Trade Secret R ~ やがて、あの約束へ ~

あたか

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第4幕 無駄なアナログ感は正確に伝わるだろう

第6章 財閥家の教育方針①

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焼き芋の火はまだわずかに残っていた。

冬の夜風が、その焚き火の少し向こう側にある東の対の離れに吹き荒れる。

きざはしと呼ばれる寝殿造りの階段の近くに侑斗ゆきとは腰かけ、三人は傍らに集まる。


侑斗ゆきと、大丈夫か?」


額に包帯を巻いた侑斗ゆきとに、早馬はやまは本当に心配そうな顔をして見つめていた。


「ああ、巻き込んで悪かった」


侑斗は座ったまま、三人に頭を下げた。

するとサルヴァトーレが本題に入った。


「お前の家は一体どうなっている? 
これではまるで一千年前の平安時代と変わらんだろ。
呪詛か陰陽師、エクソシストかなんか知らんが、一族総出で王位継承権でも争っているのか? 
イギリスの貴族社会も真っ青だぞ。
まさか本当に、名家の子供をわざと危険に晒してふるいにかけるなんて言わないよな……何世紀前の話だ?」


「そのまさかだ」


侑斗ゆきとは冷静な表情のまま一言。

サルヴァトーレが無表情で絶句した。


「マジかよ……」


「財閥家って一体……」


早馬はやまはるかもそれ以上の言葉を失ったが、侑斗は続ける。


「これはたちばなの一族にとっては“子供のしつけ”の一環だ。
俺達子供を試してる。ただし、本気で殺しに来る。
将来の一族を担う者として相応しいかどうか。
頭の良さだけじゃない。
どんな世界でも生き残るための実力と運も、命に必死にすがる生命力すらも――、
何もかもが試される。それがこの一族の教育方針だ。
ふるいにかけて死ねばそれまでの器とみなされる」


「そんなこと現実にあるのか? まるで虐待だ」


「警察に本当に言わなくていいの? 流石に犯罪は駄目よ」


早馬はやまはるかはあくまで常識に基づいて言葉をつむいだが、侑斗はどこか諦めたように笑っていた。


「……言っても騒いでも無駄だ。公権力の上層部には、本家の連中も沢山いる。
この家では外の常識は通じない」


「救急車くらい呼ばせてくれよ……こんな種明かしじゃ、後味悪い」
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