どうしてあなたが後悔するのですか?~私はあなたを覚えていませんから~

クロユキ

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忘れたい事

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朝食を終えたジェシカは自分の部屋で医師が来るまで本を読んでいた。
コンコン
「失礼します。ジェシカお嬢様、医師様がお見えになりました」
ジェシカの部屋に通されたのはリシャール家の専属医師だった。
「ジェシカ様、王宮で大怪我をしましたと聞きました」
医師はジェシカの部屋に入り普通に本を読むジェシカを見て驚いた。
「お久しぶりです。医師様、大怪我は本当です…歩く時少し足が痛いのですが」
笑顔で話しをするジェシカに医師は安堵の顔を見せていた。
「心配しました…王宮のベランダから落ちましたと聞きました時は助からないだろうと言われていました」
「…医師様も知っていたのですか?」
「貴族内で知らない者はいないでしょう…デュラン家も暫くは批判の声がありましたから……」
ジェシカは貴族内で騒ぎになっているとは思いもしなかった。
「……しかし…あの王宮のベランダの高さから助かるとは思いもしませんでした…」
「クスッ、医師様部屋に入りました時から私の顔を見てまるで幽霊でも見ているように目が開いたままです」
「そう思わずには要られません、普通でしたら骨折ではすまないでしょう…」
「医師様、私あの披露宴から覚えていない事があるんです」
「覚えていないとは何か忘れた事でも…」
「グレス・デュラン…彼の側にいました記憶が無いんです…ベランダに一緒にいた記憶が無いんです…」
「記憶が…無いのですか?」
「頭を打ってしまった時にその記憶だけ覚えていないんです…思い出そうとすると頭痛がして…」
「…そうですか…ベランダから落ちます直前に忘れたい事があるのも関係するかもしれません」
「忘れたい事……」
ジェシカは、ベランダにはグレスとシャーロットが一緒にいたと聞いた…二人を見て忘れたい事でもあったのだろうかと今ではグレスを想っていた事も忘れてしまったジェシカには、思い出したくても思い出せない忘れた事になっていた。





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