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「……ぅううっ」
神野の呻く声は篠山の快感と嗜虐性をますます掻きたてていった。背中に覆いかぶさり彼の胸のまえに腕をまわすと、細い両手首を掴んでそれごと締めつけるように抱きしめる。左の耳のつけ根に噛みつくと、神野からはひっきりなしに高い声が上がった。篠山はそのまましばらくのあいだ、薄い耳たぶを食みながらながらその声を愉しんだ。
彼は耳を舐められるのも弱い。舐めしゃぶっているあいだ中、ひどく喘ぎながらずっと篠山のペニスを締めあげてくる。密着しすぎて腰が振れない体勢だったが、びくびくと動く彼の粘膜に包まれているだけで充分気持ちがよかった。
ただし神野にはこれも気に入らなかったようで、ベッドと篠山のあいだにはさまれた狭い空間の中でぐずって腰を悶えさせていた。
「ああ……ああ……、んあっ、痛っ、ん、」
次第に呼吸が浅くなりはじめた神野が、自分の体重を全部受け止めて息苦しくなっていることに気づき、篠山は彼を抱き起すと自分のあぐらのうえに座らせた。
「ひゃぁっ! ……なにっ? ……いやっ」
神野にははじめての体位だ。相当怖かったらしく彼は腹部にまわした腕を引っ掻いてきた。
「こらっ、暴れるな」
力ない弱々しい抵抗も、緩く腰を突き上げはじめた途端にすぐに治まる。ずん、ずん、と下から突き上げるたびに、どんどんおとなしくなっていった神野は「あん、あん」とちいさく喘ぎながらすぐに快感を追いはじめた。
「ふふっ。気持ちいいのな」
(かわいいな……)
どうせなら目のまえの白い肌に齧りつき、首をひねりあげて深く口づけ舌を絡めてしまいたい。しかしどれだけ乱暴にこの身体を扱ったとしても、それだけはしないでおく。
神野ははじめからセックスに弱かった。行きがかり上、ノンケの彼に手を出してしまったが、しかし彼をゲイの道に引っ張る気はさらさらない。
篠山は彼が男に抱かれる行為にのめり込まないように、いつかはまっとうに女性ともセックスができるようにと、いつも手加減していた。だからいままで神野とは情欲を押し留めながらのセックスしかしてきていない。
直接に繋がるところ以外は極力触れないように注意して、彼が新しい快感を知らずにすむように、常に気を配ってきたのだが――。
しかし神野のこの異様な感じかたを見ている限り、そううまくいかないのではないかと、最近では危惧している。
(そろそろ、こういうのもなしかな?)
「あっ……あっ、あっ……っ」
腰をくねらすも、慣れない背面座位でうまく悦楽を拾いきれないらしい。そろそろ本気で辛そうだ。さすがにもうおしまいにしてやろうと、思ったとき。
「⁉」
熱に浮かされたようになんども苦しげに首を振りながら呻いていた神野が、掴んでいた篠山の腕から手を離すと、その細い指を自分の性器に絡ませて緩く扱きはじめた。ヌチヌチと聞こえてくる粘っこい水音に、彼のなかに沈んだままのペニスがさらにぐっと張りつめた。
自慰しながら「あん、あん、」と気持ちよさそうに鳴きはじめたあられもない彼の姿に、堪らず射精してしまう。
「――くっ」
「やっ、ん、んんっ」
(しまった……)
大きな胴震いのあとの硬さを失った篠山のペニスに、神野は不満そうに身を揺すった。
さんざん焦らしたあげく、自分だけさきにイってしまっただなんて、さすがに勝手が過ぎるだろう。しゅんと冷えた頭で彼を一瞬ぎゅっと抱きしめ「悪い」とひとこと謝罪する。篠山は彼を横たわらせると、手ばやく避妊具をとり換えた。
そのあいだも虚ろな瞳で自身を扱きあげてつづけている卑猥な身体に、篠山の官能の灯は消えることはない。軽く扱くだけである程度復活したペニスをまた彼の中にさっさと挿入してやり、今度は焦らすことなく彼の好むところを擦こすってやった。
「ふあぁぁっ。あっ――、ああっ――……」
いつもと変わらない心地よいだけの交接を与えはじめると、彼は気持ちよさげによがり狂う。そうしてようやく叶った吐精のあとも、「もっともっと」と、口にして、腰を振って強請ってきた彼は、明けがたごろにやっと意識を飛ばして、ぐったりと動かなくなった。
眠る目じりは赤く染まり、長い睫毛には涙が絡まっている。意地悪がすぎたと頭を掻いたが、自分の横で疲弊して眠
神野の呻く声は篠山の快感と嗜虐性をますます掻きたてていった。背中に覆いかぶさり彼の胸のまえに腕をまわすと、細い両手首を掴んでそれごと締めつけるように抱きしめる。左の耳のつけ根に噛みつくと、神野からはひっきりなしに高い声が上がった。篠山はそのまましばらくのあいだ、薄い耳たぶを食みながらながらその声を愉しんだ。
彼は耳を舐められるのも弱い。舐めしゃぶっているあいだ中、ひどく喘ぎながらずっと篠山のペニスを締めあげてくる。密着しすぎて腰が振れない体勢だったが、びくびくと動く彼の粘膜に包まれているだけで充分気持ちがよかった。
ただし神野にはこれも気に入らなかったようで、ベッドと篠山のあいだにはさまれた狭い空間の中でぐずって腰を悶えさせていた。
「ああ……ああ……、んあっ、痛っ、ん、」
次第に呼吸が浅くなりはじめた神野が、自分の体重を全部受け止めて息苦しくなっていることに気づき、篠山は彼を抱き起すと自分のあぐらのうえに座らせた。
「ひゃぁっ! ……なにっ? ……いやっ」
神野にははじめての体位だ。相当怖かったらしく彼は腹部にまわした腕を引っ掻いてきた。
「こらっ、暴れるな」
力ない弱々しい抵抗も、緩く腰を突き上げはじめた途端にすぐに治まる。ずん、ずん、と下から突き上げるたびに、どんどんおとなしくなっていった神野は「あん、あん」とちいさく喘ぎながらすぐに快感を追いはじめた。
「ふふっ。気持ちいいのな」
(かわいいな……)
どうせなら目のまえの白い肌に齧りつき、首をひねりあげて深く口づけ舌を絡めてしまいたい。しかしどれだけ乱暴にこの身体を扱ったとしても、それだけはしないでおく。
神野ははじめからセックスに弱かった。行きがかり上、ノンケの彼に手を出してしまったが、しかし彼をゲイの道に引っ張る気はさらさらない。
篠山は彼が男に抱かれる行為にのめり込まないように、いつかはまっとうに女性ともセックスができるようにと、いつも手加減していた。だからいままで神野とは情欲を押し留めながらのセックスしかしてきていない。
直接に繋がるところ以外は極力触れないように注意して、彼が新しい快感を知らずにすむように、常に気を配ってきたのだが――。
しかし神野のこの異様な感じかたを見ている限り、そううまくいかないのではないかと、最近では危惧している。
(そろそろ、こういうのもなしかな?)
「あっ……あっ、あっ……っ」
腰をくねらすも、慣れない背面座位でうまく悦楽を拾いきれないらしい。そろそろ本気で辛そうだ。さすがにもうおしまいにしてやろうと、思ったとき。
「⁉」
熱に浮かされたようになんども苦しげに首を振りながら呻いていた神野が、掴んでいた篠山の腕から手を離すと、その細い指を自分の性器に絡ませて緩く扱きはじめた。ヌチヌチと聞こえてくる粘っこい水音に、彼のなかに沈んだままのペニスがさらにぐっと張りつめた。
自慰しながら「あん、あん、」と気持ちよさそうに鳴きはじめたあられもない彼の姿に、堪らず射精してしまう。
「――くっ」
「やっ、ん、んんっ」
(しまった……)
大きな胴震いのあとの硬さを失った篠山のペニスに、神野は不満そうに身を揺すった。
さんざん焦らしたあげく、自分だけさきにイってしまっただなんて、さすがに勝手が過ぎるだろう。しゅんと冷えた頭で彼を一瞬ぎゅっと抱きしめ「悪い」とひとこと謝罪する。篠山は彼を横たわらせると、手ばやく避妊具をとり換えた。
そのあいだも虚ろな瞳で自身を扱きあげてつづけている卑猥な身体に、篠山の官能の灯は消えることはない。軽く扱くだけである程度復活したペニスをまた彼の中にさっさと挿入してやり、今度は焦らすことなく彼の好むところを擦こすってやった。
「ふあぁぁっ。あっ――、ああっ――……」
いつもと変わらない心地よいだけの交接を与えはじめると、彼は気持ちよさげによがり狂う。そうしてようやく叶った吐精のあとも、「もっともっと」と、口にして、腰を振って強請ってきた彼は、明けがたごろにやっと意識を飛ばして、ぐったりと動かなくなった。
眠る目じりは赤く染まり、長い睫毛には涙が絡まっている。意地悪がすぎたと頭を掻いたが、自分の横で疲弊して眠
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