おじ専女子の望まぬモテ期

蛭魔だるま

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 遅い。私のバイト終わり時間は20分前のはずなのだが、交代の人が来なくて延長させられている。

 カラカラーン

「いらっしゃいま…せ。…何名様ですか?」
「あー待ち合わせ時間過ぎても相手が来なくて。1人です」

 私の幼馴染である御影藍お兄ちゃんだ。笑顔ではあるが、確実に怒っている。

「…お席ご案内します」

 藍ちゃんをボックス席に案内した。

「で?」
「いや、すみません。あの、交代のバイトが来なくて…もう少し待ってください。ここ、奢るんで」
「ブラックコーヒーホット」
「すぐお持ちします!」

 私は急いで厨房でコーヒーを用意する。

「立川さん、大丈夫ですか?」

 この人は確かたまに一緒になる後輩の…何君だったかな。

「え、何がですか?」
「ほら、この注文の黒い服の男、目つき悪いし…何か立川さんぺこぺこしてたんで。文句言われたのかなって思って」
「あー見てたんですか」
「あ、すみません。助けに行けず。その、怖かったとかじゃないんですよ、その…ほら、他の注文、受けてるところで…あの」
「大丈夫です、知り合いなんで」
「え、どういう知り合い?」

 なんか凄い絡んでくるな。プライベートなこと関係ないでしょ。

「あ、コーヒー淹れ終わったんで届けに行きますね」
「あ…」

「お待たせしましたー。ホットコーヒーになります」
「…まだか」
「も、もう少しだけ…」

 入口の扉が騒がしく開いた。息を切らした男がそのまま従業員の更衣室へ入っていった。

「あ、あれなんでもういけます」
「あぁ?俺コーヒー頼んじゃったし、お前もなんか飲めば?」
「うん、パフェ頼んどいて」

 交代の人が来たので私も更衣室へ向かった。

「立川さん、すみません!代わりにやってくれてたんですか」
「うん、予定あったけど店長にどうしてもって頼まれたから」

 この人遅刻常習犯なんだよな。こういう人には嫌味をストレートに伝える。

「す、すみませんでした。あの、今度何か奢ります」
「…あ、じゃあ今でもいい?待たせてる知り合いも来てて」

 遠慮もしない。パフェとコーヒーじゃ足りない気もするけど。

「大丈夫です」
「5番テーブルだから。お会計のときお願い」
「はい!」

 遅刻常習犯だけど、まだ奢ってくれるだけマシかな。一応罪悪感はあるっぽいし。

 私は急いで藍ちゃんの元へ行く。席に座っている藍ちゃんを遠目に見ると、全身黒ずくめのツーブロック、目つき悪い…確かに怪しい…怖い系の人に見える気もする。

「おまたせしました」
「遅え」

 知らない人が見ると、幼馴染同士の再会というより、若い借金取りと債務者的な感じかな。藍ちゃん顔はいいけど目つき悪すぎて…。

「いちごパフェとカフェラテお持ちしましたー」

 私たちの間にいちごパフェがあれば少しはマシに見えるかな。

「カフェラテも頼んでくれたんだ」
「いっつも飲んでるだろ。あとお前の金だし」

 口も悪いけど、このオラオラ系と思いきや女子への気づかいができるところ。これがモテるんだろうな。私はツンデレって勝手に言ってるけど。

「遅刻の人が奢ってくれるって」
「今日の飯ここにするか」

 悪い顔して笑ってる。待たされた怒りだろうな。

「嫌だよ。ここご飯美味しくないよ」
「売り上げに貢献しとけよ」
「給料変わらないんで」
「ははっさすがバイト」
「ここさ、調理すると不味いんだよね。だから、機械のコーヒーと、市販のクリーム、いちご、コーンフレークのパフェはセーフ」

 私はいちごを食べた。

「そういや、前に居酒屋でバイトしてたとき、そこソフトドリンク酷かったな」
「不味いってこと?」
「いや、気の抜けた炭酸と炭酸を半々に入れるとか、ジュースは65円のパックのやつをグラスに入れて250円取る。氷はグラスから出るまで入れるから飲み物なんてグラス半分入るか入んないかだし」
「もう居酒屋でソフトドリンク飲むのやめよ」 

 私の嫌そうな顔を見て藍ちゃんは笑っている。

「酒飲んでんだからどうせ頼まねぇだろ」
「飲み放題じゃないときお酒高いし」
「ふーん」

 藍ちゃんも私のパフェを食べ始めた。
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