13 / 29
二章 鼓動の音に問いかけて
鼓動の音に問いかけて.8
しおりを挟む
「つまり、なんなの、青葉。あ、貴方、私と祈里をその、『そういう関係』として捉えていたというの…?」
運ばれてきたチキン南蛮の匂いが漂う中、夜重は、とても信じられないことを聞かされている、といったふうに青葉の説明を繰り返した。
「ち、違うって!あくまで、あくまでね?私の頭の中でだけ、そういう扱いだったってこと!分かるかな?分かるよね、夜重、頭良いもんね!?」
必死に弁明する青葉は、先ほどの私たち並みに顔が紅潮していた。まあ、自分が頭の中だけとはいえ、クラスメイトたちをカップリングしていたことがバレたら、そりゃあ死ぬほど恥ずかしいだろう…なむぅ…。
「…いえ、全くもって理解できないわ…ごめんなさい、力になれなくて…」
「謝んなしっ!余計恥ずかしくなるわっ!」と机を軽く叩いた青葉は、次に私へと顔を向ける。
「い、祈里は…」
どうやら、私に対しても弁明が始まるらしい。なんかもう、恥ずかしいやらなにやらで私も頭がいっぱいだが、青葉が誰がどう見ても混乱してくれているおかげで比較的冷静になれていた。
そのおかげで、話を聞く前から、『まあ、ちゃんと説明すれば許してやらんこともないぞ』という心持ちになりつつある。
「…ほら、馬鹿だから、適当に流してくれたらいいよ」
「おおぃっ!」
たしかに、私の成績は下から数えたほうが早いけども!
「この扱いの差!許すまじ!訴えてやる、戦争じゃ!」
「…裁判所に訴えるのか、武力に訴えるのかどちらかにしなさい」
横から重箱の隅を夜重が突いてくるが、その声に力はない。見ると悄然としているふうだった。無理もない。
「うっさい!けなされてばかりの私の気持ち、頭の良い夜重には分からんでしょうよ」
「まあ…」
まあ、じゃないよ。そこは謙虚に受け止めなよ。
「ぐ、ぐぬぬ…!」
私が怒りの矛先を夜重に移すと、目の前で呉羽が、「ふふっ」と笑った。それでまた視線を正面に戻したのだが、彼女は口元を綻ばせ、初めて表情という表情を私の前に浮かべていた。
「お姉ちゃんの言う通り。尊いですね…」
ぶちっ。
堪忍袋の緒が切れた音がして、私は腰を浮かせる。
どうしてこうも、誰もかれも人の話を聞かないやつばっかりなんだ!
「誤解しないでよ!私はただ、女の子同士でもドキドキするかを夜重と試してるだけなの!だから、別に付き合ってないの!」
しぃん、と静まり返る店内。
耳に痛い静寂が、私の怒りの炎に冷や水を浴びせる。
あっという間に血の気が引いていく感覚がして、思わず、夜重のほうを一瞥すると、彼女は真っ赤な顔で俯き、「だから祈里は、馬鹿って言われるのよ」とぼやいていた。
運ばれてきたチキン南蛮の匂いが漂う中、夜重は、とても信じられないことを聞かされている、といったふうに青葉の説明を繰り返した。
「ち、違うって!あくまで、あくまでね?私の頭の中でだけ、そういう扱いだったってこと!分かるかな?分かるよね、夜重、頭良いもんね!?」
必死に弁明する青葉は、先ほどの私たち並みに顔が紅潮していた。まあ、自分が頭の中だけとはいえ、クラスメイトたちをカップリングしていたことがバレたら、そりゃあ死ぬほど恥ずかしいだろう…なむぅ…。
「…いえ、全くもって理解できないわ…ごめんなさい、力になれなくて…」
「謝んなしっ!余計恥ずかしくなるわっ!」と机を軽く叩いた青葉は、次に私へと顔を向ける。
「い、祈里は…」
どうやら、私に対しても弁明が始まるらしい。なんかもう、恥ずかしいやらなにやらで私も頭がいっぱいだが、青葉が誰がどう見ても混乱してくれているおかげで比較的冷静になれていた。
そのおかげで、話を聞く前から、『まあ、ちゃんと説明すれば許してやらんこともないぞ』という心持ちになりつつある。
「…ほら、馬鹿だから、適当に流してくれたらいいよ」
「おおぃっ!」
たしかに、私の成績は下から数えたほうが早いけども!
「この扱いの差!許すまじ!訴えてやる、戦争じゃ!」
「…裁判所に訴えるのか、武力に訴えるのかどちらかにしなさい」
横から重箱の隅を夜重が突いてくるが、その声に力はない。見ると悄然としているふうだった。無理もない。
「うっさい!けなされてばかりの私の気持ち、頭の良い夜重には分からんでしょうよ」
「まあ…」
まあ、じゃないよ。そこは謙虚に受け止めなよ。
「ぐ、ぐぬぬ…!」
私が怒りの矛先を夜重に移すと、目の前で呉羽が、「ふふっ」と笑った。それでまた視線を正面に戻したのだが、彼女は口元を綻ばせ、初めて表情という表情を私の前に浮かべていた。
「お姉ちゃんの言う通り。尊いですね…」
ぶちっ。
堪忍袋の緒が切れた音がして、私は腰を浮かせる。
どうしてこうも、誰もかれも人の話を聞かないやつばっかりなんだ!
「誤解しないでよ!私はただ、女の子同士でもドキドキするかを夜重と試してるだけなの!だから、別に付き合ってないの!」
しぃん、と静まり返る店内。
耳に痛い静寂が、私の怒りの炎に冷や水を浴びせる。
あっという間に血の気が引いていく感覚がして、思わず、夜重のほうを一瞥すると、彼女は真っ赤な顔で俯き、「だから祈里は、馬鹿って言われるのよ」とぼやいていた。
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
秋の陽気(ようき)
転生新語
恋愛
元夫(もとおっと)が先月、亡くなった。四十九日法要が終わって、私は妹の娘と再会する……
カクヨム、小説家になろうに投稿しています。
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/822139836259441399
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n1892ld/
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件
楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。
※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる