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6.自室
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息ができない。
そりゃそうだ、目の前の男が唇を塞いでいるから。混乱している俺がわかるのは、目の前の男のまつ毛が長いことと、クラスの喧騒と。
「ふ、………ぅう」
腕をいっぱいにつっぱるがそれすら動きは封じられ、どうにもできない。もうこれは蹴り上げようと思った時だ。
「……っ!」
鼻が摘まれる。さらに呼吸が苦しくなりなんとか、口から呼吸しようと、そのままジャックにさらに深く口付けられる。生ぬるい舌が口の中に入り込み、その舌が舌を……何かを俺の舌に乗せた。
飲んだらダメな気がすると、頭ではわかっているのに。呼吸がしたい、どうにかしたいそればかりが頭に回る。ぐちゅ、にゅ……と、そんな音が響くのも怖い。
周りの音が気持ち悪い。
それが、喉を通ったのはすぐのことで、それを見届け、ジャックは俺から離れる。
ニンマリ笑う顔は、今まで見たことがない顔をしていた。
「なん、で……」
昨日初めて会ったお前に、なんでこんなことをされなきゃならない。わからない。
「必要だから」
耳元で囁かれた言葉に、俺は反応することすらできなかった。指先が痺れる。
喉がひりひりとして、声が出せない。
「……っ、な……」
手をあげようにも、怠くて動かず、視界もぼんやりとしてくる。罵倒を吐きたいが言葉はただのうめきに変わる。
「どうした?具合悪いのか?」
白々しいジャックの声に、腹が立つ。
「……っ、ぁ、」
体すら支えていられなくなり、体のバランスを崩す。そのまま倒れるかと思えば、ジャックが抱き止めてくれる。音が遠くに聞こえる。
ぐわんっと、視界が歪み、俺の意識は完全に途切れてしまった。
俺の両親は、記憶の限りは仲が良かった。
仕事ばかりの父と、仕事はせずに家で家事をする優しい母。それが崩壊したのは、それこそ数ヶ月前だ。
自分は何もわからないまま、結果だけを聞かされた。聞かされたと言っても、紙一枚で、俺はこの学校に転校して来たのだ。
本当に嫌になる。
母の顔も、父の顔も、もう思い出せないくらいゆらゆらとする。
『Aの代わりにする?でも、こいつはキングを拒否したから、無理だよ』
誰かが話している。
『……まぁ、こいつが頑張れば……』
うるさい。
じわりと光が視界に広がって、俺はゆっくり目を開けた。
「あ、おはよう」
目の前にいたのは、予想通りのやつだった。
「……あ、」
びくりと身体を震わせる。急いで視線を巡らせると、ここが自分の部屋だということがわかった。俺は、ベッドに寝かせていたようだ。
「そんなに警戒されると、少し悲しいな」
部屋で会うジャックは、教室の高圧的な様子はなく初めて会った時と同じように気安く俺に話しかけてくる。
「身体、辛くない?急に倒れたけど、覚えている?」
そう言われて手を握って開いてみる。
変な痺れはない。足も同じだ。
「お前……、薬……」
あの口に入れた変なものが、悪さしてぶっ倒れたのだ。薬の類に違いない。
「ん?」
優しげに首を傾げる、目の前の男がわからない。
「あ、……ん……」
何か言おうと思ったが、微笑む口元とは違い目が笑ってない気がして、質問をする気力が失われる。
「元気ないな、ご飯もう少しだし、気持ち悪かったらここにご飯持ってきてもらおうか?」
本当に心配している様子に見えてわからない。ただ、お腹がしいた気はする。俺は、戸惑いながら首を動かした。
「おっけ。今からならオニギリにもしてもらえると思うし、ちょっと食堂に掛け合ってくるな」
そう言って、向かいの部屋の男、ジャック?325A?は、部屋を出て行った。
そりゃそうだ、目の前の男が唇を塞いでいるから。混乱している俺がわかるのは、目の前の男のまつ毛が長いことと、クラスの喧騒と。
「ふ、………ぅう」
腕をいっぱいにつっぱるがそれすら動きは封じられ、どうにもできない。もうこれは蹴り上げようと思った時だ。
「……っ!」
鼻が摘まれる。さらに呼吸が苦しくなりなんとか、口から呼吸しようと、そのままジャックにさらに深く口付けられる。生ぬるい舌が口の中に入り込み、その舌が舌を……何かを俺の舌に乗せた。
飲んだらダメな気がすると、頭ではわかっているのに。呼吸がしたい、どうにかしたいそればかりが頭に回る。ぐちゅ、にゅ……と、そんな音が響くのも怖い。
周りの音が気持ち悪い。
それが、喉を通ったのはすぐのことで、それを見届け、ジャックは俺から離れる。
ニンマリ笑う顔は、今まで見たことがない顔をしていた。
「なん、で……」
昨日初めて会ったお前に、なんでこんなことをされなきゃならない。わからない。
「必要だから」
耳元で囁かれた言葉に、俺は反応することすらできなかった。指先が痺れる。
喉がひりひりとして、声が出せない。
「……っ、な……」
手をあげようにも、怠くて動かず、視界もぼんやりとしてくる。罵倒を吐きたいが言葉はただのうめきに変わる。
「どうした?具合悪いのか?」
白々しいジャックの声に、腹が立つ。
「……っ、ぁ、」
体すら支えていられなくなり、体のバランスを崩す。そのまま倒れるかと思えば、ジャックが抱き止めてくれる。音が遠くに聞こえる。
ぐわんっと、視界が歪み、俺の意識は完全に途切れてしまった。
俺の両親は、記憶の限りは仲が良かった。
仕事ばかりの父と、仕事はせずに家で家事をする優しい母。それが崩壊したのは、それこそ数ヶ月前だ。
自分は何もわからないまま、結果だけを聞かされた。聞かされたと言っても、紙一枚で、俺はこの学校に転校して来たのだ。
本当に嫌になる。
母の顔も、父の顔も、もう思い出せないくらいゆらゆらとする。
『Aの代わりにする?でも、こいつはキングを拒否したから、無理だよ』
誰かが話している。
『……まぁ、こいつが頑張れば……』
うるさい。
じわりと光が視界に広がって、俺はゆっくり目を開けた。
「あ、おはよう」
目の前にいたのは、予想通りのやつだった。
「……あ、」
びくりと身体を震わせる。急いで視線を巡らせると、ここが自分の部屋だということがわかった。俺は、ベッドに寝かせていたようだ。
「そんなに警戒されると、少し悲しいな」
部屋で会うジャックは、教室の高圧的な様子はなく初めて会った時と同じように気安く俺に話しかけてくる。
「身体、辛くない?急に倒れたけど、覚えている?」
そう言われて手を握って開いてみる。
変な痺れはない。足も同じだ。
「お前……、薬……」
あの口に入れた変なものが、悪さしてぶっ倒れたのだ。薬の類に違いない。
「ん?」
優しげに首を傾げる、目の前の男がわからない。
「あ、……ん……」
何か言おうと思ったが、微笑む口元とは違い目が笑ってない気がして、質問をする気力が失われる。
「元気ないな、ご飯もう少しだし、気持ち悪かったらここにご飯持ってきてもらおうか?」
本当に心配している様子に見えてわからない。ただ、お腹がしいた気はする。俺は、戸惑いながら首を動かした。
「おっけ。今からならオニギリにもしてもらえると思うし、ちょっと食堂に掛け合ってくるな」
そう言って、向かいの部屋の男、ジャック?325A?は、部屋を出て行った。
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