ショタパパ ミハエルくん(耳の痛い話バージョン)あるいは、(とっ散らかったバージョン)

京衛武百十

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第三幕

一つの人格として

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僕はつい最近まで、悠里ユーリ安和アンナだけで外出はさせなかった。出掛ける時は必ず僕がついて行って、見守っていた。

悠里や安和が、自分で自分を上手く制御できているか確認するために。

子供は、何か興味が引かれるものを見付けると、他に注意が行かなくなる傾向がある。

これは、本人がいくら気を付けていても、大人がいくら『気を付けろ』と説いても、解消しないことなんだ。脳の発達が十分でなく、情報を上手く整理できないことで、本人にとって優先順位の高い対象以外については慮外とされてしまうから。

吸血鬼やダンピールは人間に比べればそういう部分の成長も早いけど、感情についてはやっぱり人間と同じで制御が難しい部分もある。

だから、見掛けた人間の振る舞いに対してカッとならないかというのも確かめなくちゃいけなかった。

万が一、二人が激情に囚われて人間を傷付けたりしてしまわないかというのをしっかり確認しないといけなかったからね。

これは、<過保護>や<過干渉>じゃない。

『一つの<人格>を社会に送り出すにあたって、それが<社会にとっての大きなリスク>にならないように監督する義務が親である僕にはある』

ということなんだ。

それが同時に、悠里や安和を守ることにもつながる。一時の感情に囚われて他人を傷付ければ、二人は<人間の敵>になってしまう。

こんな不幸なことはない。悠里や安和にとっても不幸であると同時に、人間にとっても大きな不幸だ。

人間にとってダンピールは、敵対するには強大過ぎる相手だからね。二人を排除しようとすれば、それが達成されるまでにどれほどの被害が出るか。

だから、『敵対しないこと』が、人間にとっても効果的な<生存戦略>なんだよ。

悠里も安和も、自分から人間と敵対するつもりはない。けれど、人間の振る舞いの中には、二人の感情を強く揺さぶらずにいられないこともある。

紫音しおんの件もその一つだと思う。

紫音しおん椿つばきに甘えてるのはいいんだ。それよりも、紫音しおんの両親の彼に対する<仕打ち>こそを、

「許せない…!」

と憤っていた。でも、これについては、僕達が干渉しても容易に解決することじゃないし、僕達が<吸血鬼やダンピールとしての能力>解決しても決して<種としての人間>のためにはならないから、まだ経験の浅い悠里や安和には任せられない。

椿に任せているのは、あくまで紫音しおんの方から椿を頼ってきたからだからね。

僕のその<方針>についても、二人はよく理解してくれている。それが確認できたから、悠里が単独で行動することを、僕は認めたんだ。

悠里はしっかりと、精神的にも成長してくれているよ。一つの人格として自立してくれている。

その事実がとても嬉しい。

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