【完結】優雅に踊ってくださいまし

きつね

文字の大きさ
14 / 37

幼女の夢は踊り出せるか

しおりを挟む
ーーむかしむかしあるところに、ひとりのげんきなおんなのこがいました。

ーーおんなのこはいつも空をみあげて、くもはどうやってういてるのかしら?とかんがえていました。

ーーまたべつのひ、おんなのこは海をみて、おふねはどうやってういてるのかしら?とかんがえていました。

ーーまたまたべつのひ、おんなのこは山をみて、どうしてときどき色がかわるのかしらとかんがえていました。

ーーそんなあるひ、おんなのこにはおとうとができました。いつも泣いてるおとうとをみて、どうしてあかちゃんは泣いてばっかりなのかしら?とおもいましら。

ーーおんなのこははいつもいろんなことがふしぎでした。

ーーそんなふうにまいにちをすごしていたら旅人がむらにやってきました。
おんなのこは旅人にたずねました。

「どうして旅をしているの?お家はないの?」

ーー旅人はおんなのこにおどろきながらもこう答えました。

「世界にはぼくらの知らないことがいっぱいあるんだ。ぼくはそれを知りたいから旅をしているんだ。旅をしていろんな人と出逢って、おはなしをいっぱいすると知りたかったことを教えてもらえることがあるんだ。」

「ふぅん。せかいにはどんなひとがいるの?」

「世界には肌の色や言葉が違う人がいるんだ。王様や王子様、お姫様だっているし、貴族もいる。先生もいれば生徒もいる。きみのお父さんのように畑で食べ物を作る人もいれば、牛を育てて牛乳や肉を売る人もいる。学者もいるし、商人もいるんだ。悪いひとだっている。
とにかくいろんな人がいろんな事をしてせいいっぱい生きているからこの世の中は回っているんだよ。
ぼくはそういういろんな人たちと話をして、いろんな事を知りたいんだ。だから旅をしている。」

ーーおんなのこはその後も旅人さんにいろんなことを聞きました。おんなのこはその代わりに、むらでのくらしをきかれるままにはなしました。

ーーおんなのこはいつもいつもふしぎをいっぱいかかえていました。おとうさんにきいても、おかあさんにきいても、そんちょうさんにきいても、ちょっぴりはおしえてくれるけど、だれもおんなのこのふしぎのぜんぶにはこたえてくれませんでした。
おんなのこのふしぎにこたえてくれた旅人さんは、おんなのこの知りたいことをちょうどよく教えてくれたのです。おんなのこは旅人さんにあこがれました。

「わたしもおおきくなったら旅にでる!」

ーーそんな言葉をきいた両親はおおわらい。

「おまえは女の子だからね。旅は無理だよ。」

ーーおんなのこは悲しくなりました。自由が許されないことがあることを、夢を笑われたのを、ふしぎの理由をもうしることができないことを。
それでもおんなのこは旅に恋こがれました。


ーーそれから何年か経ったある月明かりの晩、女の子は家を出ることをきめました。宝物をいっぱいかばんにつめこんで、準備しました。

ーーつぎの日の朝、まだみんなが寝ている時間にこっそりいえをでて村のいりぐちにむかいます。するとみなれた人をみつけました。

「いくのか?」

ーー大好きなおさななじみのおにいさんです。

「うん。色々みたらかえってくるよ!かえってこれたら…ううん。何でもない!」

「おまえだけだと心配だから俺も一緒に行ってやる。」

ーー女の子はとってもおどろきましたが、おさななじみと一緒にいれることがとっても嬉しかったので、ふたりで仲良く旅をすることにしました。

ーー女の子と男の子はあちこちへいきました。ときには事件にまきこまれそうになりましたが、いっしょうけんめいにげたり、助けてくれた人がいたりと、なんとか無事にすごしました。
そうしていろんなひとに出逢い、女の子の不思議はたくさん解決できました。

ーー知りたかったことを知ると、こんどはまた別のふしぎがでてきます。女の子と男の子はいつまでもいっしょに不思議のこたえを探し続けました。

ーーそうしていつしか女の子は国一番の物知りさんになり、男の子は誰かを守れる強さを持つ国一番の騎士になりました。

ーーふたりは村にたまに帰っては村人にいろんな話をし、身を守る術をおしえました。
すると村は知識のおかげでどんどん豊かになり、安心して暮らせる街になりました。

ーー男の子と女の子はまだまだ知りたいことを知るために旅を続けていましたが、いつしか結婚して、街一番の仲良し夫婦になり、子どもに恵まれました。

ーー二人の間に生まれた子どもは、不思議をいっぱい持つ子になるのか、それとも誰かを守ることができる強さを持っている子なのか。誰もが楽しみにしていました。

ーー子どもが大きくなったある日、その子は…ーー





『ねえねえ、テオ兄ちゃま!ティナ、この女の子みたいに旅をいっぱいしていろんな人に会ってみたいわ!』

『ティナがいなくなると寂しいから、僕も一緒に連れてってくれるかい?』

『しょうがないからつれてってあげるわ!
あとテオ兄ちゃまとけっこんもしてあげるわ!』

『本当かい!?僕はティナが大好きだからね!結婚も絶対してね、お約束だよ?』

『わたしもテオ兄ちゃま大好きっ!やくそくするわっ!』
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

伝える前に振られてしまった私の恋

喜楽直人
恋愛
第一部:アーリーンの恋 母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。 第二部:ジュディスの恋 王女がふたりいるフリーゼグリーン王国へ、十年ほど前に友好国となったコベット国から見合いの申し入れがあった。 周囲は皆、美しく愛らしい妹姫リリアーヌへのものだと思ったが、しかしそれは賢しらにも女性だてらに議会へ提案を申し入れるような姉姫ジュディスへのものであった。 「何故、私なのでしょうか。リリアーヌなら貴方の求婚に喜んで頷くでしょう」 誰よりもジュディスが一番、この求婚を訝しんでいた。 第三章:王太子の想い 友好国の王子からの求婚を受け入れ、そのまま攫われるようにしてコベット国へ移り住んで一年。 ジュディスはその手を取った選択は正しかったのか、揺れていた。 すれ違う婚約者同士の心が重なる日は来るのか。 コベット国のふたりの王子たちの恋模様

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

【完結】ぼくは悪役令嬢の弟 〜大好きな姉さんのために復讐するつもりが、いつの間にか姉さんのファンクラブができてるんだけどどういうこと?〜

水都 ミナト
恋愛
「ルイーゼ・ヴァンブルク!!今この時をもって、俺はお前との婚約を破棄する!!」 ヒューリヒ王立学園の進級パーティで第二王子に婚約破棄を突きつけられたルイーゼ。 彼女は周囲の好奇の目に晒されながらも毅然とした態度でその場を後にする。 人前で笑顔を見せないルイーゼは、氷のようだ、周囲を馬鹿にしているのだ、傲慢だと他の令嬢令息から蔑まれる存在であった。 そのため、婚約破棄されて当然だと、ルイーゼに同情する者は誰一人といなかった。 いや、唯一彼女を心配する者がいた。 それは彼女の弟であるアレン・ヴァンブルクである。 「ーーー姉さんを悲しませる奴は、僕が許さない」 本当は優しくて慈愛に満ちたルイーゼ。 そんなルイーゼが大好きなアレンは、彼女を傷つけた第二王子や取り巻き令嬢への報復を誓うのだが…… 「〜〜〜〜っハァァ尊いっ!!!」 シスコンを拗らせているアレンが色々暗躍し、ルイーゼの身の回りの環境が変化していくお話。 ★全14話★ ※なろう様、カクヨム様でも投稿しています。 ※正式名称:『ぼくは悪役令嬢の弟 〜大好きな姉さんのために、姉さんをいじめる令嬢を片っ端から落として復讐するつもりが、いつの間にか姉さんのファンクラブができてるんだけどどういうこと?〜』

この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。

毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。

平凡な伯爵令嬢は平凡な結婚がしたいだけ……それすら贅沢なのですか!?

Hibah
恋愛
姉のソフィアは幼い頃から優秀で、両親から溺愛されていた。 一方で私エミリーは健康が取り柄なくらいで、伯爵令嬢なのに贅沢知らず……。 優秀な姉みたいになりたいと思ったこともあったけど、ならなくて正解だった。 姉の本性を知っているのは私だけ……。ある日、姉は王子様に婚約破棄された。 平凡な私は平凡な結婚をしてつつましく暮らしますよ……それすら贅沢なのですか!?

【完結】契約結婚の妻は、まったく言うことを聞かない

あごにくまるたろう
恋愛
完結してます。全6話。 女が苦手な騎士は、言いなりになりそうな令嬢と契約結婚したはずが、なんにも言うことを聞いてもらえない話。

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

処理中です...