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第8章 淫毒におかされた肉体が…
5 見せてくれ
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「クィィッ…」
その内面での怯えを察したのか、ブワンッと霊気の膜をイオンが厚くすると周りを取り囲むようにして覆った。
「えっ…な、なに…」
気を遣って音を遮断したに違いなくても、唐突に静かな空間へと変えられた状況にかえって不安を覚えずにはいられない。
「イオン…離れて…ハァハァ…くれ…」
とにかくどうなっているのか、せめて目で確認したいのだと。
理由はよくわからないものの、オルフェウスに目を守れと命じられたから従っているまでの魔鳥に、大丈夫だからと願い出た。
けれども、クィィ…と鳴いて応じたものの、頑なに張りついたまま動こうとしない。
「頼む…ハァハァ…から…」
なんとかして引き剥がそうと指先に力を入れようとしたその刹那、ふわりと身体が宙に浮かんだ。
「イオン、まだそのままでいろ。獣車に戻る間に清めてくれ」
「クィィッ」
鮮やかなまでに音が復活した耳に、ゴォォオォォーーッという業火の轟音を背負って聞き慣れた穏やかな美声が届く。
(オルフェウス…)
抱き上げてくれたのが誰なのか。
理解した途端に、とてつもない安堵感に包まれた。
と同時に、姿が見たいとどうしようもなく欲する。
「オル…フェ…ウス…ハァハァ…イオンを…どけて…くれ…」
「もう少し我慢してくれ。アレイと合流したら口輪とともに外す」
「な、なんで…いま…じゃ…なっ…」
「すぐに着く」
ターン、ターン、ターンと風を切るように跳ねて移動している様子から、その言葉は偽りないだろう。
けれども即座に応じてくれない理由はそれだけなのだろうか。
「ヒュドラ…どう…なった…ハァハァ…」
「あぁ、問題ない。核は袋に入れ、それ以外は全部灰と化す」
「問題…な…って…どう…いう…ハァハァ…うっ…」
「プロメテウスの火は…厳密に言うと火の種だが、命令と同時にその威力を発動する。この不浄の岩窟は汚れた死骸とともに全部燃やすように命じた。心配はいらない」
聞きたかったのは不死身であるヒュドラ本体の処置の仕方だ。
先ほどの状態からどう扱ったのか。
知りたい内容とは異なる返答を耳にしてなおも尋ねようとすると、バサッと幌が上げられた気配がして獣車の中に素早く寝かされた。
「イオン、これを樽に入れておけ。それからアレイとともにエリスを目指せ。途中でアルペイオス河沿いのハデス神殿に立ち寄る」
「クイィッ」
(あっ…)
命じられた魔鳥が頭から素早く離れると小袋を咥えて、バサバサと飛び立っていく。
その姿を反射的に目が捉えながら、パチパチと瞬きをしてぼやける視界を咄嗟に少しでも取り返そうとする。が、やはりままならない。
見知った空間にホッとするや否や、熱い…と猛烈に身体の不調が競り上がった。
「あぁ、ディケ、すまなかった…過信が招いた落ち度だと心より反省している」
「オル…フェ…ウス…」
「見せてくれ」
その内面での怯えを察したのか、ブワンッと霊気の膜をイオンが厚くすると周りを取り囲むようにして覆った。
「えっ…な、なに…」
気を遣って音を遮断したに違いなくても、唐突に静かな空間へと変えられた状況にかえって不安を覚えずにはいられない。
「イオン…離れて…ハァハァ…くれ…」
とにかくどうなっているのか、せめて目で確認したいのだと。
理由はよくわからないものの、オルフェウスに目を守れと命じられたから従っているまでの魔鳥に、大丈夫だからと願い出た。
けれども、クィィ…と鳴いて応じたものの、頑なに張りついたまま動こうとしない。
「頼む…ハァハァ…から…」
なんとかして引き剥がそうと指先に力を入れようとしたその刹那、ふわりと身体が宙に浮かんだ。
「イオン、まだそのままでいろ。獣車に戻る間に清めてくれ」
「クィィッ」
鮮やかなまでに音が復活した耳に、ゴォォオォォーーッという業火の轟音を背負って聞き慣れた穏やかな美声が届く。
(オルフェウス…)
抱き上げてくれたのが誰なのか。
理解した途端に、とてつもない安堵感に包まれた。
と同時に、姿が見たいとどうしようもなく欲する。
「オル…フェ…ウス…ハァハァ…イオンを…どけて…くれ…」
「もう少し我慢してくれ。アレイと合流したら口輪とともに外す」
「な、なんで…いま…じゃ…なっ…」
「すぐに着く」
ターン、ターン、ターンと風を切るように跳ねて移動している様子から、その言葉は偽りないだろう。
けれども即座に応じてくれない理由はそれだけなのだろうか。
「ヒュドラ…どう…なった…ハァハァ…」
「あぁ、問題ない。核は袋に入れ、それ以外は全部灰と化す」
「問題…な…って…どう…いう…ハァハァ…うっ…」
「プロメテウスの火は…厳密に言うと火の種だが、命令と同時にその威力を発動する。この不浄の岩窟は汚れた死骸とともに全部燃やすように命じた。心配はいらない」
聞きたかったのは不死身であるヒュドラ本体の処置の仕方だ。
先ほどの状態からどう扱ったのか。
知りたい内容とは異なる返答を耳にしてなおも尋ねようとすると、バサッと幌が上げられた気配がして獣車の中に素早く寝かされた。
「イオン、これを樽に入れておけ。それからアレイとともにエリスを目指せ。途中でアルペイオス河沿いのハデス神殿に立ち寄る」
「クイィッ」
(あっ…)
命じられた魔鳥が頭から素早く離れると小袋を咥えて、バサバサと飛び立っていく。
その姿を反射的に目が捉えながら、パチパチと瞬きをしてぼやける視界を咄嗟に少しでも取り返そうとする。が、やはりままならない。
見知った空間にホッとするや否や、熱い…と猛烈に身体の不調が競り上がった。
「あぁ、ディケ、すまなかった…過信が招いた落ち度だと心より反省している」
「オル…フェ…ウス…」
「見せてくれ」
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