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高校一年生の夏のある夜、尿意を感じて目を覚ました私は、居間から聞こえる母の話し声に気づいた。朝の早い父はすでに寝室で眠っている。電話だろうか、こんな夜中に。少し不思議に思うが深く考えはせず、茶を飲もうと台所に足を踏み入れ、その時、母の声が冷たく潜められるまでの一瞬の間、母の声音にいつもと違うものを感じた。
それが始まりだった。正確には聞き取れなかったけれど、起きてきた、と母は電話口に呟いた気がする。私に聞かれて困る電話なんて、私にはほんのいくつかの可能性しか思いつかなかった。最初は小さな疑惑だった。けれど一度気づいてみると、母はその不審な行動を驚くほどの無防備さで繰り返していた。電話を盗み聞いて三回目に、私は母の不貞の確信を得た。その時、母は私との約束を反故にして、男と会う約束をしていた。甘えるような母の声音を聞きながら、私は床にうつ伏せて泣いた。机の中に収まっていたカッターナイフを衝動的に取り、足音を忍ばせるのも忘れて廊下に出た。居間を隔てるドアの前で、カッターナイフの刃を腕に当て、横に滑らせる。私の足音を聞いて、ちょっと待って、と相手に告げたのだろうか、母の声は聞こえなくなり、こちらを伺っている母の湿った息づかいが聞こえる気がした。私は手をドアに掛けて迷い、自室に引き返した。母に見せつけて、どちらをとるのかと聞きたかったのかもしれない。自室のベッドの上で、私はさっきまでの激情が嘘のように、呆然と傷を見つめた。肌の上に不自然に浮かんだ一本の線に赤色が滲み、舌先で舐めるとちりちりと痛んだ。
翌朝は、傷に乗せたガーゼの上から湿布を貼って登校した。どうしたのかと聞かれるたび、体育のバレーでひねって傷めたのだと答えた。ひねるにしては不自然な場所だったから、幾人かは釈然としない顔をしていたけれど、ろくに活躍もしてないくせにね、と私が笑えば誰も追求はしなかった。意外に誰も気にしやしない。それでも不審の目を避けるため、私が傷つける場所は腕から手の甲、二の腕、膝上に次第に移り、周りの友達と同じように短くしていたスカートも、傷が隠れるようにと規定のものに戻した。
「それ、自分でやったの?」
ある日、後ろから私の肩に触れ、そう囁いたのが彼女だった。いつから後ろを歩いていたのか、学校帰りの彼女は滑り込むように私の隣に並んだ。私は唐突に投げかけられた言葉を頭の中で反芻し、一瞬、頭が真っ白になった。思わず愛想も忘れて彼女の顔を真顔で見つめ返すと、彼女は私の左手の甲に数本走った赤いかさぶたをじっと見ていた。
「これのこと? 違うよ、猫に引っ掻かれたの」動揺を隠して、手の甲をもう一方の手で触る。貼っていた絆創膏は体育の時間によじれ、剥がして捨ててしまっていた。
「小西さんの家、猫いるの」
「ううん、野良猫」
「このへんでは見ないけど」
「学校にいたの」
隠せば彼女の疑惑を膨らませてしまう気がした。「それに、ああいうのって手首にするものでしょう」とぼけて笑うが、彼女は笑わない。変えるべき話題も思いつかず、気まずくなって私は黙った。彼女とまともに話すのは、小学校を卒業して以来だった。私より小さかった彼女の背はいつの間にか伸び、私は彼女を見上げる。
「私、わかるんだ。母もやってるから」
「……だから、違うって」
「聞きたいことがあるの。言いたくないならそれでいいけど、小西さんはもしかして知っているんじゃないかと思って」
「何のこと」
「小西さんのお母さんのこと。知ってるんでしょ?」
お母さんのことと聞いて、すぐに思い到った。動揺する私を彼女は冷静に見つめ返し、
「今、小西さんが思い浮かべてることでたぶん合ってる。なんで私が知ってるんだって思ってる? だって、相手、私の父だもん」言って私の様子を窺う。私が何も言えないでいると、彼女はふいと顔を逸らしてしまった。
「まあ、でも、わかんないならいいよ」
私に考える暇も与えず、彼女は私を追い越して、四号棟の階段を上って行く。左右に揺れる彼女のスカートが踊り場の向こうに消えて、私は慌てて後を追いかけた。
「待って」
彼女は階段の踊り場で振り向いた。
「その話、今聞ける?」
彼女は黙って頷き、また背を向ける。私は走って上がった息を整えながら、彼女の後について屋上への階段を上った。
今では考えられないことだけれど、管理の責任をひとつに絞らないためという名目で、屋上の鍵は住人全員が知るところに隠してあった。彼女は慣れた様子で鍵を取って屋上へのドアを開け、貯水槽の基礎のコンクリートに座り、私は手の甲の傷が隠れるようにさりげなく左側に座った。前日に降った雨のせいで、日の当たらない場所は濡れて色を変えていた。
彼女はひとつずつ、私の知っていることと知らないことを語った。私の母と彼女の父が関係しはじめた時期と、その手段について。途中で膝に顔を埋めた私に、やめようかと彼女が言って、私は首を横に振った。
話し終えて私が落ち着くまで、彼女は待っていてくれた。
「国広さんはどうしてそんなに冷静なの」
「私はもう諦めきってしまっているというか、父に何も期待してないの。うちの不仲は今に始まったことじゃないもん。小西さんはお母さんが好きだから許せないんじゃないの」
「そんなことない」私は強い反発を覚えた。
「それで、どうする? これから」彼女は私の強い口調にも反応せず冷静に尋ねる。
どうする、と問われて私は想像した。私は今日も、押し黙ったまま何も知らないふりをして過ごすのだろう。電話の声は今日も聞こえるかもしれない。母の車が出て行けば、疑念に駆られて悶えるのだろう。私は幾度となく繰り返したそれに、もううんざりしていた。疲れてもいた。私が犠牲になることで保たれている日常ならいらないと、投げやりな気持ちも持ちはじめていた。
「……私は許さない。今の見せかけの日常もうんざり。全部明るみにして、母を懲らしめたい」
「それでいいよ、私も。もう本当は終わっているような家族だし」
私はようやく、私の決断が彼女をも巻き込むことに気づいた。
「でも、本当に小西さんはいいの? すべてを明るみにして、お父さんとお母さんが別れたとして、見せかけだけでも平穏な今の生活がなくなって元に戻れなくなっても、それでいいの?」
「いいよ。母を苦しめられたらなんでもいい」私は手の甲に赤く張り付いたかさぶたを撫でながら言う。彼女はわかったというように小さく二度頷き、私たちはまた屋上で会う約束をして別れた。
家へ帰ると母はまだ戻っていなかった。人気のない家の中はもう暗かったけれど、私は電気も点けず台所にまっすぐ向かい、お茶を飲み干した。コップを置いたシンクには、朝食で使った、パンくずを乗せた平皿が四人分重なっている。父と母、妹、私。もう家では傷をろくに隠しもしない私に、気づいているはずの家族は何も言わない。家族を愛していた。助けて欲しかった。放っておかれることが悲しかった。何を守って何を壊したいのか、自分でもよくわからなくなっていた。
駐車場に車が入ってくる音がした。窓から見下ろすと、母が車から降りてくる姿が見えた。足元に落としていた鞄を取って自室へ籠る。膝を抱えて息を殺していると玄関のドアが開く音、次いで母のパンプスのヒールが鳴った。ただいま、と母の声が聞こえる。答えずにいると、廊下を歩く足音が近づいて来た。私は音をさせないよう慌ててベッドに滑り込み、丸めた背を向ける。ノックの後ドアを開けた母親は「寝てるの?」と小声で尋ね、少ししてそっとドアを閉めた。
父母の寝室に隣接するベランダの戸が開く音の後、母が洗濯物を取り込む気配がした。物干竿に下がったハンガーが大きく揺れる音を聞きながら私は目を閉じて、この夕方の気配を幸せに感じていた頃のことを思い出していた。
買い物から帰って少しの間眠っていた。チャイムで目を覚まし、夕焼け小焼けの音楽を聞きながら目を擦った。仕事をやめて家にいるようになってからは、この音楽を聞くたび、夕食の支度をしなければと憂鬱な気分に覆われた。今は修一と別れることになって、食事を無理に作る必要もないのに、私はまだその習慣をやめられないでいる。
重い袋を提げたせいで固くなった肩を伸ばしていると、告別式のお知らせです、と間延びした年配の男性の声が聞こえた。私は眠りの余韻にしがみつくように大きく息を吐きながら寝返りを打つ。声は、○×町三丁目十番二号、ヤマウチキヨコさんの告別式は明日○月×日△時から行われます、と二度繰り返した。これは私がこの町で暮らしていた子どものころと少しも変わらない。告別式という言葉を知ったのもそのころだった。私が意味を尋ねたあの時、母は一瞬困ったような顔をして、お葬式のことよ、と答え、私は居心地の悪さをごまかすように、ふうん、とさして興味もないふうに頷いたのだった。
母のことを思い出すとき、私の中を一筋の冷たいものが走る。
私は母の罪を暴き、結果的に父に母を追放させた。母のことは憎んでいたけれど、愛していたのも事実だ。信じていたからこそ許せなかった。一人になって生活も苦しくなった母は、楽ではない仕事をしながら、時折連絡をよこす私を唯一の頼りにして暮らしている。今も私は自分がすべて悪かったとは思わない。原因をつくったのは母なのだから。けれどあの時の自分を手放しで肯定出来ないのも事実だ。
「もしもし。お母さん、今大丈夫?」
一週間に一度ほど、風呂上がりに、私は母に電話を掛ける。
「もうお風呂入った? うん。私はもう寝るだけ。修一くん? まだいるよ。なかなか家が決まらないみたい」
断ち切ったはずの繋がりを捨てきれずにいる。
それが始まりだった。正確には聞き取れなかったけれど、起きてきた、と母は電話口に呟いた気がする。私に聞かれて困る電話なんて、私にはほんのいくつかの可能性しか思いつかなかった。最初は小さな疑惑だった。けれど一度気づいてみると、母はその不審な行動を驚くほどの無防備さで繰り返していた。電話を盗み聞いて三回目に、私は母の不貞の確信を得た。その時、母は私との約束を反故にして、男と会う約束をしていた。甘えるような母の声音を聞きながら、私は床にうつ伏せて泣いた。机の中に収まっていたカッターナイフを衝動的に取り、足音を忍ばせるのも忘れて廊下に出た。居間を隔てるドアの前で、カッターナイフの刃を腕に当て、横に滑らせる。私の足音を聞いて、ちょっと待って、と相手に告げたのだろうか、母の声は聞こえなくなり、こちらを伺っている母の湿った息づかいが聞こえる気がした。私は手をドアに掛けて迷い、自室に引き返した。母に見せつけて、どちらをとるのかと聞きたかったのかもしれない。自室のベッドの上で、私はさっきまでの激情が嘘のように、呆然と傷を見つめた。肌の上に不自然に浮かんだ一本の線に赤色が滲み、舌先で舐めるとちりちりと痛んだ。
翌朝は、傷に乗せたガーゼの上から湿布を貼って登校した。どうしたのかと聞かれるたび、体育のバレーでひねって傷めたのだと答えた。ひねるにしては不自然な場所だったから、幾人かは釈然としない顔をしていたけれど、ろくに活躍もしてないくせにね、と私が笑えば誰も追求はしなかった。意外に誰も気にしやしない。それでも不審の目を避けるため、私が傷つける場所は腕から手の甲、二の腕、膝上に次第に移り、周りの友達と同じように短くしていたスカートも、傷が隠れるようにと規定のものに戻した。
「それ、自分でやったの?」
ある日、後ろから私の肩に触れ、そう囁いたのが彼女だった。いつから後ろを歩いていたのか、学校帰りの彼女は滑り込むように私の隣に並んだ。私は唐突に投げかけられた言葉を頭の中で反芻し、一瞬、頭が真っ白になった。思わず愛想も忘れて彼女の顔を真顔で見つめ返すと、彼女は私の左手の甲に数本走った赤いかさぶたをじっと見ていた。
「これのこと? 違うよ、猫に引っ掻かれたの」動揺を隠して、手の甲をもう一方の手で触る。貼っていた絆創膏は体育の時間によじれ、剥がして捨ててしまっていた。
「小西さんの家、猫いるの」
「ううん、野良猫」
「このへんでは見ないけど」
「学校にいたの」
隠せば彼女の疑惑を膨らませてしまう気がした。「それに、ああいうのって手首にするものでしょう」とぼけて笑うが、彼女は笑わない。変えるべき話題も思いつかず、気まずくなって私は黙った。彼女とまともに話すのは、小学校を卒業して以来だった。私より小さかった彼女の背はいつの間にか伸び、私は彼女を見上げる。
「私、わかるんだ。母もやってるから」
「……だから、違うって」
「聞きたいことがあるの。言いたくないならそれでいいけど、小西さんはもしかして知っているんじゃないかと思って」
「何のこと」
「小西さんのお母さんのこと。知ってるんでしょ?」
お母さんのことと聞いて、すぐに思い到った。動揺する私を彼女は冷静に見つめ返し、
「今、小西さんが思い浮かべてることでたぶん合ってる。なんで私が知ってるんだって思ってる? だって、相手、私の父だもん」言って私の様子を窺う。私が何も言えないでいると、彼女はふいと顔を逸らしてしまった。
「まあ、でも、わかんないならいいよ」
私に考える暇も与えず、彼女は私を追い越して、四号棟の階段を上って行く。左右に揺れる彼女のスカートが踊り場の向こうに消えて、私は慌てて後を追いかけた。
「待って」
彼女は階段の踊り場で振り向いた。
「その話、今聞ける?」
彼女は黙って頷き、また背を向ける。私は走って上がった息を整えながら、彼女の後について屋上への階段を上った。
今では考えられないことだけれど、管理の責任をひとつに絞らないためという名目で、屋上の鍵は住人全員が知るところに隠してあった。彼女は慣れた様子で鍵を取って屋上へのドアを開け、貯水槽の基礎のコンクリートに座り、私は手の甲の傷が隠れるようにさりげなく左側に座った。前日に降った雨のせいで、日の当たらない場所は濡れて色を変えていた。
彼女はひとつずつ、私の知っていることと知らないことを語った。私の母と彼女の父が関係しはじめた時期と、その手段について。途中で膝に顔を埋めた私に、やめようかと彼女が言って、私は首を横に振った。
話し終えて私が落ち着くまで、彼女は待っていてくれた。
「国広さんはどうしてそんなに冷静なの」
「私はもう諦めきってしまっているというか、父に何も期待してないの。うちの不仲は今に始まったことじゃないもん。小西さんはお母さんが好きだから許せないんじゃないの」
「そんなことない」私は強い反発を覚えた。
「それで、どうする? これから」彼女は私の強い口調にも反応せず冷静に尋ねる。
どうする、と問われて私は想像した。私は今日も、押し黙ったまま何も知らないふりをして過ごすのだろう。電話の声は今日も聞こえるかもしれない。母の車が出て行けば、疑念に駆られて悶えるのだろう。私は幾度となく繰り返したそれに、もううんざりしていた。疲れてもいた。私が犠牲になることで保たれている日常ならいらないと、投げやりな気持ちも持ちはじめていた。
「……私は許さない。今の見せかけの日常もうんざり。全部明るみにして、母を懲らしめたい」
「それでいいよ、私も。もう本当は終わっているような家族だし」
私はようやく、私の決断が彼女をも巻き込むことに気づいた。
「でも、本当に小西さんはいいの? すべてを明るみにして、お父さんとお母さんが別れたとして、見せかけだけでも平穏な今の生活がなくなって元に戻れなくなっても、それでいいの?」
「いいよ。母を苦しめられたらなんでもいい」私は手の甲に赤く張り付いたかさぶたを撫でながら言う。彼女はわかったというように小さく二度頷き、私たちはまた屋上で会う約束をして別れた。
家へ帰ると母はまだ戻っていなかった。人気のない家の中はもう暗かったけれど、私は電気も点けず台所にまっすぐ向かい、お茶を飲み干した。コップを置いたシンクには、朝食で使った、パンくずを乗せた平皿が四人分重なっている。父と母、妹、私。もう家では傷をろくに隠しもしない私に、気づいているはずの家族は何も言わない。家族を愛していた。助けて欲しかった。放っておかれることが悲しかった。何を守って何を壊したいのか、自分でもよくわからなくなっていた。
駐車場に車が入ってくる音がした。窓から見下ろすと、母が車から降りてくる姿が見えた。足元に落としていた鞄を取って自室へ籠る。膝を抱えて息を殺していると玄関のドアが開く音、次いで母のパンプスのヒールが鳴った。ただいま、と母の声が聞こえる。答えずにいると、廊下を歩く足音が近づいて来た。私は音をさせないよう慌ててベッドに滑り込み、丸めた背を向ける。ノックの後ドアを開けた母親は「寝てるの?」と小声で尋ね、少ししてそっとドアを閉めた。
父母の寝室に隣接するベランダの戸が開く音の後、母が洗濯物を取り込む気配がした。物干竿に下がったハンガーが大きく揺れる音を聞きながら私は目を閉じて、この夕方の気配を幸せに感じていた頃のことを思い出していた。
買い物から帰って少しの間眠っていた。チャイムで目を覚まし、夕焼け小焼けの音楽を聞きながら目を擦った。仕事をやめて家にいるようになってからは、この音楽を聞くたび、夕食の支度をしなければと憂鬱な気分に覆われた。今は修一と別れることになって、食事を無理に作る必要もないのに、私はまだその習慣をやめられないでいる。
重い袋を提げたせいで固くなった肩を伸ばしていると、告別式のお知らせです、と間延びした年配の男性の声が聞こえた。私は眠りの余韻にしがみつくように大きく息を吐きながら寝返りを打つ。声は、○×町三丁目十番二号、ヤマウチキヨコさんの告別式は明日○月×日△時から行われます、と二度繰り返した。これは私がこの町で暮らしていた子どものころと少しも変わらない。告別式という言葉を知ったのもそのころだった。私が意味を尋ねたあの時、母は一瞬困ったような顔をして、お葬式のことよ、と答え、私は居心地の悪さをごまかすように、ふうん、とさして興味もないふうに頷いたのだった。
母のことを思い出すとき、私の中を一筋の冷たいものが走る。
私は母の罪を暴き、結果的に父に母を追放させた。母のことは憎んでいたけれど、愛していたのも事実だ。信じていたからこそ許せなかった。一人になって生活も苦しくなった母は、楽ではない仕事をしながら、時折連絡をよこす私を唯一の頼りにして暮らしている。今も私は自分がすべて悪かったとは思わない。原因をつくったのは母なのだから。けれどあの時の自分を手放しで肯定出来ないのも事実だ。
「もしもし。お母さん、今大丈夫?」
一週間に一度ほど、風呂上がりに、私は母に電話を掛ける。
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