最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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4章

115話 同類のようで同類じゃない

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 あれからしばらく、えっちらおっちらとオールを動かして何だかんだで海上のダンジョン入口に。海上とは言っているが、ぽつんと一島だけあった無人島の中心が口を開けているタイプだ。
 それにしてもよくもまあこんな所にダンジョンがあるって……見つけたのはどんな奴なんだろうな。
 
「これ見つけた奴ってどんな事したら此処に来れたわけ?」
「海を泳いでたら流されて、死ぬ前に此処に流れ着いたって話らしいっす。船は用意しなきゃならない、遠い、めんどくさいの三拍子で思いっきり不人気ダンジョンっすよ」
「船用意してここまで来なきゃいけないならそりゃ不人気だわ」
「結構遠いっす、地味に南エリア2-3っすから、色々手間なんで人気がないっす」
「で、何であんたはこんなとこにきたいわけ?」

 水銀を取りに行った山もかなりの不人気マップだったが、私の用事はダンジョン攻略がメインじゃなかったし、目的がそこにしかなかったから行っただけで他の用事は無かった。
 何かしらの理由が無いとこう言う所にくることが無いので、この忍者がどういう目的で此処に来たのかが問題になる。とは言え、ろくな理由ではないだろう。

「未探査エリアってそれだけでも楽しいっすからね、情報クランや売れる物ってのも多いっす」
「あー、確かにねえ……狙った採取物がここにしかないってなら、こんなくそめんどくさい所来ないし」
「あと一人来る予定っすから、3人でダンジョンアタックになるんすけど、いいっすか?」
「今さら船貰って帰るわけにはいかないでしょ」

 敵も出てこないので波打ち際で煙草を吹かしながら時間を潰す。トラッカーを結構使ったからMPもだいぶ減ってるし、そっちは自然回復で済ませる。煙草使うから結局ちょっとだけMP使っているのはご愛敬。

「で、もう一人はどんな奴なわけ?」
「そうっすね……リーダーと同じドラゴニアンで、弓使いっす」
「前衛いないのどーすんのよ」
「そりゃあ、自分が頑張るっすよ」
「忍ばない忍者って新鮮だわ」

 ぷぁーっと紫煙を吐き出しながらそのドラゴニアンの到着を待つわけだが、どうやって此処まで来る気なんだろうか。泳ぐか、乗るか、飛ぶか?何にしてもこんな立地の所に来るのはよっぽどの変わり者ってのは違いない。
 
「ドラゴニアンってあんまし見ないのよねえ……街中でもちらほらだし」
「カッコいいのは確かっすけどね、やるならやるで結構がっつり獣みたいな方が人気あるっすよ」
「トカゲと犬は見た事あるし……やっぱがっつり爬虫類とかにするんかねえ」
「呼んだ人は6割爬虫類っすね、角とか鱗とか結構がっつりあるっすよ」
「何にせよあってみないとわからんわ、どうやってくるのよ、そいつ」

 忍者がさあーと言っている間に水平線の奥から歩いてくる人物がいる。まさかとは思ってたけど水の上歩いてくるとは、忍者より忍者してるじゃん。チャクラ的なものでも足に流してるのかよって思ったけど、魔法で水上歩行くらいあるんだろう。っていうか水上歩行とかそういう便利系スキルって地味に欲しくなるんだよね。

「こっちっすよー」

 忍者はまあ良くも悪くも忍者って格好だけど、水上を歩いてくるドラゴニアンは局所だけ隠して、各部にプロテクターの様なものを付けている。まあ弓職と言えば弓職と言った感じだが。紫色の髪の毛で目隠れの小さいキャラだが、これ刺さる人には刺さる容姿してるな。

「あいつはどんな奴なの?」
「いい人っすよ、誘ったら来てくれた人っす!」
「多分断れない子だと思うわよ」

 ほら、ちょっと横で跳ねた魚にびくついてるし、その割にはかなり恰好がきわどい気がするけど。

「お待たせ、しました……」
「揃ったっすよー!これでダンジョンアタックっすよー!」
「……まずは自己紹介する所でしょ、おしゃべり忍者」
「そうっすね?自分は一二三四五六七八九十っすよ!」
「ごめん、なんて?」
「だから ひふみしごろくしちはちくじゅう っす」
「名前までうるせえってか……」
「私は……メタリカ……です」
「見た目と反して結構ロックな名前してんじゃないの、私はアカメ」

 って言うか忍者の名前ふざけてんなって思ったら実際にいるらしい。うん、まあどういうふうに付けたのか逆に不思議に思える。で、弓の方に関しては奥手な感じだが、名前が超有名なヘヴィメタルバンドの名前と被ってるのは中々じゃないか。

「中衛1と後衛2か……タンク無しで戦闘するのも久々ね、とりあえずやれる事の確認で、あんたから」

 おしゃべり忍者の方へと指を向ける。別にこんな事を言わなくても二人は知ってそうだが、私が知らないというのが問題になる。別に対人でもなければそこまで秘密にしなくてもいいだろう。 

「お、流石っすね、自分は文字通り忍者っす!打剣と忍術、剣術持ちっすよ!」
「あ、えっと……魔法弓での遠距離がメインで、近接はちょっと……」
「見た通りガンナーね、近接射撃と遠距離射撃は出来るけどダンジョンじゃ中衛ってとこね」

 それにしてもキワモノって言うかダンジョンアタックに向いてない面子がまあ揃っている。前衛不在ってのが一番大きいな。それによくよく考えていけば私が今までPTプレイをしていた時は犬野郎にチェルとガチタンクがいたわけだし、随分と楽をしていたわけだし、ちょっと気合入れていかないとダメそうだ。

「って言うか誘われたからここまで来た私もあれだけど、一回りレベル低いわよ、私」
「またまたぁ、火力あるからそんな事言ってぇー」
「え、あ……だって、ここ、適正高い方じゃ……」
「死なないようにはするけど、ワンパン瀕死になるとは思うわよ、Lv23だし」

 ほんと、固定ダメージとどうにかこうにか避けてを繰り返してここまでやってこれたのは偶然だと思う。固定ダメージが無かったら格上相手には全くと言っていいほどダメージは入らない仕様と言うか、攻撃と防御の兼ね合いがあるらしい。当たればダメージ入るってほんと、強いな。

「いいわ、索敵メインにするから、足手まといにならない程度に援護する」
「やっぱ自分が前衛やるっすよ」
「あ、あの!」

 急な大声にびくっとしつつ声の方、メタリカに二人揃って顔を向けて何かを聞くわけだが、いちいち小動物みたいだな、こいつ。

「MP回復するまで、待ってもらって……いいですか……?」
「……あれ、MP消費で移動するんだ」
「自分だって水蜘蛛くらい出来るっすよ!」

 変なところで張り合うんだな。でもまあ忍術ってそういうのもあるのか。土遁とか水遁とかあるし、そういうのは出来るんだろう、案外忍術って面白いな。忍者って言われると今じゃ漫画の方がメジャーになってるからなあ。

「とにかく、メタリカのMPが回復したらダンジョンアタックでいいわね?」
「そうっすねえ……何かすげえゆったりしてる気するっすけど」

 そんな会話をしている横ではごめんなさいと頭をぺこぺこ下げているメタリカがいる。ここでMPポーションをがぶ飲みしてすぐ行きましょうって言わない辺り、ゲーム慣れはしてるだろう。安全に回復できるのであればそれを選択するに越したことはないし。余計な消耗もしなくていいんだからな。

「ちなみにどこまで潜る気なの?」
「そりゃー、ボス倒すまでは行きたいっすよ、結構長い事時間かけてここまできたっすから」
「わ、わたしは、任せます」
「こんな事なら余った金も全部使っておけばよかったわ」

 回復待ちの間に火を付けていた煙草を深く吸い吐き出しつつ、波の音を聞きながら準備を進める。ウサ銃、作り直しておいて良かったわ、本当に。




 海鳴りの洞窟 適正Lv35
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