ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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第二幕

自身の利になる

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『必要なのは<我慢>ではなく、自分にとって都合の悪い状況に直面した際、いかに具体的な対処が行えるかである』

と、ミハエルは考えている。

例を挙げるなら、

『小さな交差点で信号に引っかかった時、どうすれば無理なくそれを待つことができるか?』

だろうか。ミハエルは、と言うかアオは、そういう時、

『自分が今、たった数十秒さえ待てないような精神状態かどうかを確認する機会だ』

と捉える。

『信号が変わるまでなど、通常は数十秒から長くて一分少々。命に関わるような状況でもないのにたったそれだけの時間すら待てないような精神状態は、決して健やかではない』

と自己診断するために利用するのだ。

そうして心を落ち着ける。だから我慢などしなくても信号を守ることができる。

自転車に乗って買い物に行った時などに、僅か数メートル十数メートルの距離を歩くのが嫌だからと、『ここには自転車を置かないでください』と書かれた案内を無視して、入り口のすぐ脇、万が一の火災などの際に避難の邪魔にならないようにと余裕を持たせるために確保しているスペースに自転車を置いてしまいそうになったら、それは自分の精神状態が健やかでないと自己診断に利用する。

『いけないいけない。心を穏やかにしなきゃ』

と自分に言い聞かせる。

これも<我慢>などではなく、どこまでいっても、

『心の平穏を保つことは、自身の利になる』

からである。

他人の些細な振る舞いにキレないようにするのも、結局はそれ。

これができれば、SNSで誰かを自殺するまで罵ったりもしなくなる。

SNSなどで相手が自殺するまで罵ったりするようなのは、れっきとした<殺人>ではないのか?

こう言うと、

『その程度のことで自殺するような奴は元々この世界で生きていけない!』

などと言って自身の行いを省みないような輩のどこが<我慢ができる人間>だというのか?

<我慢ができる人間>は、テレビの出演者の振る舞いにキレたりしないのではないのか?

だからアオは、<我慢>ではなく、

『こんなことに苛々するってのは、私自身がまともな状態じゃない証拠』

と捉えて、スルーすることを心掛ける。

この世には本当に、<我慢ができない人間>が溢れている。その事実を見るだけでも、ただ、

『我慢しろ。我慢ができる人間になれ!』

などと頭ごなしに押し付けても<我慢ができる人間>には育たないことが分かるのではないのか?

その事実と向き合うことができない人間のどこが<我慢のできる人間>なのか?

それを指摘されてキレる者のどこが<我慢のできる人間>なのか?

『我慢ができる人間など、実はとても希少な存在。

子供の頃に<我慢>を教えることで我慢のできる人間に育つという考えなど、ただの欺瞞』

ということを、インターネットの普及は浮き彫りにしてくれたのだろう。

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