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EX 勘違い女の末路 Ⅳ
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「大体、君だって他の者にはそうしていたんだろう?」
カルロスのその言葉に、ジュリーはこれまでの自分の行いを思い出す。
言われてみれば、自分はこれまで爵位が劣っている家の令嬢に絡んではドレスの自慢をし、それでうまくいかなければ婚約者(実際は婚約者ではなかったが)の自慢をしてマウントをとっていた。
この前のパーティーの時だって、クレアの家が爵位が下で、彼女本人も大したドレスを持っていなさそうだし、天然で言いくるめやすそうと思ったから絡んだのだ。
実際はそうではなかったが。
その前のパーティーでも、さらにその前のパーティーでもジュリーはたくさんの令嬢に似たようなことをして、優越感を得てきた。自分が自慢した時、相手が時に尊敬の眼差しで、時に悔しそうに自分を見つめ返してくることに言いようのない快感を覚えていた。
尊敬にしろ悔しさにしろ、そういう目を向けてくるということは相手は自分に対して下の立場であることを認めたということであり、その瞬間にいつもジュリーは幸福を感じていた。
だが、それを似た者同士であるカルロスにされてみると、とてもみじめな気分になった。
ジュリーの脳裏にあの時のアイザックやローラの蔑みの眼差しが蘇る。
「あーあ、そんな簡単なことも分からないなんて心底君にはがっかりだ」
そう言ってカルロスはあの時の彼らのような目で見る。
それを見てジュリーは唐突に恐怖を覚えた。今のカルロスと同じようなことを平然と他人に行い、しかもその愚かさをアイザックに指摘された自分のような人間はここでカルロスに見捨てられればもう誰とも結婚することは出来ないのではないかと。
もしかするとジュリーは無意識に自分に自信がなく、それをごまかすために他人に高飛車な態度をとっていたのかもしれない。
そんな気持ちを自覚したせいか、ジュリーは突然これまでの態度が嘘のように卑屈になってしまった。
「……す、すみませんカルロス」
「おや、急に態度が変わったね?」
「私が間違っていましたわ」
そう言ってジュリーは恐る恐るカルロスの反応をうかがう。
するとカルロスは一瞬驚いたが、すぐにほほ笑みを浮かべる。
「いやあ、婚約者が聡明な相手で助かったよ。これなら今後うまくやっていけそうだ」
「は、はい」
ジュリーはそう言って頷くのが精いっぱいだった。
こうして他人に自慢ばかりして生きてきたジュリーは皮肉なことに、今後は婚約者にそうされ続けて生きることになったのだった。
カルロスのその言葉に、ジュリーはこれまでの自分の行いを思い出す。
言われてみれば、自分はこれまで爵位が劣っている家の令嬢に絡んではドレスの自慢をし、それでうまくいかなければ婚約者(実際は婚約者ではなかったが)の自慢をしてマウントをとっていた。
この前のパーティーの時だって、クレアの家が爵位が下で、彼女本人も大したドレスを持っていなさそうだし、天然で言いくるめやすそうと思ったから絡んだのだ。
実際はそうではなかったが。
その前のパーティーでも、さらにその前のパーティーでもジュリーはたくさんの令嬢に似たようなことをして、優越感を得てきた。自分が自慢した時、相手が時に尊敬の眼差しで、時に悔しそうに自分を見つめ返してくることに言いようのない快感を覚えていた。
尊敬にしろ悔しさにしろ、そういう目を向けてくるということは相手は自分に対して下の立場であることを認めたということであり、その瞬間にいつもジュリーは幸福を感じていた。
だが、それを似た者同士であるカルロスにされてみると、とてもみじめな気分になった。
ジュリーの脳裏にあの時のアイザックやローラの蔑みの眼差しが蘇る。
「あーあ、そんな簡単なことも分からないなんて心底君にはがっかりだ」
そう言ってカルロスはあの時の彼らのような目で見る。
それを見てジュリーは唐突に恐怖を覚えた。今のカルロスと同じようなことを平然と他人に行い、しかもその愚かさをアイザックに指摘された自分のような人間はここでカルロスに見捨てられればもう誰とも結婚することは出来ないのではないかと。
もしかするとジュリーは無意識に自分に自信がなく、それをごまかすために他人に高飛車な態度をとっていたのかもしれない。
そんな気持ちを自覚したせいか、ジュリーは突然これまでの態度が嘘のように卑屈になってしまった。
「……す、すみませんカルロス」
「おや、急に態度が変わったね?」
「私が間違っていましたわ」
そう言ってジュリーは恐る恐るカルロスの反応をうかがう。
するとカルロスは一瞬驚いたが、すぐにほほ笑みを浮かべる。
「いやあ、婚約者が聡明な相手で助かったよ。これなら今後うまくやっていけそうだ」
「は、はい」
ジュリーはそう言って頷くのが精いっぱいだった。
こうして他人に自慢ばかりして生きてきたジュリーは皮肉なことに、今後は婚約者にそうされ続けて生きることになったのだった。
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