ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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エゴに満ちたもの

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『僕は、自分の勝手でこの世に送り出してしまった子供達に幸せになってほしい。僕の子供達だけじゃなく、この世に送り出されてきたすべての<子供達>に幸せになってほしいと願ってる』

ミハエルは常にそう考えていた。

そして彼の言う<子供達>とは、今、ボリスの会社が管理する石油採掘施設を攻撃してくるゲリラ達のことも含まれている。

しかしそれは、決して<博愛主義>と呼ばれるようなものではなかった。そんなものよりも遥かに具体的で個人的で即物的でエゴに満ちたものでしかない。

なぜならミハエルがそう考えるのは、

『不幸の中にいる人達がそれを理由に僕の家族を不幸にしようとすることが許せない。認められない。だから、皆が幸せになって他人を不幸に巻き込もうとする人が減ってくれないと困る』

というだけでしかないのだから。

つまり、自分の家族、ひいては自分自身が幸せであり続けるためには不幸な人間がいなくなってくれるのが一番確実というだけのことであり、結局は自分のためということなのだ。

とは言え、相手が完全に殺すつもりで攻撃を仕掛けてくるのなら、半端な対応はできない。

ボリス達が自動小銃や機関砲などの人間の武器を使って応戦する中、セルゲイとミハエルは気配を絶った状態でゲリラ達の中へと突入する。

なので、無論、ボリスと以外の人間には二人のことは認識できず、結果としてボリス達の側からの攻撃にも曝されるものの、そんなものに当たりはしないし、そもそも当たったところで幼い子供が投げた小石がぶつかった程度のダメージしかない。

ゲリラ達が放つ銃弾がボリス達に届かないように叩き落としつつ、まずは最も前にいたゲリラの顔面にセルゲイが蹴りを入れる。

「!?」

弾丸に当たったそれとはまったく違う衝撃にそのゲリラは何が起こったのか一切理解できないまま昏倒。

そしてすかさずミハエルが、ボリスの会社に備蓄されていた結束バンドでゲリラの両手両足を拘束し、その上で逆エビ反りの形にして両手両足をやはり結束バンドで繋ぎ止める。こうすればもう人間の力ではどうにもならない。

その間にセルゲイが次のゲリラの喉に、相撲で言う<喉輪>を食らわして一瞬意識を飛ばし、やはりミハエルがすかさず拘束する。

見事な連携だった。

ゲリラにしてみれば訳の分からないうちに仲間が次々と倒れたと思えば拘束されていく状況に混乱し、ますますまともな戦闘ができなくなっていく。

一方、ボリスの会社の人間達からは障害物の陰に倒れて見えなくなる形だったのであくまで自分達の攻撃が当たっているように感じていて、それが次々とゲリラを倒していくのだからテンションが上がる。

「いけいけいけーっ!!」

「なめんなーっ!!」

敵味方双方の銃弾が乱れ飛ぶ中をセルゲイとミハエルは踊るように舞い、ゲリラがロケット砲を構えればその瞬間に打ち倒し、ボリス達を守ったのだった。

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