貴方との婚約は破棄されたのだから、ちょっかいかけてくるのやめてもらっても良いでしょうか?

ツキノトモリ

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第九話

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翌日。エリヴィラはいつものように登校した。クラスメイトたちに挨拶していると、フィクトルとばっちり目が合う。気まずいと思ったが、ここで無視するのも不自然なので「おはよう」と挨拶した。フィクトルは目を逸らしつつ挨拶を返す。
あっちも気まずいんだなと思い、エリヴィラは席に着いて隣の席のセナと授業が始まるまで話した。


午前の授業が終わり、食堂に行こうという時に誰かから名前を呼ばれて振り返るとフィクトルがこちらを見下ろしていた。

「エリヴィラ」
「な、なんですか?!」

驚きのあまり、敬語になってしまう。彼の方から話しかけられるとは思っていなかったのだ。

「ちょっと話があるんだ。ついて来てほしい」

一体何の話があるんだ?エリヴィラは怪訝に思いながらもフィクトルについて行った。
人気のない階段まで行き、フィクトルはエリヴィラを振り返って口を開く。

「デートに行かないか?放課後に」
「は?!」
「裏門で待ち合わせしよう。では、そういうことで」

いや、どういうこと?!ツッコむ前に、フィクトルは足早にその場を去った。
彼の考えていることが分からない。
エリヴィラはフィクトルとデートする理由がないし、デートは断ろうと思って彼の後を追いかけた。
やっと追いつき、息を切らしながらエリヴィラはフィクトルの名前を呼んだ。

「フィ、フィクトル!」
「何だ?」
「さっきの続きなんだけど!」
「ああ、デートの行き先が知りたいのか。言い忘れていたな」
「じゃなくて!!なんであなたとデートしなくちゃならないの?!私とあなたはもう婚約者じゃないでしょ?!」

そういうと、フィクトルはエリヴィラから目を逸らした。

「お前の言う通りだ。だが、エリヴィラは俺がお前を好きなことを知ってるだろう?今まで気持ちを知られたくなくて素っ気ない態度を取ってきたが、もう知られてしまった以上開き直って口説き落とすことにしたんだ」
「え、はぁ?!ちょっと何言ってんのか分かんないんだけど!」
「そのままの意味だ。では、放課後デートを楽しもう」

フィクトルはそう言い残して、食堂へ続く廊下を歩き始めた。エリヴィラは「デートには行かない」と言いたかったが、何故か口に出せず、その場に立ち止まったままフィクトルの背中を見続けていたが、ハッと我に返って食堂へと向かった。

そして、食堂でセナと一緒に食事をし、フィクトルにデートに誘われたことを話した。

「良いじゃない。行ってきたら?」

セナはデートに行くように勧めたが、エリヴィラ自身は乗り気ではなかった。
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