Trade Secret R ~ やがて、あの約束へ ~

あたか

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第3幕 男を愚かにさせるものとは

第1章 集団洗脳イベントの準備③

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蛍雪高校けいせつこうこうにおいて、文化祭は単なる行事ではない。

将来の日本を担う人材を育てる、“公開実践型教育”の場である。

演劇、模擬店もぎてん、屋台、お化け屋敷――一見すれば学生たちの青春を彩る華やかな思い出の一ページ。

だが、蛍雪けいせつにおいてそれは、顧客対応力、集客戦略、市場分析という名の訓練でもあった。

来場者は、政財界の重鎮じゅうちんから一般客まで多岐たきにわたる。

各クラスは来場者によるアンケートによる評価を競い、優秀な成績を収めた者には、表彰とともに新たなコネクションを得る機会が与えられる。

特権階級だからといって、親や先祖達の築いた座に胡座あぐらをかいてはならない。

蛍雪けいせつとは、実力と覚悟が問われる社会の縮図を学ぶ、その象徴たる学び舎なのだ。

そして、脚本と衣装を渡されたサルヴァトーレは、


「子供に考えることを教えず、“従うこと”を美徳として叩き込む。
“協調性”と聞こえはいいが、実態はただの思考停止。
群れに馴染まなきゃ落ちこぼれ、疑問を口にすれば問題児。
そうして思考を抜かれた量産型人間が、この国の“成果”か。笑わせてくれる……やはり俺は辞退する」


「待て、そう言うな。うちの系列の医療研究機関の連中も来ると聞いてる。将来、研究医になりたいなら、顔を売っておけ。それに優秀なクラスには賞金も出るぞ」


「……」

侑斗ゆきとの言葉に、サルヴァトーレは暫し言葉を失った。

結局のところ、顔と成績がいい奴には、それなりの“褒美ほうび”を用意してくれるのが蛍雪けいせつの流儀らしい。

なるほど。

顔と成績さえあれば、報酬と将来が手に入る。

この学校は、社会を笑うにはちょうどいい模型だ。
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