±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

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2 王国から帝国へ

サダッシュの街

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 アウディーはランクアップ依頼を請けた。内容は護衛依頼であり、サダッシュからディクストプンへの要人警護と説明を受ける。

「サダッシュのギルドに向かえば良いのだな?」

「ええ、そうなのですが…」

「早く行っちまえ」「マスター!?」

「急ぎなのだろ?今から出るよ」

「…ありがとうございます。ご無事で」

 ヨーヨーシュンから書簡を預かり混み合うギルドを後にする。サダッシュへは馬車を使って30日と言われたが、彼の足をもってすれば時間はあって無いような物だ。

─食事も女もお預け、か─

 アウディーは食欲と性欲に飢えていた。一晩だけでも…と心揺らぐが、ヨーヨーシュンの話しぶりを見て急いだ方が良い事も窺えた。ならば優先を違えてはならない。彼は門へと急いだ。

 サダッシュへ向かう街道には、商人が乗る馬車が列を成し、街に入る手続きを受けていた。普通ならスッと入れるモノだが積載量が多く、確認に手間が掛かっているらしい。馬車の列を横目に門を抜け、早足で街道を進んだ。

─他の街でランクを上げておけば…─

 考えは途中で止まる。どちらにしてもディクストプンのギルドに行った時点で巻き込まれていただろうからだ。ランクアップに託けかこつ て騙すのと、無理矢理指名依頼を押し付けるの差でしかない。

 中3日でサダッシュの街に到着したアウディーは少しだけホッとした。街を出る馬車や人は多いが、街自体はまだ何者かに襲われていたりはしていなかったからだ。だが冒険者ギルドに入るなり冒険者達から嫌な視線を受けて気持ちが切り替わる。

「申し訳ありません。ご新規さんですよね?今依頼斡旋の業務は出来ない状態で…」

「それは困るな。ヨーヨーシュンからの依頼を請けて来たのだ。何とか繋ぎを付けてくれ」

「え!?わ、分かりましたっしばらくお待ちください」

 受付嬢はヨーヨーシュンからの依頼と聞いて奥へ駆けて行ってしまった。相変わらず嫌な視線を浴びているアウディーは内心イライラしていたが、それを表に出す程幼い精神はしていない。ただひたすらに無言を貫き受付嬢が戻るのを待った。

「ご新規の方、お待たせしましたー。こちらへお越しくださーい」

 奥から顔を出した受付嬢は、多分アウディーであろう新規の者を呼ぶ。アウディーは自分の事だろうと受付嬢の方へ向かうが、彼と同じ事を考えた冒険者は4人もいた。

「あ、すみません。呼んだのはこちらの皮装備の人ですので…、と言うより貴方達新規ですらないじゃないですか」

「そんな野郎よりよぉ、俺等にその仕事回せよ」「俺等『金の海』が引き受けてやるってんだ」「雑魚はすっこんでろや、なあ?」

「おい、勘違いするなよ?これはただのランクアップ依頼だ。食うに困っているなら教会の炊き出しにでも紛れ込むんだな」

 ランクアップ依頼は報酬が安い。ディクストプンからサダッシュまでの片道の移動代だけで普通なら大赤字になる案件だ。馬鹿共もランクアップ依頼と聞いて舌を打つ。馬鹿なりに割に合わない仕事だと気付いたようで、受付嬢を押して向かうアウディーを追い掛けては来なかった。

「押さないでくださいっ、後お尻触りましたね!?」

「鎧が触れただけだ。それにお前が遠くから呼ぶなんて事をしたせいで馬鹿共が寄って来たのだぞ?しかも雑魚と罵られた。こちらはすぐにでも首を斬り落としてやりたいのを我慢したんだ。尻くらいで文句を垂れるな」

「たっ、叩かないでくださいっ」

「早く行け。で、どこへ向かうのだ?」

 階段を上がる受付嬢の尻を叩きながら、目的地へ向かわせる。

「ギルドマスターの執務室ですっ、この変態っ」

「そう言う目的であれば手の装備を外しているだろうよ」

「一緒ですよ!」

「一緒なモノか。叩くだけではなく、撫でたり揉んだりするモノだ」

「ここですっ。ギルドマスターひっ、マスターに粗相なきようにっ」

─粗相したくなるような相手でもないだろうに─

 彼は油断した。









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