最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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9章

246話 予想外と専門外

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「あー……疲れた……」

 クランハウスの2Fにまた戻って来ていつもの椅子に座って一息。
 看守と殴り合いを覚悟していたのだが、結局のところあのギザ歯が勝手にやり始めて勝手に倒しまわって、結果としては扉を撃ち抜いただけで終わったイージーゲームだったな。
 まだ制御の利くバトルジャンキーの方が可愛く思える。あれはもうバトルジャンキーじゃなくてタダのバーサーカーだわ。

「あ、おかえりぃ」
「んー」

 声の聞こえる方にちらっと目線を向ければ、やけにボロボロになっているバトルジャンキーが1人。最近ボス狩りソロのRTAをやってるとか聞いたけど、何をしているのやら。
 そのままどすっと私の背もたれに乗りかかってふいーっと一息つくと共に体重を掛けてくる。

「イベント帰り?」
「そーよぉ、あんたは、ボス帰り?」
「そー、死に戻ったからぁ、菖蒲ちゃんに防具作ってもらおっかなーってぇ」
「ショップの良い感じの奴引き出したらいいじゃない」
「いやぁ、それは流石に不義理じゃないかなぁ」

 見かけによらずしっかりしているんだよな、こいつ。聞き分けもいいし、余計な事して戦線を広げないし、周りの状況を見て動けるんだから優秀だよ。やばい、さっきの事を思い出したら目頭が熱くなってきた。
 何だかんだで私の言う事ちゃんと聞いて動いてくれてたんだな。

「んわ、なにぃ」
「あんたのありがたみを今噛みしめてる所」

 寄りかかっている頭をわしゃわしゃと撫でまわしながらイベントページをまた開く。さっき脱獄したばっかりだっていうのに、もう監獄に戻りたくなったか、私……いや、そもそも監獄からの脱獄じゃないゲームもイベントもあるのよ。
 監獄脱出の奴に関してはどちらかと言うと、武闘派の人間向けに設定されているある意味でパワープレイ可能なイベントになっているんだろうな。
 ちなみに今まで選択してなかったが、もう1つイベントマップがある。こっちはこっちでどちらかと言うともっと万人受けするような内容になっている。

「あたしもイベントうけよっかなぁ、頭使うのってどーも、苦手なんだけどぉ」
「ジャンキーなら余裕よ、そんなに難しい事考えなきゃね」
「ふぅーん……ならやろっかなぁ」

 むしろやらないって選択肢の方が無いような気もするのだが、ソロでボス討伐RTAなんてやってるから時間がない……いやRTAをやってるのにやる時間がないってどういう事なんだ?むしろ時間を節約している気がするんだが。

「ところであんた、私の歯みたいな紫色の髪した、口元しか開けてないキャラ知らん?」
「んー……いたかなあ、そんな子ぉ……もうちょっと特徴ないのぉ?」
「刃物をやたらと使う」
「んぁー、知ってる、かなぁ。ボス待ちしてる時に順番じゃんけんする人かもぉ」

 やっぱり同じ穴の狢だったか。大体ああいう戦闘狂ってのは似たような事をやるって事だが……この様子じゃよく見るけど、名前だったり戦い方までは知らないって感じだな。そりゃあ、わたしの周りだけが全てじゃないから、当たり前と言えば当たり前だが。

「あたしよりも強いっぽいんだよねぇ、その人。βからのやってるみたいだし、あたしよりも早くソロボスする時もあるしさぁ?」
「やっぱ強いのはどこにでもいるなぁ」
「ソロじゃなきゃ、ボス一発で倒せるアカメちゃんが言う事じゃないと思うけどなぁ」
「そのうちソロでやれるかやんないとね、っと」

 イベントページを開き。
 今まで参加していたページと違う所を開き、参加をぽちぽちと押していく。

「アカメちゃん、ゲーマーだねぇ」
「次はちゃんとした脱出ゲームならいいんだけどね」

 もう、監獄から抜け出すバリエーションが少ないから別のマップを選択しているわけだけど、純粋に脱出ゲームをしてみたい。
 ああいうのって憧れなんだよね、大体開催してる所が片道300㎞くらい先にあるから、日帰りも厳しいし。

「いってらっしゃいー」
「はいはい」

 それにしたって大分イベント参加してるわ。


 
 白い視界が開けると共にイベントマップに辿り着くと、1部屋にマッチング人数の100人程度が一塊になっている。
 なんだ、脱出デスゲームでもやらされるのかね。
 大きい部屋に4方に分かれたドアがあり、そのドアの上には大きい画面が置いてあって、案内状の様な人物がルール説明をし始める。 

『イベント参加ありがとうございます、これから皆様はこの建物から脱出していただきます』

 お、しっかりアナウンスがあるって事は、ほっぽりだされて後はどうにかこうにか自力で脱出しろって事じゃないのか。

『このスタート地点から好きなルートを使い、各部屋にあるお題をクリアしていくことで順繰りと前に進むことが可能です。またクリアが出来ないと判断した場合、パス機能、リタイアの処置もありますのでお気軽にご参加ください』

 ……あれ、これってガチの脱出ゲームっぽい感じになってきたぞ。

『このゲームに参加中パーティは3人まで、途中で組むことは可能ですが、一度組んだ場合解散することはできませんのでご注意ください』
 
 その他つらつらと、細かいルール説明があった後、手元にスマホの様な端末が渡され、ウィンドウが開く。

『そちらの端末で答えの回答を行い、正解だった場合にドアが開きます
 問題文はドア上、もしくは端末上で確認できます
 それでは第一問を開示致します』

 そういうと貰った端末にメールが届き、同時にドア上の大きい画面にも問題分が表示される。


【問題1】
ジュースの空きカン5本を集めると、新品のジュース1本と交換をしてもらえる。
いま、あなたは新品のジュースを200本もっている。
さて、あなたは合計何本ジュースを飲めるだろうか?


 マジの謎解きやんけ!
 うっわ、こういうのすげえ苦手なんだけど、素直に監獄で殴り合いしていた方が良かったかもしれんわ。
 えっと、単純計算で200÷5をしてから、飲めた本数が出てくるから……さらに計算して……。

「これは、長丁場になるなあ……」

 問題文を読み、計算しつつ、葉巻を咥えて火を付ける。
 アイテムや装備が関係ないから、所持品全部持っていた状態なのは良かったのだが、これは頭使うぞ。
 とりあえずその場に座り、あれこれと考えているうちに、ぽつぽつとそれぞれの扉を抜けていく。こういう頭の回転が物を言うゲームって難しいんだよなあ。

 暫く考え込み、端末に表示されていた解答欄に答えを入れてからドアの前に進む。
 答えを入れた端末をドアにかざすと「ピンポーン」と、少々間の抜けた正解音が鳴り響き、先に進むことが出来る。
 なるほど、こういう脱出ゲームか……ファンタジー世界のゲームとかMMOとか何にも関係ないやんけ!
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