転生した悪女の選択

第八話 王子との再会

アリシアとリリアは森の中を急いで進んでいた。彼女たちは数日間、身を隠しながら旅を続け、少しずつ距離を置くことができていた。しかし、彼女の心の中には、かつての婚約者であり、第一王子であるアレクシスのことが引っかかっていた。

「アリシア、これからどうするつもり？」リリアが尋ねた。

「まずは、安全な場所を見つけなければならない。それから、私の過去を清算する必要がある。」アリシアは決意を込めて答えた。

数日後、彼女たちは小さな村に辿り着いた。村は静かで、人々は穏やかに日々を送っているように見えた。アリシアはこの場所を一時的な避難所として利用することに決めた。

村の中を歩いていると、アリシアはふと立ち止まった。見慣れた青い装飾が施された家が目に入った。かつて自分が住んでいた王城を思い出させるような景色だった。

「どうしたの？」リリアが心配そうに尋ねた。

「この村は、私が王城にいた頃、遊びに来たことがある場所だ。ここに王子が来ることもあるかもしれない…」アリシアは言葉を続けた。

「もしアレクシス王子に会えたら、どうするつもり？」リリアは問いかけた。

アリシアは一瞬考えた。「彼には何も言えない。ただ、自分の過去を受け入れ、今は新しい人生を歩むしかない。」

その日の夜、アリシアとリリアは村の宿屋で泊まることにした。夕食を取りながら、彼女は過去の出来事を思い出し、心の中で自分を奮い立たせていた。

翌朝、アリシアは散歩に出かけた。村を探索しながら、彼女は王子との再会のことを考えていた。その時、遠くの方から騎馬の音が聞こえてきた。彼女の心臓が急に高鳴り、振り返ると、数頭の馬に乗った騎士たちが近づいてきた。

「アリシア！」その声を聞いた瞬間、彼女は心が一瞬止まった。彼女の目の前にいたのは、かつての婚約者であり、第一王子アレクシスだった。

彼は馬から降り、アリシアの方に駆け寄ってきた。その表情には驚きと喜びが入り混じっていた。「本当にお前なのか？アリシア！」

アリシアは自分の感情を抑えきれず、涙が溢れそうになった。彼の目を見つめながら、自分の心の中に広がる複雑な感情に戸惑った。「アレクシス…私…」

「お前がいなくなった後、俺はずっとお前を探していた。お前のことを思い出さない日はなかった。」彼は真剣な表情で言った。

アリシアは、自分が置かれていた状況を説明するのが難しかった。彼女は過去のことを話すべきか、あるいは新しい自分を見せるべきか、迷った。「私は、ここから逃げ出したの。もうあの生活には戻れない。」

アレクシスは彼女の言葉をじっと聞き、彼女の手を握り締めた。「それでも、俺はお前を見つけた。これからは一緒にいることができる。」

アリシアはその言葉に心が揺れ動いた。かつての婚約者の言葉は、彼女にとって救いの光であり、同時に新たな試練の始まりでもあった。彼女は、自分の選択が彼にどう影響を及ぼすのか、不安を抱えていた。

「でも、私には新しい道がある。自由を手に入れたの。」アリシアは自分の心の声に従い、言葉を続けた。

「お前の自由を奪うつもりはない。ただ、俺はお前を守りたいだけだ。」アレクシスの真剣な眼差しがアリシアの心に響いた。

彼女はその言葉を聞いて、胸が熱くなった。かつての自分を取り戻すことができるかもしれないという希望が広がる。しかし、彼女は自分の過去を背負ったまま、アレクシスと共に歩むことができるのだろうか？

「私には、まだ克服しなければならないことがあるの。」アリシアは小さく言った。

「それでも、俺はお前を待つ。どんな道を歩むにしても、一緒にいたい。」アレクシスは優しく微笑んだ。

アリシアの心には新たな希望が灯った。彼女は過去を乗り越え、未来へ向かって進む覚悟を決めた。この再会が、彼女にとっての新しいスタートとなることを願いながら、彼女は再びアレクシスの手を握った。