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誓い
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十一月下旬。
勝司は帰宅するなり予備校から郵送されてきた封筒を突きつけられた。高弘は、今日は休日である。
「まさか、もう見た──とか?」
「んなわけねーだろ。帰りを待ってたぞ」
勝司の頬が、引きつった。
「いや。決して、そんなに楽しみにするようなモノでは……」
「いいから開けろ。そしてすぐ見せろ!」
勝司の言葉をさえぎる高弘は、心の底から楽しそうである。
「プレッシャー、だよなあ……」
封筒をぴりぴりと、端からちぎっていく。
「あれ──?」
「どうしたんだ」
動こうとしない勝司の答えを待ちかねて、高弘は用紙を奪う。
「タカ、おいコラ!」
「オマエ、やれるじゃないか!」
数学、偏差値「62.2」
英語、偏差値「58.9」
国語、偏差値「59.5」
総合。偏差値「60.2」
劇的な伸び方だった。
「そこまで手ごたえ、なかったけどなあ」
「かわいくねーな。スナオによろこべよ」
A判定にこそ届かないが合格率60%以上のB判定。前回のE判定とは雲泥の差だ。
「ご褒美が必要だな──?」
「あのさ、タカ。どっちにしろナニかするつもりだったんだろ、アンタ?」
「いい着眼点だな、その通りだ」
「だから、そこで居直るなよ!」
似たようなセリフを、誰かに最近いわれたような気がする高弘だった。
「だが、罰ゲームの方がより厳しい」
「いいですよ。奴隷ッスから、オレ」
「よくわかってるじゃないか──!」
「どうしてそんなに嬉しそうなんだよ」
「ご無沙汰だったじゃねえかよ!」
「そこでキレんのかよ──!」
高弘は、とりあえず勝司を抱きしめた。これが子を持った親の、心境だろうか?
──いや、違うだろう。内心で激しく葛藤する高弘。
クールにならなければ。俺が動揺してどうする。
そう、まだ合格が決まったわけじゃない。そこで一気に暗鬱な空気を漂わせる高弘。
「なんか最近さ、たまに思うんだけど」
「うむ、どうした勝司クンや」
「やっぱりヘンだよなアンタ」
「いまさら気づいたかバカめ」
勝司は額に手をあて、深く懊悩する。
「って、勝手に脱がしてんじゃねえよ!」
「ああ、悪い。手が勝手にな」
しかしジーパンを下げる手は止めない。
「まだ夕方なんだけど──?」
「時間は、まだたっぷりあるな……?」
勝司は強制的に横抱きにされて、寝室へ運ばれる。
「待てよ。シャワーくらい浴びさせろよ」
「大丈夫だ、ほとんど無味無臭だからな」
「なんのハナシだよ──!」
「ん、オマエのハナシだろ」
恥ずかしげもなく言い放つ、高弘。
そして手には、ふたつのアイテム。
「それ。前のアレ──と、ナニ?」
「そう。新しいナニを買ってきた」
あざやかな青いシリコン性の、謎の物体──電動オナホと呼ばれるモノだ。
コックリングのスイッチが入れられ、勃起したところでローターのスイッチが入る。
「ぅあ……ッ!」
勝司の腰が、跳ねた。
「いい眺めだな──撮影したいくらいだ」
「クソ変態、それだけは、ヤメロ……」
さらにオナホで勃起の先端あたりを攻められて勝司は目を閉じている。それでもじっとしていられずに腰を前後に振る姿態が、高弘の嗜虐心をさらに煽った。
「じゃあ、バイブも挿入しとくか」
「待て、無理だって!」
「大丈夫。オマエはデキる子だ」
高弘にやさしく頭をなでられるが、勝司は嬉しくもなんともない。
いつだったか本番前に使われたバイブが、ゆっくりと挿入されていった。そうして、後ろでもはじまる振動。
「──あ、ぅ……だめだッて、コレ!」
勝司は目を見開き、息も絶え絶えだった。
「さすがにヤリ過ぎだろうか──?」
「バ、カヤロ、ウ。コロ、ス、ゾ?」
「言葉が怪文書みたいになってるぞ」
三点同時というのは、さすがにムリがあったのか。あっけなく勝司は果ててしまった。
「大丈夫ですか、お客さん」
「さんそ、くれ」
「酸素2リットル入ります!」
本当に酸素マスクを用意しているあたり、変態といえど流石は医者である──などと言ってはならない。
「どうっすかね、調子はー?」
「マジで死ぬかと思った……」
「以上、現場から中継でした」
「タカ。マジで死ぬといいよ」
「じゃあ、つぎ本番な」
「さっきのは何だったんだよ!」
「何って、茶番に決まってるだろ」
高弘のモノは、先走りに濡れ光っていた。
それをヒクヒクと痙攣する、勝司の中心へと埋め込んでいく。
「う──ッ!」
「溜まってるからな。容赦なく行くぜ!」
言葉のまま、高弘の腰遣いには遠慮も容赦も、何もなかった。
とにかく深みへと沈み込ませ、浅く引いていく。その際限ない繰り返しだった。
「──あ、ア、ぅあ…」
「カツ」
「は、あ。ナニ──?」
「好きだ」
「え……?」
高弘の表情は、怖いくらい真剣だった。
「俺は。オマエを絶対に、離さない」
「──お、れ…」
勝司は泣いている。
「バカヤロ──なんで今、なんだよ……」
「泣くな。カツ」
「初めて言われたんだ、そんなこと」
「悪かったな」
高弘は勝司の顔を抱えこみ、口づける。
「オレの方が、そんなの──ッ」
高弘は、急速に絶頂を迎えつつあった。
勝司の両腕は震え、高弘の双肩に痛いほどしがみつく。
「オレの方が。オレの方がアンタのことを好きに、きまってるじゃないか──!」
高弘は全身を震わせ、幾度も達した。
「あー疲れた。そろそろトシかなマジで」
「バッカ。疲れたのはこっちだっつーの」
勝司は、それでも笑んでいる。荒い息のままで。
「カツ。わるかったな」
「何でそう、何度もあやまるワケ?」
「年甲斐もなく燥ぎすぎた」
「年とか何とか、やめろよな。もうそういうの」
でもうれしかった、と勝司はいう。
「『好き』なんてさ。アンタの口からは、一生聞けないもんだと思ってたよ、オレ」
「失礼なヤツだな」
勝司は楽しそうだった。
「そうだよな。でも、ありがとう」
勝司らしくない、率直で澱みのない口調に高弘は目を見開いて硬直している。
「おかげで勇気が出た──かも?」
「自信を持てよ。秀才の俺がいうんだ」
「天才とはいわないあたりが、謙虚?」
「よくわかってるじゃないか。そうだ」
「オレ──タカに、依存してるよな……」
「そんなの。俺だってカツの依存症だぞ?」
そっか、と勝司は呟く。
「それでも、べつにいいんだよね──?」
「ああ──それでいいんだ」
目を閉じた勝司は、寝息をたてはじめる。
その光景に、高弘は目を細めた。
今あるこの時間こそが、間違わなかったことの証明だ。今だからこそ与えられる、安らぎの時間。
だから必ず、守り抜いてみせる。己のいかなる苦労や犠牲など、なにも厭いはしない。
それが勝司と自分自身との約束であり、誓いでもあるのだから。
勝司は帰宅するなり予備校から郵送されてきた封筒を突きつけられた。高弘は、今日は休日である。
「まさか、もう見た──とか?」
「んなわけねーだろ。帰りを待ってたぞ」
勝司の頬が、引きつった。
「いや。決して、そんなに楽しみにするようなモノでは……」
「いいから開けろ。そしてすぐ見せろ!」
勝司の言葉をさえぎる高弘は、心の底から楽しそうである。
「プレッシャー、だよなあ……」
封筒をぴりぴりと、端からちぎっていく。
「あれ──?」
「どうしたんだ」
動こうとしない勝司の答えを待ちかねて、高弘は用紙を奪う。
「タカ、おいコラ!」
「オマエ、やれるじゃないか!」
数学、偏差値「62.2」
英語、偏差値「58.9」
国語、偏差値「59.5」
総合。偏差値「60.2」
劇的な伸び方だった。
「そこまで手ごたえ、なかったけどなあ」
「かわいくねーな。スナオによろこべよ」
A判定にこそ届かないが合格率60%以上のB判定。前回のE判定とは雲泥の差だ。
「ご褒美が必要だな──?」
「あのさ、タカ。どっちにしろナニかするつもりだったんだろ、アンタ?」
「いい着眼点だな、その通りだ」
「だから、そこで居直るなよ!」
似たようなセリフを、誰かに最近いわれたような気がする高弘だった。
「だが、罰ゲームの方がより厳しい」
「いいですよ。奴隷ッスから、オレ」
「よくわかってるじゃないか──!」
「どうしてそんなに嬉しそうなんだよ」
「ご無沙汰だったじゃねえかよ!」
「そこでキレんのかよ──!」
高弘は、とりあえず勝司を抱きしめた。これが子を持った親の、心境だろうか?
──いや、違うだろう。内心で激しく葛藤する高弘。
クールにならなければ。俺が動揺してどうする。
そう、まだ合格が決まったわけじゃない。そこで一気に暗鬱な空気を漂わせる高弘。
「なんか最近さ、たまに思うんだけど」
「うむ、どうした勝司クンや」
「やっぱりヘンだよなアンタ」
「いまさら気づいたかバカめ」
勝司は額に手をあて、深く懊悩する。
「って、勝手に脱がしてんじゃねえよ!」
「ああ、悪い。手が勝手にな」
しかしジーパンを下げる手は止めない。
「まだ夕方なんだけど──?」
「時間は、まだたっぷりあるな……?」
勝司は強制的に横抱きにされて、寝室へ運ばれる。
「待てよ。シャワーくらい浴びさせろよ」
「大丈夫だ、ほとんど無味無臭だからな」
「なんのハナシだよ──!」
「ん、オマエのハナシだろ」
恥ずかしげもなく言い放つ、高弘。
そして手には、ふたつのアイテム。
「それ。前のアレ──と、ナニ?」
「そう。新しいナニを買ってきた」
あざやかな青いシリコン性の、謎の物体──電動オナホと呼ばれるモノだ。
コックリングのスイッチが入れられ、勃起したところでローターのスイッチが入る。
「ぅあ……ッ!」
勝司の腰が、跳ねた。
「いい眺めだな──撮影したいくらいだ」
「クソ変態、それだけは、ヤメロ……」
さらにオナホで勃起の先端あたりを攻められて勝司は目を閉じている。それでもじっとしていられずに腰を前後に振る姿態が、高弘の嗜虐心をさらに煽った。
「じゃあ、バイブも挿入しとくか」
「待て、無理だって!」
「大丈夫。オマエはデキる子だ」
高弘にやさしく頭をなでられるが、勝司は嬉しくもなんともない。
いつだったか本番前に使われたバイブが、ゆっくりと挿入されていった。そうして、後ろでもはじまる振動。
「──あ、ぅ……だめだッて、コレ!」
勝司は目を見開き、息も絶え絶えだった。
「さすがにヤリ過ぎだろうか──?」
「バ、カヤロ、ウ。コロ、ス、ゾ?」
「言葉が怪文書みたいになってるぞ」
三点同時というのは、さすがにムリがあったのか。あっけなく勝司は果ててしまった。
「大丈夫ですか、お客さん」
「さんそ、くれ」
「酸素2リットル入ります!」
本当に酸素マスクを用意しているあたり、変態といえど流石は医者である──などと言ってはならない。
「どうっすかね、調子はー?」
「マジで死ぬかと思った……」
「以上、現場から中継でした」
「タカ。マジで死ぬといいよ」
「じゃあ、つぎ本番な」
「さっきのは何だったんだよ!」
「何って、茶番に決まってるだろ」
高弘のモノは、先走りに濡れ光っていた。
それをヒクヒクと痙攣する、勝司の中心へと埋め込んでいく。
「う──ッ!」
「溜まってるからな。容赦なく行くぜ!」
言葉のまま、高弘の腰遣いには遠慮も容赦も、何もなかった。
とにかく深みへと沈み込ませ、浅く引いていく。その際限ない繰り返しだった。
「──あ、ア、ぅあ…」
「カツ」
「は、あ。ナニ──?」
「好きだ」
「え……?」
高弘の表情は、怖いくらい真剣だった。
「俺は。オマエを絶対に、離さない」
「──お、れ…」
勝司は泣いている。
「バカヤロ──なんで今、なんだよ……」
「泣くな。カツ」
「初めて言われたんだ、そんなこと」
「悪かったな」
高弘は勝司の顔を抱えこみ、口づける。
「オレの方が、そんなの──ッ」
高弘は、急速に絶頂を迎えつつあった。
勝司の両腕は震え、高弘の双肩に痛いほどしがみつく。
「オレの方が。オレの方がアンタのことを好きに、きまってるじゃないか──!」
高弘は全身を震わせ、幾度も達した。
「あー疲れた。そろそろトシかなマジで」
「バッカ。疲れたのはこっちだっつーの」
勝司は、それでも笑んでいる。荒い息のままで。
「カツ。わるかったな」
「何でそう、何度もあやまるワケ?」
「年甲斐もなく燥ぎすぎた」
「年とか何とか、やめろよな。もうそういうの」
でもうれしかった、と勝司はいう。
「『好き』なんてさ。アンタの口からは、一生聞けないもんだと思ってたよ、オレ」
「失礼なヤツだな」
勝司は楽しそうだった。
「そうだよな。でも、ありがとう」
勝司らしくない、率直で澱みのない口調に高弘は目を見開いて硬直している。
「おかげで勇気が出た──かも?」
「自信を持てよ。秀才の俺がいうんだ」
「天才とはいわないあたりが、謙虚?」
「よくわかってるじゃないか。そうだ」
「オレ──タカに、依存してるよな……」
「そんなの。俺だってカツの依存症だぞ?」
そっか、と勝司は呟く。
「それでも、べつにいいんだよね──?」
「ああ──それでいいんだ」
目を閉じた勝司は、寝息をたてはじめる。
その光景に、高弘は目を細めた。
今あるこの時間こそが、間違わなかったことの証明だ。今だからこそ与えられる、安らぎの時間。
だから必ず、守り抜いてみせる。己のいかなる苦労や犠牲など、なにも厭いはしない。
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