箱庭の幸福~奴隷を買ったらいつの間にかハーレムが出来ていた~

氷雨

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「こ、これって!!」

そう言いながら俺が先程採取してきた薬草をドバっとカウンターへ出すと、茶髪のボブカットの受付嬢(ミリアさんと言うらしい)が大きな目をこれでもかって言うほど見開いて驚いていた。


バンッ!!

「…!?」

「あ、あの、あの、これってどこで見つけてきたんですか!?!?」


内心「ファッ!?」なんていう奇声を上げながら後ろへ一歩後ずさる。


カウンターに少しヒビが入っていた。

こ、こえぇぇぇぇ…。



「あ、す、すみませんっ…なんとも高純度のマキマ草だったもので、と、取り乱してしまいましたっ」


「いや、いいよ…それで…」

「はい!これはもう保管モノですよ!!!」


精算をしてほしいと言おうとして、被せ気味にミリアさんが興奮しながら拳を握った。


ちょっ、その手は何?
殴らないよね?大丈夫だよね?


「いや、そうじゃなく、早く精算をしてほしいんだけど…」

「はっ!!精算!!…す、すみません、私重度の薬草オタクでして…も、申し訳ありません…」


しゅんっとしてしまったミリアさん。

彼女は少し、いや、かなり変わった子のようだ。
まぁ、可愛いから許すけど。

我ながらチョロっと思うも、可愛いと思ったんだからしゃーない。


「…マキマ草が30本、コーラン草が43本、タキパド草が12本、ナロワ草が62本、パルム草が10本ですね、ではお先にこちらナロワ草、パルム草の報酬460テールになります。」


依頼分のマキマ草って10本だから、依頼分の中に高純度のマキマ草1本入っちゃうけど…そこら辺ってどういう仕組みなんだろうか?…後で聞いてみるか。


「…次に依頼分のマキマ草10本、コーラン草15本、タキパド草5本の報酬を抜いてこちら2,329テールになります…そしてこちらが依頼報酬分の300テールになるので、合計3,089テールになります、お確かめくださいませ。」

「はい、ありがとうございます」


お礼を言って、ミリアさんから緑色っぽいの2枚の札と銀色の硬貨を1枚と銅色の硬貨を30枚、青銅色の硬貨を9枚を受け取った。


どうやらこの世界のお金は日本と同じような感じのようで、違うといえば5円玉の役目をする硬貨が無いことくらいのようだ。


「…あの、どうかしましたか?」


俺がお金受取ったまま動かないから、ミリアさんが心配そうに聞いてきた。それに「いえ、なんでもありません」と答えると、お金を無造作にポケットにしまった。


「あの質問してもいいですか?」

「はい、いいですよ!」

「…高純度のマキマ草って21本ありましたよね?依頼分の10本の中に高純度のマキマ草を混ぜたんですか?」


「あーあれですね!大丈夫ですよ!、私がしっかり通常のマキマ草を紛れ込ませておいたんで!!」

「…!?」


さっきから変わった子だなとは思っていたが、本当に変わった子だった。ちゃっかりしているというか、なんというか、まぁ憎めないタイプの子ではあるな。


それからおすすめの宿や、薬草の相場などをいくつか質問し終わると、オススメされた宿へと向かったのだった。












紹介された『トューンベンの宿』へ来た俺は、カランカランとベルの音を聴きながら扉を開けた。


「いらっしゃい!!」


小気味の良い音と共に聞こえたのは元気な声で、見ればカウンターにはそばかすの良く似合う赤毛の女の子がいた。


「こんにちは、取り敢えず1日だけ泊まりたい。」


「1日ですね!150テールになります!プラス70テールで食事が付きますがどうしますか?」

「それって3食?」

「はい!!」

「じゃあお願いしようかな?それとお風呂はここには無いのかな?」

「えぇ!?お客さんお風呂入ったことあるの!?」


なんとなしに聞いた事だったのだが、どうやらこの子にしては驚くべきことだったようで、「はえ~お客さん金持ちなんだな~」なんて言いながら驚いている。


街の雰囲気から見るに中世ヨーロッパって感じだから、もしかしたらお風呂が無いのかもしれない。


となると困るな…。


俺お風呂入らないと寝れないんだけど…。


そうか、そうなのか…。


俺が難しい顔をして思案していれば、女の子は声をかけてきた。


「あの、お風呂はないけど、桶や盥を貸し出してるのでそれで我慢していただけますか…?」


緑色の瞳をうるうるとさせながら、凄く申し訳なさそうに女の子が言ってくる。


え、なんかすごく悪いことした気分だ…。


まぁでも、体が洗えるだけでも十分だし、俺は盥を借りることにして220テールを支払い。そばかすの女の子アミーに部屋の鍵を貰うと、食堂の方へと向かった。






「お待ちどうさま!こちらブルータンの燻製とナロワスープだよ、どうぞ!」


そう言ってコトっとテーブルに置かれた料理はとても美味しそうだった。

俺は開いていたステータス画面をを閉じて、早速料理にかぶりついた。


ブルータンと言う豚肉のようなスライスされた燻製を口の中に掻き込みながら、先程の実験を思う。


この世界に来た時、俺は強制的にレベルを上げさせられたが、あそこには人っ子一人としていなかった。だとすると、あの草原で戦えるものが居ないということになる。

つまりだ、俺のステータスは酷くチート機能になっているのでは?という見解を抱いた俺は、店員が料理を運んでくるのを見計らってステータス画面を開いた。

が、店員はそれに反応することなく俺の目の前に来て、尚且つステータス画面をすり抜けて料理を置いたのだ。

ということはだ、ステータス画面とは他人に見られることはなく、冒険者登録で開示する指示がなかったことを踏まえると、そもそもこの世界にステータス画面という概念すら無いのかもしれないが、取りえず今は他人に見られることは無いということだけはハッキリとわかった。それだけでも僥倖と言えよう。



ナロワ草の浮かぶコーンスープのような黄色いトロリとしたスープを飲みながら、もう一度ステータス画面を開示し、確認する。



ユキ     18歳    rank. 40

人間   :    男

体力    690/700

魔力    102/1089

スキル   剣技  lv.6  かぎ爪 lv.1  気配察知  lv. 1   鑑定  lv. 3 

称号    【異世界転移者】【闇に好かれし者】【ドランゴンスレイヤー】【セーリャ神の加護】



特に変わりはないが、少しだけ魔力が回復していた。
この世界に来て全くと言っていいほど魔法を見かけないんだが、この世界に魔法は無いのだろうか?
ただ俺のステータス画面に魔力とあるし、実際鑑定スキルで使っているため存在しないという考えはなしだ。

しかし…いまいちこの世界の平均の体力値や魔力が分からないな…。


一体俺はどれくらい強いんだろうか。
今後の冒険者生活のためにある程度自分の能力値を知っておきたかったんだけど…。


「いや…待てよ」


俺は食堂を歩き回る店員さんをなんとなしに見ながら、唐突に思いついた。



鑑定スキル…使えるんじゃね?それ使えば分かるくない?


そう思った俺は早速少しだけ回復した魔力を消費して鑑定スキルを発動した。


忙しそうに歩き回る先程の店員さんに意識を向け、鑑定する。


ナーラ      25歳      rank.5

人間  :  女

体力  :  20/56

魔力  :  10/10

スキル     接客  lv.4   鼻歌  lv.2  料理 lv.5



「ひっくっ!!!!」

「!?」


俺のいるテーブルの横を通り過ぎる客が俺の声にギョッとした顔でこちらを見ていた。


「あぁ、なんでもないです、すみません」


顔を見ずに言う俺をおそらくだが、なんだコイツみたいな目で去っていくのを気配で確認しながら、ナーラさんというあの店員さんに意識を向け、鑑定スキルを発動した。

スープを一口、俺はもう一度ステータス画面を見る。


ナーラ      25歳      rank.5

人間  :  女

体力  :  20/56

魔力  :  10/10

スキル     接客  lv.4   鼻歌  lv.2  料理 lv.5


「レベル5…嘘だろ…」


低すぎる、それに、この体力と魔力も明らかに低い。


普通に25年間生活していてレベル5しか上がらず、体力も魔力も低いまま。


もしこれが普通のステータスだと考えると…俺って相当な化け物じゃないか?


一体この世界に俺を呼んだやつはどんな頭してんだ。こんなステータスが普通として、もし俺が力なんて使ってみろ、絶対に引かれるから、怖がられるから。



というか、接客と料理は分かるが鼻歌ってなんだよ。あれか?鼻歌を歌うのが趣味で、なにか作業したりする時に歌ったりしてたらスキル習得しちゃったみたいなやつなのか?俺も鑑定スキル願ったら習得できたし、充分有り得るな。







「はぁ、マジか…」


あれから何回か鑑定スキルを使って、色々と情報を得ることが出来た。

まず、鑑定スキルは使う度に魔力を10使うようで、102あった魔力を10回の鑑定スキルに費やして、食堂で食事をしている客達に使ったのだ。


そして分かった。


この世界の平均ステータスのレベルは4~7。
体力はバラバラだったため判断がつかないが、魔力は5~150辺りだった。


ただこれは一般人のことであって、冒険者は違った。


食堂に居た冒険者らしき人達を鑑定してみたところ、レベルは12~15。
体力は少なくとも70以上。
魔力はまちまちで、無いものは10程度だが、あるものに至っては250程あった。



たったの10人、それも田舎とはいかないこの街の規模じゃ正確な数値は測れないが、まぁいいだろう。


俺は燻製とスープを食べ終わると、ゆったりと歩きながら自分の部屋へと向かった。




部屋に着くと、俺は酷くダルい体を引きづってベットに横になった。

もうダメだった。

体が鉛のように重くなったみたいに、言うことをきかなかったのだ。

体を仰向けにして、呟く。


「これが、魔力切れか…」


霞む意識の中で、もう一泊分取っておけばよかったと後悔しながら、俺は深い眠りに落ちた。




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