84 / 122
23章 姉弟の夢と絆
第1話 なんにでもなれる
しおりを挟む
梅田さんは大学生なのだが、卒業に必要な単位はほぼ取得済みだとのことで、週に何日か塾講師助手のアルバイトをされている。
アルバイトのある日は帰りが21時ごろと遅くなるので、時々煮物屋さんで夕飯を摂られる。実家にお住まいなのだが、家でだと母親に手間を掛けさせてしまうからだ。
確かにご家族は夕飯に適した時間に夕飯を食べられるので、梅田さんだけ遅くなってしまうと二度手間である。
家族の分と一緒に作って置いておいて、食べる時にレンジで温めるなどもできるが、梅田さんのお母さまは「できたてを食べて欲しい」とキッチンに立たれるらしい。
それは本当にありがたいことなのだが、やはり申し訳ないという気持ちが大きくなってしまう。なのでアルバイトの日は夕飯はいらない、ということにしたのだそうだ。
コンビニ食などを買うことも多いのだが、食べることが大好きな梅田さんはできるなら少しでもバランスの良いちゃんとしたご飯が食べたいと、以前から気になっていたという煮物屋さんのドアを開いたのだ。
ちなみに梅田さん、食べることは好きだが、作ることには興味無いらしい。自炊する自信も無いし外食だとお金が保たないと思ったので、大学も家から通えるところを選んだとおっしゃっている。
目的はお食事なのでお酒は飲まれない。もう成人されているのだが、そもそもあまり美味しいと思えないらしい。甘いカクテルでもお酒の味がするのが好きでは無く、やはり飲まれないのだ。なのでドリンクはいつもお冷である。
だからと言って子ども舌でも無いのだろう。いつも煮物屋さんの和食を嬉しそうに「美味しい美味しい」と頬張られる。
さて、今夜もアルバイトを終えた梅田さん、カウンタに掛けてほかほかのご飯をもりもりと食べている。良い食べっぷりだ。
食べるのが大好きな梅田さんは、とてもたくさん召し上がる。煮物屋さんで定食をしっかり食べられても腹七分目なのだそうだ。
「あ~優しい味。私には歳の離れた弟がいて、母の味付けが弟に合わせて濃いめなんですよ。だからここのご飯が本当にほっとします」
梅田さんはお茶碗を片手に満足げに目を細めた。佳鳴は微笑む。
「お口に合って嬉しいです。たくさん召し上がってくださいね」
「ありがとうございます」
梅田さんはお茶碗を置くと小鉢に手を伸ばした。
数日後、また梅田さんはアルバイトがあったのか、21時ごろに訪れた。普段とは違い、珍しく少しばかり疲れを滲ませていた。
おしぼりで手を拭いた梅田さんは「ああ~」と嘆く様な声を上げる。
「今日は疲れましたぁ~。こんな時ビールとか飲めたら美味しいんでしょうねぇ~」
「そうですねぇ。お仕事終わりのビールは確かに別格ですねぇ。でもお好きじゃ無いものを無理に飲んでもしんどいですよ。でしたら代わりにソフトドリンクはいかがですか?」
佳鳴が言うと、梅田さんは「たまには良いかも」とドリンクのメニューを手にする。
「じゃあサイダーください」
「はい。お待ちくださいね。先にお出ししますね」
佳鳴はタンブラーに氷を半分ほど詰めて、冷たいサイダーを注ぐ。しゅわしゅわと泡が上がり、ぱちぱちと弾けた。
「お待たせしました」
「ありがとうございます」
サイダーを受け取った梅田さんはさっそく口を付けると、ぐいと顔を起こした。ごっごっごっと喉が鳴る。そして「ぷはぁっ」と息を吐いた。
「凄っごい美味しいです! いつものサイダーと同じはずなのに」
「きっとお疲れなんですね。糖分が身体に沁みているんだと思いますよ」
「そっか、疲れた時には甘いものか酢の物って言いますもんね」
梅田さんは納得した様に頷いた。
「はい。どちらも疲れを癒してくれますね。あとは炭酸がすっきりさせてくれるんでしょうか。以前テレビで見たんですけど、お金を貯めたくて節約をしたいビール好きの方が、ビールの代わりにサイダーを飲んでおられましたよ。慣れて来たらそれで満足できてしまう様です」
「ビールの代替え品ですかぁ。私はお酒が苦手だからサイダーで充分です。なるほど~」
感心した様に目を開く梅田さん。またごくりとサイダーを飲んだ。
そうして整えたお料理をお出しする。今日のメインは鱈と里芋の煮物だ。鱈は塩を振り、念入りに霜降りで臭みを抜き、塩でぬめり取りをした里芋と合わせてことことと煮込んだ。彩りは蒸した小松菜である。ほろりと柔らかな鱈とほくほくの里芋の一品である。
小鉢のひとつは焼きがんも。木綿豆腐と山芋、卵と塩で種を作り、具は戻したひじきとさっと塩茹でしたいんげん豆、細切りにした人参である。小さなハンバーグの様に形作って、少し多めの太白ごま油で焼き上げた。それにすり下ろした生姜をちょこんと乗せる。表面さくっと、中はふんわりとした一品だ。
もうひとつは切り干し大根とわかめの明太サラダだ。戻した切り干し大根とわかめをオリーブオイルと明太子で和え、器に盛って青のりを振った。しゃきしゃきした歯応えが面白い一品。
ちなみに切り干し大根の戻し汁には栄養分が溶け出しているので、お味噌汁に加えた。それに合わせて今日はお揚げとかいわれのお味噌汁である。
梅田さんはさっそく焼きがんもに生姜を付けて口に運び、「んん~」と頬を緩める。
「美味しいですねぇ~。ふわっふわしてます」
「ありがとうございます」
佳鳴がにこりと笑うと、梅田さんも満足げに「ふぅ」と小さく息を吐いた。
「今日は高3のクラスで抜き打ちテストがあって、監視役に駆り出されたんですよ。さすがに受験生は雰囲気がぴりぴりしていると言うか。見ているこちらまで緊張しちゃいました」
「やはり受験を控えてるから大変なんですねぇ」
「そうなんですよね。受験は人生を左右しますから」
「そうですねぇ。合格してもしなくても、分岐点になるでしょうからねぇ」
「できたら全員合格して欲しいですけどね。皆何になりたいとかってあるのかなぁ。店長さんたちは夢とかってありました?」
「私は今でこそお店をさせていただいてますけど、高校の時は特にこれと言って無かったですねぇ。なので自分の学力の及ぶところで大学を選びました」
「僕は調理師免許とかそういう資格が取れる学部のある大学に行きましたよ。料理が好きだったんで」
「じゃあ今煮物屋さんを経営されていて、夢が叶ったってことなんですね?」
「結果論ですけどそうなりますね。食品会社に就職したんですけど、姉に「料理が好きならお店をやってみても良いんじゃ無い?」って背中を押されて。姉も料理が巧かったんですけど、やるなら手伝うよって言ってくれたんで思い切りました」
「私も何かをやってみたかったんだと思います。千隼が大学のお陰で飲食店ができる免状を一通り持っていましたからね。その時私は営業職だったんですけども、どうにも向いていなかったみたいで、疲れもあったのかも知れません」
「ええ~? 全然そんな風には見えないですよ。お客さんと自然にお話とかされていて。店長はハヤさんじゃ無くて店長さんなんですね」
「実際は共同経営なんですけどもね。私はこの煮物屋さんを所定の年数経営してから、調理師免許の試験を受けました。学校に行かなくても実地経験があれば受験できるんです。実は飲食店をするのに調理師免許は必要無いんですよ」
「そうなんですか?」
「はい。必要なのは食品衛生責任者の資格です。ある程度大きなお店になったら防火管理者の資格も要りますよ。うちの規模なら無くても大丈夫ですね」
「そうなんですね。でもそうやって夢を叶えるのって凄いです。私ももうすぐ就職活動が始まるし、何か考えなきゃ」
「塾でアルバイトをされているんですよねぇ。塾講師とか学校の先生とかを目指されているわけでは?」
「では無いんです。私、大学も教育学部とかじゃ無いですしね。あ、行かなくても教師になる方法はあるんですけども。塾講師なら資格は要りませんけどね。しかもバイト内容は講師のお手伝いですから」
「ああ、そうでしたね」
「それに私、厳しくしたり叱ったりするのが苦手で」
「確かに先生だとそういう側面も必要ですもんね。でもそれでしたら、これから何でも目指せますねぇ」
「そうでしょうか」
「そうだと思いますよ。それこそ社長さんとかにだってなれちゃいますよ」
「あはは、億万長者だぁ」
「何か好きなことがあれば、それをお仕事にしてみても良いんでしょうし。なんでもできますよ」
「そうですね。ちょっといろいろ見てみますね。何が良いかな~」
梅田さんはわくわくする様に表情を輝かせた。
アルバイトのある日は帰りが21時ごろと遅くなるので、時々煮物屋さんで夕飯を摂られる。実家にお住まいなのだが、家でだと母親に手間を掛けさせてしまうからだ。
確かにご家族は夕飯に適した時間に夕飯を食べられるので、梅田さんだけ遅くなってしまうと二度手間である。
家族の分と一緒に作って置いておいて、食べる時にレンジで温めるなどもできるが、梅田さんのお母さまは「できたてを食べて欲しい」とキッチンに立たれるらしい。
それは本当にありがたいことなのだが、やはり申し訳ないという気持ちが大きくなってしまう。なのでアルバイトの日は夕飯はいらない、ということにしたのだそうだ。
コンビニ食などを買うことも多いのだが、食べることが大好きな梅田さんはできるなら少しでもバランスの良いちゃんとしたご飯が食べたいと、以前から気になっていたという煮物屋さんのドアを開いたのだ。
ちなみに梅田さん、食べることは好きだが、作ることには興味無いらしい。自炊する自信も無いし外食だとお金が保たないと思ったので、大学も家から通えるところを選んだとおっしゃっている。
目的はお食事なのでお酒は飲まれない。もう成人されているのだが、そもそもあまり美味しいと思えないらしい。甘いカクテルでもお酒の味がするのが好きでは無く、やはり飲まれないのだ。なのでドリンクはいつもお冷である。
だからと言って子ども舌でも無いのだろう。いつも煮物屋さんの和食を嬉しそうに「美味しい美味しい」と頬張られる。
さて、今夜もアルバイトを終えた梅田さん、カウンタに掛けてほかほかのご飯をもりもりと食べている。良い食べっぷりだ。
食べるのが大好きな梅田さんは、とてもたくさん召し上がる。煮物屋さんで定食をしっかり食べられても腹七分目なのだそうだ。
「あ~優しい味。私には歳の離れた弟がいて、母の味付けが弟に合わせて濃いめなんですよ。だからここのご飯が本当にほっとします」
梅田さんはお茶碗を片手に満足げに目を細めた。佳鳴は微笑む。
「お口に合って嬉しいです。たくさん召し上がってくださいね」
「ありがとうございます」
梅田さんはお茶碗を置くと小鉢に手を伸ばした。
数日後、また梅田さんはアルバイトがあったのか、21時ごろに訪れた。普段とは違い、珍しく少しばかり疲れを滲ませていた。
おしぼりで手を拭いた梅田さんは「ああ~」と嘆く様な声を上げる。
「今日は疲れましたぁ~。こんな時ビールとか飲めたら美味しいんでしょうねぇ~」
「そうですねぇ。お仕事終わりのビールは確かに別格ですねぇ。でもお好きじゃ無いものを無理に飲んでもしんどいですよ。でしたら代わりにソフトドリンクはいかがですか?」
佳鳴が言うと、梅田さんは「たまには良いかも」とドリンクのメニューを手にする。
「じゃあサイダーください」
「はい。お待ちくださいね。先にお出ししますね」
佳鳴はタンブラーに氷を半分ほど詰めて、冷たいサイダーを注ぐ。しゅわしゅわと泡が上がり、ぱちぱちと弾けた。
「お待たせしました」
「ありがとうございます」
サイダーを受け取った梅田さんはさっそく口を付けると、ぐいと顔を起こした。ごっごっごっと喉が鳴る。そして「ぷはぁっ」と息を吐いた。
「凄っごい美味しいです! いつものサイダーと同じはずなのに」
「きっとお疲れなんですね。糖分が身体に沁みているんだと思いますよ」
「そっか、疲れた時には甘いものか酢の物って言いますもんね」
梅田さんは納得した様に頷いた。
「はい。どちらも疲れを癒してくれますね。あとは炭酸がすっきりさせてくれるんでしょうか。以前テレビで見たんですけど、お金を貯めたくて節約をしたいビール好きの方が、ビールの代わりにサイダーを飲んでおられましたよ。慣れて来たらそれで満足できてしまう様です」
「ビールの代替え品ですかぁ。私はお酒が苦手だからサイダーで充分です。なるほど~」
感心した様に目を開く梅田さん。またごくりとサイダーを飲んだ。
そうして整えたお料理をお出しする。今日のメインは鱈と里芋の煮物だ。鱈は塩を振り、念入りに霜降りで臭みを抜き、塩でぬめり取りをした里芋と合わせてことことと煮込んだ。彩りは蒸した小松菜である。ほろりと柔らかな鱈とほくほくの里芋の一品である。
小鉢のひとつは焼きがんも。木綿豆腐と山芋、卵と塩で種を作り、具は戻したひじきとさっと塩茹でしたいんげん豆、細切りにした人参である。小さなハンバーグの様に形作って、少し多めの太白ごま油で焼き上げた。それにすり下ろした生姜をちょこんと乗せる。表面さくっと、中はふんわりとした一品だ。
もうひとつは切り干し大根とわかめの明太サラダだ。戻した切り干し大根とわかめをオリーブオイルと明太子で和え、器に盛って青のりを振った。しゃきしゃきした歯応えが面白い一品。
ちなみに切り干し大根の戻し汁には栄養分が溶け出しているので、お味噌汁に加えた。それに合わせて今日はお揚げとかいわれのお味噌汁である。
梅田さんはさっそく焼きがんもに生姜を付けて口に運び、「んん~」と頬を緩める。
「美味しいですねぇ~。ふわっふわしてます」
「ありがとうございます」
佳鳴がにこりと笑うと、梅田さんも満足げに「ふぅ」と小さく息を吐いた。
「今日は高3のクラスで抜き打ちテストがあって、監視役に駆り出されたんですよ。さすがに受験生は雰囲気がぴりぴりしていると言うか。見ているこちらまで緊張しちゃいました」
「やはり受験を控えてるから大変なんですねぇ」
「そうなんですよね。受験は人生を左右しますから」
「そうですねぇ。合格してもしなくても、分岐点になるでしょうからねぇ」
「できたら全員合格して欲しいですけどね。皆何になりたいとかってあるのかなぁ。店長さんたちは夢とかってありました?」
「私は今でこそお店をさせていただいてますけど、高校の時は特にこれと言って無かったですねぇ。なので自分の学力の及ぶところで大学を選びました」
「僕は調理師免許とかそういう資格が取れる学部のある大学に行きましたよ。料理が好きだったんで」
「じゃあ今煮物屋さんを経営されていて、夢が叶ったってことなんですね?」
「結果論ですけどそうなりますね。食品会社に就職したんですけど、姉に「料理が好きならお店をやってみても良いんじゃ無い?」って背中を押されて。姉も料理が巧かったんですけど、やるなら手伝うよって言ってくれたんで思い切りました」
「私も何かをやってみたかったんだと思います。千隼が大学のお陰で飲食店ができる免状を一通り持っていましたからね。その時私は営業職だったんですけども、どうにも向いていなかったみたいで、疲れもあったのかも知れません」
「ええ~? 全然そんな風には見えないですよ。お客さんと自然にお話とかされていて。店長はハヤさんじゃ無くて店長さんなんですね」
「実際は共同経営なんですけどもね。私はこの煮物屋さんを所定の年数経営してから、調理師免許の試験を受けました。学校に行かなくても実地経験があれば受験できるんです。実は飲食店をするのに調理師免許は必要無いんですよ」
「そうなんですか?」
「はい。必要なのは食品衛生責任者の資格です。ある程度大きなお店になったら防火管理者の資格も要りますよ。うちの規模なら無くても大丈夫ですね」
「そうなんですね。でもそうやって夢を叶えるのって凄いです。私ももうすぐ就職活動が始まるし、何か考えなきゃ」
「塾でアルバイトをされているんですよねぇ。塾講師とか学校の先生とかを目指されているわけでは?」
「では無いんです。私、大学も教育学部とかじゃ無いですしね。あ、行かなくても教師になる方法はあるんですけども。塾講師なら資格は要りませんけどね。しかもバイト内容は講師のお手伝いですから」
「ああ、そうでしたね」
「それに私、厳しくしたり叱ったりするのが苦手で」
「確かに先生だとそういう側面も必要ですもんね。でもそれでしたら、これから何でも目指せますねぇ」
「そうでしょうか」
「そうだと思いますよ。それこそ社長さんとかにだってなれちゃいますよ」
「あはは、億万長者だぁ」
「何か好きなことがあれば、それをお仕事にしてみても良いんでしょうし。なんでもできますよ」
「そうですね。ちょっといろいろ見てみますね。何が良いかな~」
梅田さんはわくわくする様に表情を輝かせた。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!
心太黒蜜きな粉味
ファンタジー
※完結しました。感想をいただけると、今後の励みになります。よろしくお願いします。
これは、今まで暮らしていた世界とはかなり異なる世界に移住することになった僕の話である。
ようやく再就職できた会社をクビになった僕は、不気味な影に取り憑かれ、異世界へと運ばれる。
気がつくと、空を飛んで、口から火を吐いていた!
これは?ドラゴン?
僕はドラゴンだったのか?!
自分がドラゴンの先祖返りであると知った僕は、超絶美少女の王様に「もうヒトではないからな!異世界に移住するしかない!」と告げられる。
しかも、この世界では衣食住が保障されていて、お金や結婚、戦争も無いというのだ。なんて良い世界なんだ!と思ったのに、大いなる呪いがあるって?
この世界のちょっと特殊なルールを学びながら、僕は呪いを解くため7つの国を巡ることになる。
※派手なバトルやグロい表現はありません。
※25話から1話2000文字程度で基本毎日更新しています。
※なろうでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる