異世界から帰れません。

ガンダー

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目覚めるとそこは

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朝起きて朝食をとり、学校へ向かう。
友達とくだらない話で盛り上がり、家に帰る。
流れ作業のような毎日に俺は心のどこかで退屈に思っていたのかもしれない。
誰かこの平凡な日常に変化を与えてくれる事を願っていたのかもしれない。
そんな願いや思いがあったからなのか、俺は今、異世界にいる。


ピピピピピピピッ ガチャ
朝6時。目覚まし時計を止めて学校へ行く支度をする。食卓に行き、朝食をとり学校へ向かう。その日は、いつもと変わらずそんなふうに始まったのだった。

「おはよう!健!」

後から声をかけられた。

「おはよう。拓。朝から元気いいな。」

彼の名前は拓也。
高校に入ってから知り合った友達だ。
拓也は竹を割ったような性格で、誰にでも受け入れられるような優しい奴だ。
俺はそんな拓也と入学初日に意気投合して、今もほとんど毎日のようにつるんでる。

「聞いたかよ、健。今日の数学の時間抜き打ちテストだってよ。」

「知ってるよ。昨日クラスの奴らがSNSで騒いでたろ?」

「マジかよ…見てなかった…」

「まぁ気にすんなよ、多分そんなに難しテストじゃないからさ。」

「お前はいいよな。頭がいいから。」

「そりゃお前と比べたらな。」

拓也は正直に言ってバカだ。
勉強してないと言う訳ではなく、勉強しても身につかないと言った方が正しい。
前に勉強を教えた時も次の日にはさっぱりと忘れていた始末だ。

「それは少し酷いんじゃない?」

「事実だ。」

「事実だとしてもよぉ。」

「ほら、学校着いたぞ。さっさと自分の教室に行け。」

「はいよ。」

拓也と別れて自分の教室に入る。
左から2列目の一番後ろが俺の席だ。
そこの席に座り今日もまたいつもと変わらない1日が始まった。


キーンコーンカーンコーン
学校の終わりを告げるチャイムが鳴ると同時に教室は騒がしくなる。
さっさと帰る者や友達とわいわい騒いでる者、部活に行く者など様々だ。
俺はすぐに帰る支度をする。
特に部活にも入っていないため、居残る理由もない。
今朝一緒だった拓也は剣道部に所属しているため、帰りは1人だ。
いつもと同じ道を
いつもと同じ速度で
いつもと同じように歩いている。
ところが

「ん?なんであんな所に扉があるんだ?」

そこには木でできたとてもオシャレな扉がなんの前触れもなくポツンと歩道に立っていた。
道行く人達は、まるで何も無いかのように見向きもしない。
明らかに異様だ。
しかし、その扉は不思議な魔法でもかかっているかのように俺の目を釘付けにして離さない。
俺はいつの間にか扉に手をかけてゆっくりと押し開いた。
その瞬間俺の体は光に包まれて、
俺は酷い眠気に襲われた。



目覚めるとそこは見知らぬ部屋だった。


見しらぬ木造の天井。硬いベット。

「…ここは…俺はいったい…」

「おっ。起きたかい?兄ちゃん」

聞いた事の無い女性の声だ。

「…ここはどこだ。」

「ここはうちらがやってる宿屋さ。」

10代くらいだろうか?女の子が答えた。
宿屋?なんで宿屋なんかに。俺は確か学校から帰る途中だったはず…

「なんで、俺はここに」

「覚えてねぇのかよ兄ちゃん!凄かったんだぜ?買い出しから帰る途中の道でいきなりパァーっと目の前が光ったと思ったら兄ちゃんが出てきていきなり倒れたんだぜ?!」

「そうだ。確か俺は扉の中に…」

「そんでよぉ。そんなえらい登場したわけだからよ、恐る恐る近づいてみたら兄ちゃんぐっすり寝てるわけよ。このまま放って置くのもあれだから、仕方なくうちの宿屋まで運んで来たってわけ。」

「そうだったのか。ありがとうな。それとひとつ聞きたいんだが…」

あぁ、そうだ。どうしても先程から気になって仕方がない。

「おう。どうした?なんでも聞いてくれよ。」

「その頭のはなんだ?」

その子の頭には紛れもなくネコ耳がついていた。

「なんだよ、兄ちゃん。獣人見たことねぇのかよ。どんだけ田舎からきたんだよ。」

「獣人?そんなのいるわけ…」

「なんなら、ほら。触ってみな。」

そう言うと女の子は頭を僕に突き出した。

「しっ、失礼します。」

女の子のネコ耳を触ってみる。
……うわっ何これ超気持ちいい!もふもふしてて、ふさふさしてて、ふわふわしてる!それに少し暖かい。まるで本物みたいだ。

「凄いですね。こんなにリアルな付け耳あるんですね。」

「兄ちゃん…うちの言う事信じてないんか…」

当たり前だ。この世に獣人などいるわけが無い。付け耳付けて、はい私は獣人ですって誰がそんな簡単な嘘に引っかかるか。

「なんなら、宿の外みてみ。もう起き上がれるやろ。」

「ああ、」

俺は寝かされていたベットから降りて、部屋の外に出る。宿屋は全体的に木造で落ち着いた雰囲気だ。
玄関と思わしき扉の前に立つ。

『今度は、普通の扉でありますように。』

扉を押し開く。するとそこは…

「なっ、なんだ…ここは…」

行き交う人々はほとんどが人間だが、獣人らしき者や、耳の長い者(恐らくエルフ)もいる。車の代わりと言わんばかりに走る馬車。中世のヨーロッパを彷彿とさせる街並みはおおよそ現代の日本とは思えない。

「日本じゃない?」

「ニッポン?聞いた事ねぇなそんな地名。どこら辺にあるんだ?」

嘘だろ…日本を知らない?ならここは何処だって言うんだ。まさかあの扉に入ったから?そんな馬鹿な!

「日本だよ!日本!本当は知ってるんだろ?なぁ悪い冗談なんだろ?お前も外奴らも皆俺を騙そうとしてるんだろ?!なぁ!」

「ちょっと。あんまり大声出すなよ…みんな見てるぜ?」

「ふざけんなよ!俺はさっきまで日本に居たんだ!それが一瞬で別の場所に移動するわけないだろ!」

「わかった。わかったから、とりあえず中に入ろうな?外の連中に迷惑だからな?」

俺は促されて宿の中に入った。何が起こってるのかわからない。俺は今どういう状況なんだ…何もわからない。怖い。

「ここはどこなんだ…」

「やっと落ち着いたか。全くあんた本当に遠い所から来たんだな。外に出ただけで騒がれると思わなかったぜ。」

「ここはどこだ。」

「ここは宿屋……ってことを聞きたいんじゃないんだよなきっと。どこから聞きたい?」

「最初から…」

「あいよ。おまかせあれ。ここはルメルク大陸の東部にある町リーヤ。ここいらでは1番大きな町だな。」

「ルメルク…リーヤ…」

「そうだ。ここは大きな町だからよく旅人とか冒険者とかが来るんだ。うちは主にそいつらに宿を提供している。…見ての通り閑古鳥が鳴いてるがな。」

ルメルク大陸。リーヤ。聞いたことない地名だ。学校で地理学については学んでいたがそんな場所は習ったことがない。それに冒険者?なんだそれは。まるでRPGみたいだ。獣人のこの子といい、町の雰囲気といい、やはりおかしい。まるで、まるで異世界に来てしまったかのようだ…

「俺は白石 健斗だ。さっきは怒鳴ってすまなかった。」

「いいってことよ。イシイ ケントか。変わった名前だな。うちはメリスっていうんだ。よろしくな。」

「なぁメリスさん。」

「呼び捨てで構わねぇよ。どした?」

「メリス。その耳本当に本物なのか?」

「兄ちゃんまだ信じてなかったんやな。本物や!」

「さっき外にいた耳が長い人は」

「それはエルフだな。確かにエルフは人数こそ少ないが全く見かけないって程でもないだろ?」

本物の獣人。それにエルフ。冒険者。
間違いない。俺は今、異世界にいる。こんな馬鹿げたことが現実に起こるなんて思いもよらなかった。…帰りたい…家族に…拓に会いたい。まだやりたかったこと沢山あったのに。もう戻れないのか…いや、そんなことは無い!あっちからこっちに来れたんだからこっちからあっちに行けても不思議じゃない。

探そう。元の世界に帰るための方法を。
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