リスタート 〜嫌いな隣人に構われています〜

黒崎サトウ

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つながりを求めた(14)

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 千秋が、なんで?とハテナを浮かべて困っているので、英司は愛おしげに笑った。

「寸止めして悪いな。でも、お前が準備してくれたこっち、触っていい?」

 英司がするりと後孔を撫でる。

 ああ、柳瀬さんが興奮してる。彼の兆しているものが目に入って、思わず小さな息が漏れた。俺も興奮、してるんだ。

「は、はやくっ……」

「まずは指からな」

 英司が興奮しているのはまちがいないが、妙に冷静に物事を進めていくので、どうにもじれったい。

 英司がローションの蓋をかぱりと開く。

「……柳瀬さん」

「ん?どうした。こわい?」

 覚悟は決めたし、今さらこわいとかはないけど。この様子だと、ひどくされることもないだろう。

 がっついてこないのは、きっと千秋が初めてで、慎重に扱ってくれてるからで……。

「柳瀬さんも、服脱いでください。俺だけ裸なの……いやです」

「ええ?俺が見たいんだよ」

 恥ずかしいこと言われた上に、話が通じない。

 だって、なんだか俺だけいっぱいいっぱいで悔しい。俺だって見たいとは間違っても口に出さないが。

「……俺は全部さらけだしてるのに、柳瀬さんはみせてくれないの、ずるい…」

 恥を忍んで拗ねた小さな声で呟くと、しっかりと耳に届いたらしい、英司がばさりとシャツを脱ぐと、千秋を強く抱いた。

 ああ、やっぱり素肌同士でくっつく方が気持ちいい……。

「千秋……お前わざとだよな?そういうの」

「わざとっていうか……仕方なくっていうか……」

「ふ、なんだそれ」

 恥ずかしい本音をわざわざ漏らすのは、仕方なくじゃないと千秋にはできない。それを言ってやってるんだから、褒めてもいいくらいだ。

 英司はもう一度唇にキスを落とすと、ローションで手を濡らした。

「指、入れるぞ」

「はい」

 準備段階で自分で指を入れたのだから、それくらいなら大丈夫なはずだ。

 そこにもローションを垂らされると、慎重に英司の指が中に入ってくる。

「……んく……はっ、は……はぁ……」

「大丈夫か?」

「だい、だいじょうぶ……」

 自分で入れたことがあるといってもちょっとだし、さっきの準備も意を決してやったのだ。この異物感にはまだ慣れない。

 ちらりともう一度英司のものを見てみる。……うわぁ、入んのかな、あれ……。

 だんだんと中を広げられていき、ふうふうと千秋が息荒く呼吸する。指は2本に増えていて、千秋の中を撫で続けている。

「千秋、そんな唇噛むな」

「ん……」

 英司は指で唇にこめられた力をふっと解いた。

 ある程度そこが柔らかくなったと判断されると、英司はまた慎重に指を抜いた。

 そして、さっき千秋が言ったからか、そのままズボンと下着も脱ぎ去っていく。

 柳瀬さんの何も纏わない姿を見るのは初めてだ。バランスがよくて、ある程度筋肉がついていて、不思議な色気に思わず目をそらしてしまう。

 でもすぐ頬に片手を添えられると上に向けられて、向けられたその瞳に吸い込まれていく。

「千秋……」

 ああ、欲情した男の目だ。

 整った顔が歪む姿は、千秋の心臓を高鳴らせたし、気分がよかった。この男は自分でこうなってるんだ、と。

「千秋……いれていいか。とめるなら今だ」

「とめないですよ……」

 そう言ったところで再び唇が重なる。今度は深くゆったりとしたキスで安心させると、千秋の体の力も抜けていく。

 いれるぞ、と慎重な英司がもう一度言うと、ゆっくり先の方が中に入ってきた。

「うっ……あ……」

「は……大丈夫か?」

「大丈夫だけどっ……大き……っ」

「っ……バカ、今そういうこと言うな」

 もう自分でも何を言ってるかわからない。でも指とは明らかに違う、圧迫感に抑えようにも苦しい声が漏れてしまう。

 腕こっちに掴まれ、と英司の首に回されると、千秋は着実に割り入ってくるその存在に、思わずぎゅうと抱きついた。

 目の前に英司の顔があって、抱きしめられながらキスをされると安心するような気がした。

「はぁっ……はぁっ……」

「はいったぞ……がんばったな、千秋」

「はいった……?」

 きついほどに抱きしめられ、顔中にキスを落とされる。

 後ろはたしかにきついけど、なんか、これ幸せかも………と、回らない頭で思った。


 しかし、動かずにじっとしている英司。キスをされているうちに、なんだかムズムズとしてくる。

「柳瀬さ、うごいて」

「でもしばらくこうしてた方が」

「やだっ、うごいてっ……」

 ぎゅうっと首を抱きしめると、中の英司のものが少し動いて、変なところに当たった。

「あっ……?」

「どうした?千秋」

「な、なんか変なところ……今……」

「今のところって……ここか?」

「んやっ!や、やだっ」

 ぎゅうぎゅうと首を抱き締めるものだから、英司は見ずに腰を抱き寄せながらその箇所を突いた。

 千秋は、未知の感覚に目を見開くばかりだ。

「なんかおかしっ、そこ」

「おかしくねえよ、お前の気持ちいいところだ」

「おれの?」

 腕を緩めて英司と至近距離で見つめ合うと、千秋を安心させるようにそう言った。

 そして、またゆっくりと律動を始める。

「あっ!ん……あぁっ」

 だんだんそれは速くなって、でも無理のない程度に千秋を揺さぶった。

 後ろだけですでに気持ちいい。でもなぜか達せそうにない。初めてだからだろうか。

 その気持ちよさともどかしさとつらさで生理的な涙がぼろぼろと溢れてくる。泣きたくないのに出ててきて、止めようにも止められない。

「はぁっ……あっ、いきた、のにっ」

「あーこれ目腫れちゃうな……かわいい……」

 汗を垂らす英司が千秋の涙を掬いながら愛おしそうに笑う。

 そして、行き場なく揺れるだけの千秋の前のものを握り込むと、さっきのように上下に扱き始めた。

「あっ、だめ両方っ、や、やだっ……!」

「は……やだって顔じゃないけど?」
 
 英司が意地悪く微笑みながら、自身も余裕なさそうに息を漏らした。

 そして、千秋は自身の限界を悟る。さっき寸止めされた上に、両方同時になんてもう耐えられない、そんなの反則だ。

「あっ……英司くん、えーしくんっ……」

「っ千秋……もういきそう?」

「うんっ、うんっ」

 コクコクと頷くと、英司に抱きしめられて、耳元で囁かれる。

「は……千秋っ……」

「はぁっ……あ、あっ…………!」

 背中をグンと仰け反らせると、英司に抱かれながら欲望を吐き出した。ぐったり力が抜けた体を英司が支える。

 そのすぐあとに英司も達したようで、横に倒れ込んでくると、まだ息の荒い千秋をもう一度引き寄せた。

「はぁ……」

「大丈夫か、千秋」

「……うん……」

「あーだめ、めちゃくちゃかわい……」

 まだふわふわとしているが、そう言われながら頬を撫でられると、そこがさらに朱に染る。

 どうしようもなく恥ずかしくて、嬉しくて、気持ちよくて、悔しい。


 それ以上は何も話さなかった。


 お互い抱き合って、静かに、名残惜しむように、ただ、キスだけを繰り返した。

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