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2章
65話 三十六計逃げるに如かず
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「もぉ、帰りましょうよぉ!」
「まだ来たばっかりでしょ」
あれから数度、扉を開いて中に入りを繰り返していくんだが、「バン」と大きい音をさせながら扉が閉まっていくたびに鳴き声を上げる。もうちょっと慣れてほしいんだけど、そんなに驚くもんかね?
「まあ、こんな風になるとは私も思っていなかったけど」
「ひっひっふぅ……ひっひっふぅ……!」
いや、マジでそんなに驚く?って言うかホラーゲームじゃ結構当たり前のことだから私の感覚がマヒしてるんだろうか。いきなり何かが出てくるとか、振り向いたら何かいるとかそういうのは鉄板過ぎて逆にベタ演出でわくわくするもんだけど。
「それにしても何でPT組もうと思ったわけ?」
もう少しは気分転換できるように話題を反らしてやる。挙動不審とかそういうレベルじゃなくて慌ててるもんだから落ち着かせるのにはいいだろう。そんな風に話を恐怖から反らしつつ、次の扉を開け、盾と扉越しに中を確認してから一緒に入る。流石にばんばんと大きい音を立てて締まるのは慣れたようだが。
「ふーっ、ふーっ……一緒にやる予定だった人はいたんですけど、ランダムでグループ組むとは思ってなかったんですよぉ!?」
がたがたと不意に鳴ったポルターガイスト現象で話が遮られる。
うーん、理由としては私と同じような他人と話せないというコミュ障なんだろうけど、一緒にゲームをやる相手がいるだけ私よりもコミュ力あるだろこいつは。
それにステータスの振り的にもタンク型って何だかんだで重宝される所なんだけど、それでも誘われないものかね。むしろ攻撃職が居ないと自分のレベリングもままならないのにどうやってここまできたのやら。
「まあ私と組んだことが運の尽きかもね」
「まさかこんなホラーゲームやるとは思ってませんよ……」
文字通りがっくりと肩を落としながらもしっかりと前衛は張ってくれる。何だかんだで可愛い奴だな。そんな他愛もない話などもしながら先に進んでいく。
屋敷自体はダンジョン扱いになっているのか、マップを開いても未踏破の部分は表示されていない。今まで通過してきた部分はしっかりと表示されるが、そこまで広いという感じもあまりない。
結局何事もなく、ぐるっと屋敷内を一周してしまった。道中は基本的に音が出たり、ポルターガイスト的ながたがたとしたのが起きたりと言うのはあったがそれ以外では特に問題はない。
一応階段があるので2階も行ってみたいのだが、構造的にあまり変わらないと言うか、多分同じようにぐるっと回って戻ってくるような気がする。
「ここまで何にもないとは……」
「やっぱりここじゃないのでは」
そんなことはないはずだ、足跡を辿って此処にきて、結局何にもないですってイベントじゃなくても怪しすぎる。足跡が途切れた部分……足元?
「ふむ……しばらく周辺警戒しておいて」
「……? わかりました」
そうなってくると地上じゃなくて地下じゃないかと思う。
どこか床下に空洞と言うか階段がある所がある……気がする。地面に耳を付けて自分でこつこつと床を叩いて反響や音の変化があるかを確認していく。
……そんな顔でこっちを見るんじゃないの。こういうのって珍しくないじゃない。
「ちょっと、そのタワーシールドで床叩いてくれない?」
「えぇー……」
「いいから」
わかりましたと言うと、思い切り地面にシールドを叩きつける。それを横目に見つつ地面から響いてくる音を聞くが、確かに「うんうん」と唸るような音がするので空洞的な物はある気がする。
頭を上げて軽く考える、どうせこのままじゃ進展もないし、行くんであればこの辺りを調べるのが妥当なのだろうけど、チェルシーは精神的にやばそうだ。
「もうちょっと頑張れない?」
「うー……」
「頑張れるのね、じゃあ行くわよ」
そんな事言ってません!みたいな事を言われたようだが気にせず、また地面に耳を当てて地面をたたいて、反響音が大きい部分を探し回る。その様子をじっくり見られているわけだが、半ばあきらめと言うか、此処まで徹底的にやってるのがいなかったのか?
しばらくそんな事をして、音が大きいであろう場所に目星をつけ銃剣で床に傷をつける。で、そこを中心として仮定して、響かない位置も特定していって、おおよそ開くであろう部分を確認する。
本当だったら探査系のスキルを持っている人物を連れてじっくりと探索するというのが多分王道で正道なんだろうけど、知ったこっちゃねえ。
「で、何するんですか?」
「簡単よ、爆破するだけだから」
ポーチの中から火薬の小袋を出して銃剣で傷をつけた部分の中心に30g分の黒色火薬を山にして、それに着火させるため5g分を導火線代わりに薄くのばしていく。何だかんだでV極型は対衝撃の壁ができるから相性が良かったかもしれない。
チェルシーに指示を出してタワーシールドをしゃがんで構えさせてしっかりと対衝撃姿勢を取らせる。
それを確認してから導火線に火打ち石で火を付けてからすぐにチェルシーの後ろに隠れる。
あ、そういえば耳栓作るっていうのを思い出したぞ。
じじじっとしばらく燃え続ける音がしてから一気に辺りが明るく熱くなる感じが伝わり、轟音が響く。やっぱり火力上がってるじゃねえか、こんな威力の爆心地にいたらそりゃ爆死するわ。
轟音や閃光が収まり、ぱらぱらと瓦礫やらが落ちる音が落ち着いたであろうタイミングで盾から顔をだす。狙った地点の床にはがっつりと穴が開いていて、地下への階段がやっぱり見つかる。
「足跡が途切れていたのはこれがあったから、かしらね」
「アカメさん、どんなプレイヤーなんですか……」
流石に爆破の衝撃までは抑えきれなかったのか若干だがHPが削れたと文句を言い始めるのでHP下級ポーションを渡しておく。V極型なだけあってそこまで大きいダメージは受けなかったみたいだけど、それでも盾受けで削れるって中々のダメージだな。
そんな事を考えつつぽっかり空いた穴と言うか地下への道を覗き見る。屋敷は外の月光が入っていたからまだ明るかったが、地下は明かりが無いと厳しそうだ。
「僕松明なんて……」
「持ってるから問題ない、ほら進みなさい?」
「どうせそうだと思ってましたよ!」
お、そろそろ私の事が分かって来たんじゃないのか?何事も用意ってのは大事なんだよ。まあ今回松明を持ってたのは完全に硝石狩りする時の副産物ともいえるんだけど。松明自体は3本あるんで2本使ったら戻る感じにしておけばいいだろう。暗視とか欲しい。
「後ろから大きい音もないんだし、大丈夫でしょ」
「肝座りすぎじゃないですか!」
「はいはい」
屋敷自体はダミーなのか?吹っ飛ばしてるから扉が閉まるとか言うのも無いし、一応の脱出は出来る様になってしまったわけだが、本当だったら閉じ込められるとかっていう気もする。
何にせよ一回ぶち抜いた床が元に戻るって事はないだろう。
一応地下に降りる際にトラッカーを使ってみるが、流石に時間が経ったのか足跡は分からない。すぐに効果を切ってMP下級ポーションを1つ飲んでから松明を持って、いつもの前衛後衛のまま地下を降りていく。
一般的な1~2階分降りると通路が奥へと伸びているが、最奥まではよく見えない。
しかも上の屋敷とは違って整っているわけではない本格的なダンジョンと言った感じだ。
「うーん……出会いがしらが怖いわね……ちょっとストップ」
階段の一番下に付いてから、麻布を小さく丸くして簡易的な耳栓を作成し、それをチェルシーに。
何で?と言うか、さっき欲しかったみたいな顔をするのだが、とりあえず耳栓をさせておいた上で、PT会話で話しかける。
『こっちは通じるんじゃない?』
『これ、何の為ですか』
『流石に出合い頭はやばいと思うし、私も攻撃に回る時に音が問題あるから』
狭い所での反響がやばいのは犬野郎の時に学習済みだ。私よりもチェルシーが大きい音にビビるからそっちの対策ともいえるのだが。って言うかあんなので耳栓になるってのは何とも手抜きともいえる気がする。
『隠し通路とかありそうだから私は後ろも見るわ、あんたはしっかり前を確認して』
『やっぱり行くんですか……』
『毒食わば皿までよ』
食らいつくなら相手の喉元までだ。とにかくゆっくりではあるが、じりじりと前に進んで行く。今の所一本道だが、分かれ道はあるだろう、それに通路の途中で「→」のように返しがある場合普通に歩くだけだと見落とす場合もある。とにかく今までのゲーム経験をフル活用だ。
横に反れる通路をマップにマーカーを入れながら、突き当り、行き止まりまで進んで壁を叩いて隠し通路まで確認する。やっぱり何もないな、肩透かしにも程があるだろ。
『何にも無いですね』
『あとは通路をしらみ潰しに探索だな』
『また時間のかかる……』
『情報は足で稼ぐのよ、未探査エリアってぎりぎりまで調べたいじゃないの』
二人と言うかチェルシーが大きくため息を吐きだす。此処までやったら私自身も攻略組とかに当てはまるんだろうか。
とにかく地下入口まで戻り、最初の通路に行く途中でチェルシーが足を止める。
『何か、います』
『敵?味方?』
『さあ……』
松明を一旦置いて2g弾をパイプライフルに装填しておく。装填が完了したうえで左右を確認して背中合わせで構える。
『嫌なタイミングね……挟撃されない位置で来てほしかったけど』
『どうします?攻撃します?』
『あんたの攻撃範囲に入ったら問答無用でシールドバッシュでいいわ』
足音が聞こえるので結構近いのだろう、多分射程内まで近づいただろうって所で。
「いやぁあぁあ!!」
いきなり声を上げたのにびくりと驚く。ああ、もう敵なんだろうけど、さっさと攻撃しなさいよ。と、思っていたら「ガン」っと硬いものぶつける音が後ろで響く。やればできるじゃないの。
『で、どんな相手だった?』
『何でそんな冷静にぃ……』
『いいから、どんな相手だった?』
『もう、ゾンビですよゾンビ!とにかくなんか気持ち悪い感じのやつぅ!』
『そう……じゃあ頑張って倒してくれない?』
私の目の前からもゾンビ……じゃなくてスケルトンがやってくる。なるほど、死霊系のダンジョンか……うん、これはちょっとやばいかもしれない。魔法とか使えないし。
「まあ、ホラー要素もりもりだったからそんな気はしてたけど」
怪しい山の中にある屋敷に、失踪する村人、やけに多い恐怖演出、そりゃあもうそれしかないわ。
『うん、倒すのは後でいいわ、入口まで撤退よ』
『りょ、りょうかーい!』
挟撃されながらの撤退戦とかそんなに経験ないっていうのに。
「まだ来たばっかりでしょ」
あれから数度、扉を開いて中に入りを繰り返していくんだが、「バン」と大きい音をさせながら扉が閉まっていくたびに鳴き声を上げる。もうちょっと慣れてほしいんだけど、そんなに驚くもんかね?
「まあ、こんな風になるとは私も思っていなかったけど」
「ひっひっふぅ……ひっひっふぅ……!」
いや、マジでそんなに驚く?って言うかホラーゲームじゃ結構当たり前のことだから私の感覚がマヒしてるんだろうか。いきなり何かが出てくるとか、振り向いたら何かいるとかそういうのは鉄板過ぎて逆にベタ演出でわくわくするもんだけど。
「それにしても何でPT組もうと思ったわけ?」
もう少しは気分転換できるように話題を反らしてやる。挙動不審とかそういうレベルじゃなくて慌ててるもんだから落ち着かせるのにはいいだろう。そんな風に話を恐怖から反らしつつ、次の扉を開け、盾と扉越しに中を確認してから一緒に入る。流石にばんばんと大きい音を立てて締まるのは慣れたようだが。
「ふーっ、ふーっ……一緒にやる予定だった人はいたんですけど、ランダムでグループ組むとは思ってなかったんですよぉ!?」
がたがたと不意に鳴ったポルターガイスト現象で話が遮られる。
うーん、理由としては私と同じような他人と話せないというコミュ障なんだろうけど、一緒にゲームをやる相手がいるだけ私よりもコミュ力あるだろこいつは。
それにステータスの振り的にもタンク型って何だかんだで重宝される所なんだけど、それでも誘われないものかね。むしろ攻撃職が居ないと自分のレベリングもままならないのにどうやってここまできたのやら。
「まあ私と組んだことが運の尽きかもね」
「まさかこんなホラーゲームやるとは思ってませんよ……」
文字通りがっくりと肩を落としながらもしっかりと前衛は張ってくれる。何だかんだで可愛い奴だな。そんな他愛もない話などもしながら先に進んでいく。
屋敷自体はダンジョン扱いになっているのか、マップを開いても未踏破の部分は表示されていない。今まで通過してきた部分はしっかりと表示されるが、そこまで広いという感じもあまりない。
結局何事もなく、ぐるっと屋敷内を一周してしまった。道中は基本的に音が出たり、ポルターガイスト的ながたがたとしたのが起きたりと言うのはあったがそれ以外では特に問題はない。
一応階段があるので2階も行ってみたいのだが、構造的にあまり変わらないと言うか、多分同じようにぐるっと回って戻ってくるような気がする。
「ここまで何にもないとは……」
「やっぱりここじゃないのでは」
そんなことはないはずだ、足跡を辿って此処にきて、結局何にもないですってイベントじゃなくても怪しすぎる。足跡が途切れた部分……足元?
「ふむ……しばらく周辺警戒しておいて」
「……? わかりました」
そうなってくると地上じゃなくて地下じゃないかと思う。
どこか床下に空洞と言うか階段がある所がある……気がする。地面に耳を付けて自分でこつこつと床を叩いて反響や音の変化があるかを確認していく。
……そんな顔でこっちを見るんじゃないの。こういうのって珍しくないじゃない。
「ちょっと、そのタワーシールドで床叩いてくれない?」
「えぇー……」
「いいから」
わかりましたと言うと、思い切り地面にシールドを叩きつける。それを横目に見つつ地面から響いてくる音を聞くが、確かに「うんうん」と唸るような音がするので空洞的な物はある気がする。
頭を上げて軽く考える、どうせこのままじゃ進展もないし、行くんであればこの辺りを調べるのが妥当なのだろうけど、チェルシーは精神的にやばそうだ。
「もうちょっと頑張れない?」
「うー……」
「頑張れるのね、じゃあ行くわよ」
そんな事言ってません!みたいな事を言われたようだが気にせず、また地面に耳を当てて地面をたたいて、反響音が大きい部分を探し回る。その様子をじっくり見られているわけだが、半ばあきらめと言うか、此処まで徹底的にやってるのがいなかったのか?
しばらくそんな事をして、音が大きいであろう場所に目星をつけ銃剣で床に傷をつける。で、そこを中心として仮定して、響かない位置も特定していって、おおよそ開くであろう部分を確認する。
本当だったら探査系のスキルを持っている人物を連れてじっくりと探索するというのが多分王道で正道なんだろうけど、知ったこっちゃねえ。
「で、何するんですか?」
「簡単よ、爆破するだけだから」
ポーチの中から火薬の小袋を出して銃剣で傷をつけた部分の中心に30g分の黒色火薬を山にして、それに着火させるため5g分を導火線代わりに薄くのばしていく。何だかんだでV極型は対衝撃の壁ができるから相性が良かったかもしれない。
チェルシーに指示を出してタワーシールドをしゃがんで構えさせてしっかりと対衝撃姿勢を取らせる。
それを確認してから導火線に火打ち石で火を付けてからすぐにチェルシーの後ろに隠れる。
あ、そういえば耳栓作るっていうのを思い出したぞ。
じじじっとしばらく燃え続ける音がしてから一気に辺りが明るく熱くなる感じが伝わり、轟音が響く。やっぱり火力上がってるじゃねえか、こんな威力の爆心地にいたらそりゃ爆死するわ。
轟音や閃光が収まり、ぱらぱらと瓦礫やらが落ちる音が落ち着いたであろうタイミングで盾から顔をだす。狙った地点の床にはがっつりと穴が開いていて、地下への階段がやっぱり見つかる。
「足跡が途切れていたのはこれがあったから、かしらね」
「アカメさん、どんなプレイヤーなんですか……」
流石に爆破の衝撃までは抑えきれなかったのか若干だがHPが削れたと文句を言い始めるのでHP下級ポーションを渡しておく。V極型なだけあってそこまで大きいダメージは受けなかったみたいだけど、それでも盾受けで削れるって中々のダメージだな。
そんな事を考えつつぽっかり空いた穴と言うか地下への道を覗き見る。屋敷は外の月光が入っていたからまだ明るかったが、地下は明かりが無いと厳しそうだ。
「僕松明なんて……」
「持ってるから問題ない、ほら進みなさい?」
「どうせそうだと思ってましたよ!」
お、そろそろ私の事が分かって来たんじゃないのか?何事も用意ってのは大事なんだよ。まあ今回松明を持ってたのは完全に硝石狩りする時の副産物ともいえるんだけど。松明自体は3本あるんで2本使ったら戻る感じにしておけばいいだろう。暗視とか欲しい。
「後ろから大きい音もないんだし、大丈夫でしょ」
「肝座りすぎじゃないですか!」
「はいはい」
屋敷自体はダミーなのか?吹っ飛ばしてるから扉が閉まるとか言うのも無いし、一応の脱出は出来る様になってしまったわけだが、本当だったら閉じ込められるとかっていう気もする。
何にせよ一回ぶち抜いた床が元に戻るって事はないだろう。
一応地下に降りる際にトラッカーを使ってみるが、流石に時間が経ったのか足跡は分からない。すぐに効果を切ってMP下級ポーションを1つ飲んでから松明を持って、いつもの前衛後衛のまま地下を降りていく。
一般的な1~2階分降りると通路が奥へと伸びているが、最奥まではよく見えない。
しかも上の屋敷とは違って整っているわけではない本格的なダンジョンと言った感じだ。
「うーん……出会いがしらが怖いわね……ちょっとストップ」
階段の一番下に付いてから、麻布を小さく丸くして簡易的な耳栓を作成し、それをチェルシーに。
何で?と言うか、さっき欲しかったみたいな顔をするのだが、とりあえず耳栓をさせておいた上で、PT会話で話しかける。
『こっちは通じるんじゃない?』
『これ、何の為ですか』
『流石に出合い頭はやばいと思うし、私も攻撃に回る時に音が問題あるから』
狭い所での反響がやばいのは犬野郎の時に学習済みだ。私よりもチェルシーが大きい音にビビるからそっちの対策ともいえるのだが。って言うかあんなので耳栓になるってのは何とも手抜きともいえる気がする。
『隠し通路とかありそうだから私は後ろも見るわ、あんたはしっかり前を確認して』
『やっぱり行くんですか……』
『毒食わば皿までよ』
食らいつくなら相手の喉元までだ。とにかくゆっくりではあるが、じりじりと前に進んで行く。今の所一本道だが、分かれ道はあるだろう、それに通路の途中で「→」のように返しがある場合普通に歩くだけだと見落とす場合もある。とにかく今までのゲーム経験をフル活用だ。
横に反れる通路をマップにマーカーを入れながら、突き当り、行き止まりまで進んで壁を叩いて隠し通路まで確認する。やっぱり何もないな、肩透かしにも程があるだろ。
『何にも無いですね』
『あとは通路をしらみ潰しに探索だな』
『また時間のかかる……』
『情報は足で稼ぐのよ、未探査エリアってぎりぎりまで調べたいじゃないの』
二人と言うかチェルシーが大きくため息を吐きだす。此処までやったら私自身も攻略組とかに当てはまるんだろうか。
とにかく地下入口まで戻り、最初の通路に行く途中でチェルシーが足を止める。
『何か、います』
『敵?味方?』
『さあ……』
松明を一旦置いて2g弾をパイプライフルに装填しておく。装填が完了したうえで左右を確認して背中合わせで構える。
『嫌なタイミングね……挟撃されない位置で来てほしかったけど』
『どうします?攻撃します?』
『あんたの攻撃範囲に入ったら問答無用でシールドバッシュでいいわ』
足音が聞こえるので結構近いのだろう、多分射程内まで近づいただろうって所で。
「いやぁあぁあ!!」
いきなり声を上げたのにびくりと驚く。ああ、もう敵なんだろうけど、さっさと攻撃しなさいよ。と、思っていたら「ガン」っと硬いものぶつける音が後ろで響く。やればできるじゃないの。
『で、どんな相手だった?』
『何でそんな冷静にぃ……』
『いいから、どんな相手だった?』
『もう、ゾンビですよゾンビ!とにかくなんか気持ち悪い感じのやつぅ!』
『そう……じゃあ頑張って倒してくれない?』
私の目の前からもゾンビ……じゃなくてスケルトンがやってくる。なるほど、死霊系のダンジョンか……うん、これはちょっとやばいかもしれない。魔法とか使えないし。
「まあ、ホラー要素もりもりだったからそんな気はしてたけど」
怪しい山の中にある屋敷に、失踪する村人、やけに多い恐怖演出、そりゃあもうそれしかないわ。
『うん、倒すのは後でいいわ、入口まで撤退よ』
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