「とっととランクを上げてドラゴンでも狩って来い」

 ─ダンジョンも無しに何がドラゴンだ─

「食う分以上に獲ってどうするのだ。それにドラゴン等見た事もないぞ」

「とにかく!これ以上ランクに合わん素材は買い取らせんからなっ」

「ならばランク4になって乱獲してやるぞ?」

「だからやめてってばっ!!貴方はランクを上げる事!ランクを上げれば査定額も上がるんですから。良いですね!?マスターもいい加減にしないと本部にこの事密告しますからね!?」

─それは密告になっていないのではないか?─

 ギルド証に金を封じると、会議スペースから追い出される。ギルドマスターは文句タラタラ階上の自室へ戻って行き、アウディーも外へ送り出され、またのお越しをお待ちしておりますと丁寧な嫌味を言われた。追い出す前にランクアップ依頼を請けさせてくれても良いのではなかろうか。









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