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第10章 怪異王アウゲイアスと不気味な異母兄弟
6 愛し続けては身が
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杯を手に持って飲み干すような仕草で王が誘いをかけ、オルフェウスが柔らかな微笑で返した。
「それは楽しそうだ。だが妻の体調がどうなるか…」
「はははっ、これはこれはお熱いことで。ですが、奥方も時には休ませてやらねばなりませんぞ…愛し続けては身が持ちませんからな」
ニタニタといやらしげに笑みを浮かべた王に、なるほど確かに…とオルフェウスが笑って受け流した。
「では、夫以外のアルファ属性の者がいつまでも側にいたら発情期前の奥方も落ち着かないでしょう。今からどうぞ、離れに…女官長、お連れしろ」
「かしこまりました」
「くれぐれも失礼のないように」
「御意」
(ど、どういうことだ…)
恭しく会釈をして、こちらへと先導し始めた女官長にオルフェウスが従い、その腕の中でホッと安堵すると同時に疑問が湧いた。
あまりにもオルフェウスに対して王の姿勢が下手なのだ。
(知り合いだったのか…)
アルゴー船の乗組員の話で奇妙な意気投合を見せていたのだから、もはや疑いもないだろう。
そして、どうやらオルフェウスの方が一目を置かれていたことも。
けれども、ヘリオスと名が違うのはどういう理由からなのか。
『そうだな…アルファだと否定はしないが、私も君と同じ事情持ち、罪人だったと思ってくれていい』
オルフェウスから前に聞かされた言葉をふと思い出した。
その後も逆行者だったのかとまでは踏みこんでは聞けていなかったが、もしかしたら自分と同じように何かしらの罪を犯してヘリオスという過去を奪われたのかもしれないと振り返る。
(いや、待てよ…)
それならばアルゴナウタイとの記憶があるのは変じゃないかと思い至った。
(つまり、それって…)
そもそもが逆行者ではないのか、どうなのか。
はたまた逆行者として名前を使い分けているのか、どうなのか。
掘り下げて考えようとしたその矢先―
「密林を通るのか?」
オルフェウスの女官長への問いかけでハッと意識を現実に戻した。
「は、はい、さようでございます」
「危険ではないのか、狩猟採集族が放たれているのだろう?」
「あ、いえ…大丈夫でございます」
石畳の船着き場から緑溢れる草地へと踏み入れると、青々とした木々の枝には青緑色の羽を垂らして休むクジャクの姿も目に入る。
のどかで、どこか聞いていた印象とは異なる。
もっと奥に行くと危険な魔獣が待ち受けているのだろうかと視線で探っていると女官長が続けた。
「以前は防衛の観点から狩猟採集族をあえて放牧しておりましたが、魔妖石が開発されてからは不要と見なされ、現在は北の角のその先、エリス山脈との間の密林地帯に生息しているのみとなっております」
「ずいぶん魔妖石とやらへの信頼が強いのだな」
「はい、何事においても大変優れた万能石でございますゆえ…」
「それは楽しそうだ。だが妻の体調がどうなるか…」
「はははっ、これはこれはお熱いことで。ですが、奥方も時には休ませてやらねばなりませんぞ…愛し続けては身が持ちませんからな」
ニタニタといやらしげに笑みを浮かべた王に、なるほど確かに…とオルフェウスが笑って受け流した。
「では、夫以外のアルファ属性の者がいつまでも側にいたら発情期前の奥方も落ち着かないでしょう。今からどうぞ、離れに…女官長、お連れしろ」
「かしこまりました」
「くれぐれも失礼のないように」
「御意」
(ど、どういうことだ…)
恭しく会釈をして、こちらへと先導し始めた女官長にオルフェウスが従い、その腕の中でホッと安堵すると同時に疑問が湧いた。
あまりにもオルフェウスに対して王の姿勢が下手なのだ。
(知り合いだったのか…)
アルゴー船の乗組員の話で奇妙な意気投合を見せていたのだから、もはや疑いもないだろう。
そして、どうやらオルフェウスの方が一目を置かれていたことも。
けれども、ヘリオスと名が違うのはどういう理由からなのか。
『そうだな…アルファだと否定はしないが、私も君と同じ事情持ち、罪人だったと思ってくれていい』
オルフェウスから前に聞かされた言葉をふと思い出した。
その後も逆行者だったのかとまでは踏みこんでは聞けていなかったが、もしかしたら自分と同じように何かしらの罪を犯してヘリオスという過去を奪われたのかもしれないと振り返る。
(いや、待てよ…)
それならばアルゴナウタイとの記憶があるのは変じゃないかと思い至った。
(つまり、それって…)
そもそもが逆行者ではないのか、どうなのか。
はたまた逆行者として名前を使い分けているのか、どうなのか。
掘り下げて考えようとしたその矢先―
「密林を通るのか?」
オルフェウスの女官長への問いかけでハッと意識を現実に戻した。
「は、はい、さようでございます」
「危険ではないのか、狩猟採集族が放たれているのだろう?」
「あ、いえ…大丈夫でございます」
石畳の船着き場から緑溢れる草地へと踏み入れると、青々とした木々の枝には青緑色の羽を垂らして休むクジャクの姿も目に入る。
のどかで、どこか聞いていた印象とは異なる。
もっと奥に行くと危険な魔獣が待ち受けているのだろうかと視線で探っていると女官長が続けた。
「以前は防衛の観点から狩猟採集族をあえて放牧しておりましたが、魔妖石が開発されてからは不要と見なされ、現在は北の角のその先、エリス山脈との間の密林地帯に生息しているのみとなっております」
「ずいぶん魔妖石とやらへの信頼が強いのだな」
「はい、何事においても大変優れた万能石でございますゆえ…」
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