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Aconitum
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それは、彼だからだったわけではない。
「八十万で、他にはおりませんか」
「百万」
相場より安かった。だから丁度良いと思って買った。それだけだ。
もう成人を越えているであろう立派な青年で、とりわけ美形でもなければ処女でもないし、首輪だけではどうしようもなかったのか肘から後ろ手に縛られた両手に加えて猿轡までされていたそれは、手を出せば噛み千切らんばかりの獰猛さを持った、暴れ馬そのものだった。
「んーっ!」
猿轡すらも噛み千切りそうな勢いで唸る男を部屋に転がし、手を縛っていた布をそのままカーテンレールに結びつける。
「元気なのは良いことなんだけどさ、ちょっと静かにしてくれない?」
縛ってもなおカーテンレールごとぶち壊して逃げださんとする威勢の良さに買うべきものを間違えたかと少し反省する。
「ん、うう」
安かっただけで飛びついたが、少し躾に時間がかかる分逆に金がかかるかもしれない。
とりあえずは、言うことを聞かせるために。
「静かにしてって言ったよね?」
腹を蹴り上げ、かがんだところで頭を掴んで床に叩きつける。手を縛られているせいで受け身もとれずにもろに倒れ込んだ青年は、少しの間じっとしていたが、すぐに自由な足で逃げるように後ろへずり下がった。
「お前さ、僕に買われたの。僕の奴隷なの。分かってる?」
髪を引っ張って頭を持ち上げ、一瞬で怯えるような目に変わってしまった青年を眺める。
「人権無いよ? 飼い主の言うこと聞かない危ない犬は殺さなきゃ」
「……っ」
ポケットから取りだしたサバイバルナイフを首元に突きつけると、ようやく大人しくなったようで小さく震えだした。
「そ、そーやって大人しくしてればいいの。じっとしとけば殺したりはしないからさ」
腕も口も拘束したままで青年の体を転がし、足を掴む。買ったときに処女ではなかったという事はこの先に起こることくらい彼にも察しは付いているだろう。
「ああでも、どんな声で鳴くかは気になるなあ」
猿轡を外して口の中に残った瘤を取り出す。
「っ、この変態……!」
「あ?」
少しは言うことを聞いた褒美をかねて優しくしてやろうと思っていたが、気が変わった。
「文句言うなよ、喧嘩売ったのはお前だから」
背に片膝をついて服を脱がし、無遠慮に後孔へ指をねじ込む。
「……ん?」
予想と反して柔らかいそこに、すぐに結論は出た。
「はあ、お前“あそこ”の性処理やったんだ」
本来はオークション側が商品に手を出すことは無い。しかし特例として売りようもない商品や躾が必要な暴れ馬に関しては、運営が買い取ってそれこそ死ぬまで奴隷の扱いを受けるか、売り出せるまで奴隷の品質を上げる為に運営で短期間性処理をする事がある。
「で、殊勝なフリして売り出されて、こっちなら逃げられると思ったのか」
「あ、ゃ」
散々好きにされたのか、どこを擦っても更に欲しがる様にきゅうきゅうと指を締め付ける。それに腹が立つのか、苦し紛れに足をばたつかせた。
「でもこれならもう挿入りそうだよね」
「や、やめ」
「やめるわけ無いじゃん、お前は僕が買った奴隷なんだから」
背後からそのまま後孔に自身を押し当て、嫌がる青年を無視してねじ込んだ。
「あぁ、や……っ!」
しばらくしたら、動かなくなった。死んだかと思ったが、口元に当てた手に規則的な息が当たったので気絶しているだけだと分かった。
「どうしよっか……汚いけどこれ風呂に入れるの面倒だなあ」
どちらのものか分からない体液で汚れきった青年の体は盛り上がっているときこそ組み敷けたものの、落ち着いた今の状態ではとても触る気になれない。
「ああでも人間でしょ? 勝手に入ってくれないかなあ」
その為には腕を解いて自由にしてやらなければいけないのだが、そんなことをすれば勝手に逃げ出すか自分が寝ている間に襲われるかのどちらかだろう。この威勢の良さはこの程度いじめただけでしおらしくなるようなものではない。
「風呂に繋いでおこうかな、首輪にすれば自分でちゃんと洗うでしょ」
腕を解いて首輪に付け替え、風呂に繋いでドアを閉める。持ち上げて汚れた腕は台所で洗って綺麗にした。
部屋に戻り、鍵を閉めて布団に潜り込む。外はようやく日が昇ってきたころで、遮光カーテンも閉めないまま日の光に照らされて眠りについた。結局一時間もせずにものすごい音を立てて暴れはじめた青年を殴り飛ばしに行くために起きる羽目になったのだけれど。
「八十万で、他にはおりませんか」
「百万」
相場より安かった。だから丁度良いと思って買った。それだけだ。
もう成人を越えているであろう立派な青年で、とりわけ美形でもなければ処女でもないし、首輪だけではどうしようもなかったのか肘から後ろ手に縛られた両手に加えて猿轡までされていたそれは、手を出せば噛み千切らんばかりの獰猛さを持った、暴れ馬そのものだった。
「んーっ!」
猿轡すらも噛み千切りそうな勢いで唸る男を部屋に転がし、手を縛っていた布をそのままカーテンレールに結びつける。
「元気なのは良いことなんだけどさ、ちょっと静かにしてくれない?」
縛ってもなおカーテンレールごとぶち壊して逃げださんとする威勢の良さに買うべきものを間違えたかと少し反省する。
「ん、うう」
安かっただけで飛びついたが、少し躾に時間がかかる分逆に金がかかるかもしれない。
とりあえずは、言うことを聞かせるために。
「静かにしてって言ったよね?」
腹を蹴り上げ、かがんだところで頭を掴んで床に叩きつける。手を縛られているせいで受け身もとれずにもろに倒れ込んだ青年は、少しの間じっとしていたが、すぐに自由な足で逃げるように後ろへずり下がった。
「お前さ、僕に買われたの。僕の奴隷なの。分かってる?」
髪を引っ張って頭を持ち上げ、一瞬で怯えるような目に変わってしまった青年を眺める。
「人権無いよ? 飼い主の言うこと聞かない危ない犬は殺さなきゃ」
「……っ」
ポケットから取りだしたサバイバルナイフを首元に突きつけると、ようやく大人しくなったようで小さく震えだした。
「そ、そーやって大人しくしてればいいの。じっとしとけば殺したりはしないからさ」
腕も口も拘束したままで青年の体を転がし、足を掴む。買ったときに処女ではなかったという事はこの先に起こることくらい彼にも察しは付いているだろう。
「ああでも、どんな声で鳴くかは気になるなあ」
猿轡を外して口の中に残った瘤を取り出す。
「っ、この変態……!」
「あ?」
少しは言うことを聞いた褒美をかねて優しくしてやろうと思っていたが、気が変わった。
「文句言うなよ、喧嘩売ったのはお前だから」
背に片膝をついて服を脱がし、無遠慮に後孔へ指をねじ込む。
「……ん?」
予想と反して柔らかいそこに、すぐに結論は出た。
「はあ、お前“あそこ”の性処理やったんだ」
本来はオークション側が商品に手を出すことは無い。しかし特例として売りようもない商品や躾が必要な暴れ馬に関しては、運営が買い取ってそれこそ死ぬまで奴隷の扱いを受けるか、売り出せるまで奴隷の品質を上げる為に運営で短期間性処理をする事がある。
「で、殊勝なフリして売り出されて、こっちなら逃げられると思ったのか」
「あ、ゃ」
散々好きにされたのか、どこを擦っても更に欲しがる様にきゅうきゅうと指を締め付ける。それに腹が立つのか、苦し紛れに足をばたつかせた。
「でもこれならもう挿入りそうだよね」
「や、やめ」
「やめるわけ無いじゃん、お前は僕が買った奴隷なんだから」
背後からそのまま後孔に自身を押し当て、嫌がる青年を無視してねじ込んだ。
「あぁ、や……っ!」
しばらくしたら、動かなくなった。死んだかと思ったが、口元に当てた手に規則的な息が当たったので気絶しているだけだと分かった。
「どうしよっか……汚いけどこれ風呂に入れるの面倒だなあ」
どちらのものか分からない体液で汚れきった青年の体は盛り上がっているときこそ組み敷けたものの、落ち着いた今の状態ではとても触る気になれない。
「ああでも人間でしょ? 勝手に入ってくれないかなあ」
その為には腕を解いて自由にしてやらなければいけないのだが、そんなことをすれば勝手に逃げ出すか自分が寝ている間に襲われるかのどちらかだろう。この威勢の良さはこの程度いじめただけでしおらしくなるようなものではない。
「風呂に繋いでおこうかな、首輪にすれば自分でちゃんと洗うでしょ」
腕を解いて首輪に付け替え、風呂に繋いでドアを閉める。持ち上げて汚れた腕は台所で洗って綺麗にした。
部屋に戻り、鍵を閉めて布団に潜り込む。外はようやく日が昇ってきたころで、遮光カーテンも閉めないまま日の光に照らされて眠りについた。結局一時間もせずにものすごい音を立てて暴れはじめた青年を殴り飛ばしに行くために起きる羽目になったのだけれど。
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