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待ち望まれたまじわり
しおりを挟むこちらを見上げるユフィも、興奮して快楽を得てくれていることは伝わってくる。けれど、これはエリオットが想像して、待ち望んでいた情交ではない。
全く恐怖が無いわけではない。それでも、ユフィと一つになりたい。この身体で彼に気持ちよくなってほしい。彼に喜んでほしいし、彼に、暴かれたい。
「あっ、ん、ユフィ、さま……」
「はあっ、は、私のエリオット……」
さらり、体勢を変えて覆《おお》いかぶさってきたユフィの髪が視界の左右を閉ざす。互いの顔しか見えなくなると、もう自然と唇を重ね合うほかなかった。
「ん、ふう、む……んっ……ユフィさま、まって……」
「うん? どうしたの? ……エリオット?」
エリオットは全力でユフィの身体を押し返すと、自身の両足を胸で抱え込むように折りたたんだ。
絶頂を待ち望んでびくびくと震える花芯と小ぶりな双玉のさらに下――固く閉ざされたすぼみを、見せつけるようにユフィの眼前に曝《さら》け出した。
「ここに……ユフィ様の、ください……」
恥じらいは、快楽に融けて消えてしまっていた。
「っ……エリオット……でも、初めてだろう? 無理しなくていいんだよ。ゆっくり、少しずつ進めていけば」
「いやです……いたくてもつらくても、平気、です。僕がしてほしいんです……ユフィ様と、ひとつになりたい……」
いやですか、とダメ押しする必要は無かった。
次の瞬間には、獣のように一瞬で距離を詰めてきたユフィに唇を奪われていた。これまでよりも乱暴で技巧も何もない、食らいつくようなキスだ。薄眼で見たユフィの顔はどこか険しい。すっかり余裕を失ったらしいその様子に、エリオットは緊張よりも安堵を覚える。
「はあ、はあ、ああ、もう、……いいかい、やめるなら今だよ? これ以上進めたら、もうきっと私は歯止めが利かなくなる……」
「やめたく、ないです……。ユフィ様なら、何があっても大丈夫です」
「っ、これ以上あおらないでくれ……! これでも君の大好きな優しいユフィの仮面を保つのに必死なのに……!」
「そんな……僕、ユフィ様ならどんなユフィ様でも大好きな自信が――ぁ」
後孔のあわいをぬめりを帯びた指が撫でた。皺のひとつひとつを伸ばすように押し広げながら、口元に、頬に、おとがいに、肩や胸元に、スタンプを押すように口づけを落としていく。くすぐったいのと心地よいのとで小さな笑いがこみ上げた。恐怖心とともに体から力が抜けたところで、長い指がゆっくりと中に押し入ってきた。
「んう……」
「痛くはない?」
「は、い、変な感じがして苦しいけど、痛くはない、です」
本音だった、想像以上に丁寧に解されたおかげで痛みはない。ただやはり異物感がある。指でもこんな状態なのに、あんなに太いものが入るのだろうか。
そんな不安に反して、エリオットの身体は従順にユフィの愛撫を受け入れていった。いつの間にか奥まで侵入していた指がゆっくりと引き抜かれ、また奥へ攻め入ってくる。浅い呼吸でその違和感をやり過ごしていると、いつの間にか二本目まで呑み込まされていた。
「きゅうきゅうひくついてる、エリオットはこんなところまで可愛いんだね……」
「そんあ、こと……んんっ、ふ……う……あ、あ!」
擦り上げられるたびに敏感になっていた一点が、とうとう快感を拾った。指を抜き差しされるだけで腰が弾んでしまうのを止められず、うめくような喘ぎが口から漏れた。
「……、ここ?」
「んっ、ぅ、それ、だめです、変っ、変になっちゃう……! ぁ、や、だぁっ……」
ぐにぐにとそこを捏ねるようにつぶされると、痺れるような快感が背骨を駆け上がる。どうにかなってしまいそうなのに、気持ちよさに終わりがないことが怖い。自分で処理をしたことは何度もあったが、こんなに訳が分からなくなったことは一度も無かった。
「ユフィ、さま、出ちゃう、から……もう、たぶんへいき、です。ユフィさまの、挿れてください……」
触れずに放置されていた前芯からは蜜がこぼれ続け、糸を引いて腹に垂れていた。
その自分のそれとは思えない淫靡《いんび》な光景に眩暈を覚えながら、エリオットは懇願する。
ユフィはどこか辛そうに息を詰めたあと、ずるりと指を引き抜いた。
「痛かったら、言って……頑張って、ゆっくりできるように、我慢するから……」
そして自身の欲芯をあてがうと、開いた蜜孔を埋めるように挿入してきた。
「っ、ぁ……!」
想像を絶する質量に、エリオットはぶるりと身を震わせた。一瞬だけ肝が冷えたけれど、それはユフィを受け入れられたのだという多幸感にすぐさま塗りつぶされた。
「は……全部はいった……エリオットのなか、きつくて、熱くて、すごく悦《い》い……」
「んっ、ま、まって、まだ……っ」
奥へ到達して間もなく、耐えかねた様子でユフィが小さく腰を揺らす。少し引き抜かれるだけで中を引きずり出されてしまうような衝撃があった。半分ほど抜かれたところでゆっくり突き入れられた剛直が腹の内側のいいところをずりずりと擦る。わざとそこを押しつぶしているらしい。その浅い抜き差しに、エリオットは乱れた。
「あっ、ぁ、あぅっ、そこばっかり、やだ……!」
「じゃあ、どこがいい? もっと奥……? こう、かな?」
「あぁっ!」
どちゅり、奥まで一息に貫かれて快感に目の前が白んだ。ユフィの律動が激しくなる。
エリオットの右足を担ぎ上げたユフィが、その太腿に長い舌を這わせて妖艶《ようえん》に笑う。嗜虐《しぎゃく》心《しん》の滲んだ蠱惑的な笑みに、ぞくりと全身の毛が逆立つ。
全身を駆け抜ける快感に、陶然《とうぜん》と身を任せる。
――どうしよう、気持ち良すぎて、おかしくなる……!
今、エリオットはあんなにも焦がれた男《ひと》と身体を重ねているのだ。その生々しい獣《じゅう》欲《よく》をぶつけられ、求められて、どうにかなってしまいそうなほどの悦楽を得ている――その事実が突然に現実味を帯びる。
「あっ、ひっ、ん、ふか、いっ、や、だあ……!」
「うん、このおなかの裏側と、いちばん奥……ここが気持ちいいんだね? わかった、たくさん突いてあげる」
「ひうっ、あっ、あっ、だめ、だめです、だめ……」
「ふふ、わかってるっ……。エリオットのいや、だめ、はもっとして、って意味だもんね? さっきちゃんと覚えたから。もう、意地悪しない、から、たくさん鳴いていいんだよ」
ユフィは心底楽しそうにエリオットの身体を穿《うが》つ。荒くなった吐息混じりの声がとても優艶《セクシー》だ。
――うわ、僕、こんなにユフィ様の声が好きだったなんて……!
言葉で責める間も、敏感なところを的確に抉《えぐ》る腰使いは止まらない。
射精感とはまた異なった何かが、後ろの奥で弾けてしまいそうだ。
「は、あ、きつくなった……嬉しいな、そんなに私のものを気に入ってくれたの?」
太腿に歯を立てたり、舌を這わせたりしながら、余裕なさげにユフィが囁く。その声がエリオットの官能を高めるトリガーになっていることには、どうやら気づいていないらしい。
「んっ、んんっ、あぅ、あっ、あぁっ、い、や……!」
淫らな音とともに責められるたび、自然と腰が浮いていく。
ユフィの言うとおりだった。口ではいやだだめだと口にしながら、中を太いものが擦り上げていく快感にうっとりしてしまう。
「っ、ふ、うう、あっ、ぁ、ユフィさま、だめ、変っ、も、でちゃう……!」
絶頂が近いらしい。
背中まで反り返ると、ユフィの前に自分の昂ったものを差し出すような格好になった。
「エリオットのこれ、美味しそう……」
「ひぁ、なに、言って」
「あとで味見させてね? ほら、今は好きなだけ達していいよ……」
ユフィはわざと音を立てるように抽挿を激しくしつつ、勃ちあがっているエリオットの前をにゅくにゅくと扱いた。
「ほら、達《い》ってごらん? 私の手で気持ちよくなってしまうエリオットを見せて……」
「っ」
前と後ろの両方から感じてしまうところを責め立てられてしまうと、もう、だめだった。
「ひ、あ、……~~~っ、あっ、ふ、う、いく、いくいくいくっ……っ!」
先に、後孔の浅みで絶頂が弾けた。がくんと腰が跳ね、奥までうずめられたユフィをうねる淫襞が舐めしゃぶるのがわかる。
無意識のうちにぐぐっと食い締めてしまうとそれがまた良いところを刺激して、二度、三度と軽く達してしまっていた。
その余韻が引かぬうちに前の昂りが爆ぜた。頭と腰が痺れて、もう何も考えられない。
「綺麗だエリオット……っ……すご、い、まずいな、搾り取られてしまう……」
「っ、やめて、やめてユフィさま、やっ、あっ……」
白濁が放たれる間もそれを扱くユフィの手は止まらない。その所為で精液とは違うものが噴き漏れてしまったが、それを咎める間もなく、ユフィの抽挿が再開されてしまう。
「私も、そろそろ、く、る……!」
「んんんんっ、まだ、まだ動いちゃだめ……ユフィさま、や、あっああっ……」
無言のままかき混ぜるように熟れた媚肉を犯したユフィが、ふっ、と両眼を眇めて深く口づけてくる。
ユフィの体温が、重みが、押しつぶされてしまいそうな圧迫感が心地よい。
その多幸感に陶酔《とうすい》していると、中でユフィが欲を遂げたのが分かった。
「――……エリオット、あいしてる……」
「……僕も、あいしています……」
エリオットはそのしなやかで逞しい肩に、縋りつくように腕を回し、夢のような幸福に酔いしれた――――。
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