【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした

夏見ナイ

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第49話 神々の鍛冶場と黒鉄の誓い

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頑固なドワーフの鍛冶師、グレンが、俺たちの仲間に加わった。
それは、『安らぎの庭』にとって、革命的な出来事だった。俺の、素人考えのDIYと、エリナの古代魔法、そして、グレンの、何十年にもわたって培われた、ドワーフの伝統的な鍛冶技術。この三つが、融合した時、俺たちの創造力は、文字通り、無限の可能性を、手に入れたのだ。

「まずは、話にならん!」
グレンが、俺の作った、石化粘土の炉を、一瞥するなり、吐き捨てた。
「こんな、ままごとのような、炉では、この、神聖な、鉱石たちの、魂を、引き出すことは、できんわ! 我々が、最初に、作るべきものは、最高の、道具を、生み出すための、最高の『鍛冶場(フォージ)』じゃ!」

彼の、鍛冶師としての、魂に、火がついたようだった。
その日から、俺たちの、新たな、巨大プロジェクト、『神々の鍛冶場』の建設が、始まった。

「ルインよ! もっと、硬く、そして、熱に強い、石材は、ないのか! 炉の、心臓部を、作るのじゃ!」
「エリナ嬢! その、魔法とやらで、ふいごを、作れんか! 神の、息吹の如き、強力な、風を、送り込む、魔法の、ふいごを!」

グレンは、普段の、無愛想さが、嘘のように、生き生きとした表情で、次々と、指示を、飛ばした。彼は、もはや、ただの客人ではない。この、プロジェクトの、総監督であり、俺にとっては、厳しくも、頼れる、師匠だった。

俺は、彼の、要求に、応えるべく、森の、さらに、奥深くへと、分け入った。そして、火山の、火口近くで、黒曜石のように、黒く、硬く、そして、異常なほどの、耐熱性を、持つ、『竜の鱗石(ドラゴン・スケイル・ストーン)』を発見した。これは、炉の、材料として、最適だった。

エリナも、グレンの、無茶な要求に、見事に、応えてみせた。
彼女は、風の精霊に、働きかける、古代魔法を、用い、巨大な、竜巻を、発生させ、その力を、一点に、収束させる、魔法の、ふいごを、作り上げた。その、送風力は、もはや、暴風と呼ぶに、ふさわしい。

俺たちが、最高の、素材を、集め、エリナが、魔法で、それを、形にしていく。
そして、グレンが、その、長年の、経験と、知識で、細部を、監修する。
三人の、力が、一つになった時、そこに、奇跡が、生まれた。

数週間後。
ログハウスの、少し離れた場所に、それは、完成した。
『竜の鱗石』で、組まれた、巨大な炉。
魔法の力で、超高温の、風を、送り込む、ふいご。
『黒鉄木』の、梁と、『凍てつく銅』の、屋根を持つ、広々とした、鍛冶場。
そして、作業台の、中心には、俺が、森の、奥深くで、発見した、この世の、どんな金属よりも、硬いという、伝説の鉱石、『金剛石(アダマンタイト)』を、加工して作った、巨大な、金床(アンビル)が、鎮座している。

「……できた……。できたぞ……!」
グレンは、完成した、自分たちの、鍛-冶場を、見上げ、わなわなと、その、巨躯を、震わせた。
その瞳には、涙すら、浮かんでいるように見えた。
「これぞ……わしが、生涯、夢見てきた、『神々の鍛冶場』じゃ……!」

その日、俺たちは、鍛冶場の、完成を祝して、ささやかな、火入れの、儀式を、行った。
グレンが、炉に、火を灯すと、魔法のふいごが、轟音と共に、作動し、炉の中の炎は、まるで、太陽のように、白く、輝き始めた。

「よし! ルインよ!」
グレンが、その、炎に、照らされながら、俺に、向き直った。
「今日から、お主は、わしの、一番弟子じゃ。わしの、持つ、技術の、全てを、叩き込んでやる。覚悟は、よいか!」
「ああ、望むところだ、師匠!」

俺の、鍛冶師としての、修行が、始まった。
それは、想像以上に、過酷で、そして、楽しい、日々だった。

「違う、小僧! ハンマーの、振り下ろし方が、甘いわ! 魂を、込めろ! 鉄の、声を聞くのじゃ!」
「焼き入れの、タイミングが、コンマ一秒、遅い! そんなことでは、金属の、神様に、そっぽを、向かれるぞ!」

グレンの、怒声が、毎日、鍛冶場に、響き渡る。
俺は、泥だらけになり、汗まみれになりながら、一心不乱に、ハンマーを、振るい続けた。
最初は、ただの、鉄の塊だったものが、叩かれ、熱せられ、冷やされる、その過程で、少しずつ、形を変え、やがて、美しい、道具へと、生まれ変わっていく。
その、創造の、プロセスは、俺の、心を、掴んで、離さなかった。

エリナも、そんな、俺たちの姿を、微笑ましそうに、眺めながら、時には、魔法で、俺たちの、作業を、手伝ってくれた。
彼女は、金属に、美しい、装飾を、施したり、道具に、便利な、魔法効果を、付与したりする、才能に、長けていた。

俺が、基礎を作り、グレンが、それを、鍛え上げ、エリナが、最後に、魔法で、魂を、吹き込む。
俺たちの、モノづくりは、もはや、一人では、決して、たどり着けない、高みへと、達しつつあった。

修行を、始めてから、一ヶ月が、過ぎた頃。
俺は、グレンの、指導の元、ついに、自分の、最初の、作品を、完成させた。
それは、一本の、シンプルな、短剣だった。

材料は、『凍てつく銅』と、少量だけ、混ぜ込んだ、『帯電石』。
刀身は、美しく、磨き上げられ、握りには、滑り止めの、『絞殺蔓』の、繊維が、巻かれている。
そして、エリナの魔法によって、その刃には、常に、微弱な、冷気と、電気が、まとわりついていた。

「……どうだ、師匠」
俺が、完成した、短剣を、差し出すと、グレンは、それを受け取り、厳しい目で、細部まで、じっくりと、検分した。

しばらくの、沈黙。
俺は、緊張しながら、彼の、言葉を、待った。

やがて、グレンは、ふん、と、鼻を鳴らした。
「……まだまだ、甘いわ。百点満点中、六十点、というところじゃな」
厳しい、評価だった。
俺は、少しだけ、肩を、落とした。

だが、グレンは、続けた。
「……だが」
彼は、俺の、目を見て、言った。
「わしの、最初の、作品よりは、遥かに、上出来じゃ」

そして、彼は、初めて、俺に向かって、にかり、と、歯を見せて、笑った。
それは、不器用で、だが、心からの、称賛の、笑みだった。

「……! あ、ありがとう、師匠!」

俺は、心の底から、込み上げてくる、喜びに、思わず、大きな声で、礼を言った。
この、一本の、短剣。
それは、俺が、この楽園で、手に入れた、新しい、絆と、成長の、証だった。

俺は、完成したばかりの、短剣を、強く、握りしめた。
この、力で、この、技術で、俺は、これから、何でも、作ることができる。
そして、この、力で、俺は、大切な、家族と、この『安らぎの庭』を、守り抜くのだ。

俺と、師匠、グレンの、黒鉄の誓い。
それは、神々の鍛冶場で、熱く、赤く、燃え上がる、炎のように、固く、結ばれた。
俺たちの、創造の物語は、まだ、始まったばかりだ。
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