リリィは可愛い(*´꒳`*)おじさん♡Ωに覚醒〜おサイコでαな旦那サマと結ばれて…からの、闘いの物語です!\\\٩(๑`^´๑)۶////

志村研

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おじさん♡囚われました③

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視作生は一瞬で破壊された。

君は苦しまなかったろう。
それだけが、救いだ。

「…叔母上、何故です」

その答えを、貴女は下さらないまま…
俺に鎖を掛けなさった。

そして俺は、意識の深淵の囚われ人となった。

これは『不能の鎖』であろう。
容易には抜け出せぬ。

我が一族の秘宝を惜し気なくご使用になるとは、大盤振る舞いである。
俺という人間を知り尽くした、貴女らしいやり方だ。

こうまで徹底されねば…
俺は死ぬまで、抗ったでしょう。

思えば、ずっと気がかりだった。
叔母は、これまで徹底して傍観を貫いて参られた。

この期に及ぶまで、誰よりも『リリィ』について関心を露わになさらず…

何一つとして意見する事も無かった。

そうだ…
ただ一度、厳しく叱責なさったか。

叔母上は全ての職務を放棄して『リリィ』が為に、侍女として生きることを望まれた。
貴女があの様に、心情を露わになさった事は初めてでした。

だから俺は困惑し、つい失言した。
『それは!、、いけません。…だいたい、大袈裟でしょう』

実際、叔母上なくして国政は立ち行かぬのだ。
それに、当時は俺にも迷いがあった。

今となっては、視作生を『Ω女王』にはせぬと決意している。

だがあの時は未だそれが、しかと胸の芯に固まってはいなかった。
それ故に、誤魔化す様な物言いをしたのだ。

…いや、親しい身内の甘えもあった。
俺は甘ったれた甥らしく、性根の定まらぬ意見を零し…

叱られた。
『わかった様な事を!其方はことの重大さを解しておらぬ』
叔母上は鬼気迫るお顔で私を睨みつけ、激怒なさった。

『…叔母上、手前は確かに未熟者で御座る』
しかし、俺も叔母上に劣らぬ頑固者である。
止せば良いのに、跳ねっ返った。

『で、その重大さ、とは如何なるものですか。先代のリリィからの侍女である、貴女にしか解らぬ類のものなら…』
俺は、言い過ぎた。

急に顔色を無くした彼女は、私から目を逸らした。
そらを捉え、悲痛な面持ちで呟いた。

『リリィは、リリィは…、絶対に失わぬ!…もう、二度と。…それだけは、嫌じゃ』
それはまるでいとけない、少女のような物言いだった。

思いがけずも、切羽詰まった様な貴女の態度は酷く意外だった。
俺は訝しんだ。
しかし、滅多に顰めつらしく平坦な御顔を崩さぬ叔母上の、情に触れた気がして…

それが俺には新鮮で、とても嬉しかった。
叔母上はリリィに御執心だ。
この御人にもそんな他愛ない所があるのだと、愛しく思えた。

だから俺は深追いをせずに、流してしまった。

…いけなかった。
それが思い切り、仇となったのだから!

我らは、貴女を見損なっていた。
ルイスが執政官、ブレンダリー様。
貴女こそが此度の暴挙の首謀者である。

「首都において、執政までが不在であってはならぬ、と仰って。お留守番なさったの」
クラウディア様は、侍女の片割れの不在をその様にしれっと言い訳なさった。

それを受けた俺は、拍子抜けした。
叔母上は必ずおいでになる筈だと身構えておったのだ。

いくら何でも、侍女たる御方が此度の行幸に加わらぬとは不自然であるし、薄情な事である。
しかし、俺はハタと思い付いてしまった。

叔母は相当な意固地であられる。
一度、そうと決意したらば絶対に譲らぬ人だった。

故にこの肩透かしは、俺への、夫君一同への、意趣返しともとれたのだ。
名ばかりの侍女に甘んじざるをえぬその口惜しさを、叔母上はじっと抱えておいでだったろう。

それをこの様なやり方でもって、御不満だといよいよと意思表示なさったのではないか。

我々はすっかり、そう理解した。
そして非常に居た堪れぬ想いごと、飲み込んだのだった。

要するに…
臭いものに、蓋をした訳だ。

しかも今宵の晩餐の会は、思いがけずも華やかな催し事となってしまった。
そのせいで、我々は忙殺されたのである。

俺達は何故か激しく駆り出されて、使い回された。
これには視作生の口添えもあり、渋々と許諾した事だったが…

やり慣れぬ事は、苦行である。

男子諸君は、妙に疲弊した。
普段の調子を狂わされ、翻弄された。

我々のその様な体たらくに、眉を顰めつつ…
クラウディア様と淑女方は、視作生をアレやコレやで想い存分に飾りたてた。

そうして彼女達の理想の『リリィ人形』に仕立て上げられた視作生は実に愛らしく…
我ら夫君も、心和ませずにはおれなかった。
当の視作生も満更でもない様子で、非常にご機嫌が良ろしい。

それこそが、俺はとにかく嬉しかった。
妻の喜びに満ちた笑顔を観るのは、我らの至福である。

そうして夜が更けてもまだ、賑やかに過ごしていた。

「視作生、そろそろお休みなさい」
セバスティアンが過ぎる夜更かしを諌めた。

それから…
彼は視作生に精食を勧めたかったに違いない。
しかし…
御母堂の面前である。

『今日という日くらい、よろしいわ』
その御母堂が、あっさりと手で払う様に息子の指図を却下した。

『うん♡まだ眠くないし!後ちょっとだけ、ね?お願い♡』
そこに便乗した妻のおねだりを、無下には出来なかった。

その上…
『若君方、今のうちに寝所の手配をなされては?』
『私達、忙しいの。まあ、見ればわかろうが』
『リリィに関わる事は、些細な御身周りの用事であっても人選がされねばならぬ』
『つまり、私達が手が離せぬ以上は貴殿らが働く他は無い』
『よろしくて?リリィはお疲れよ。湯浴みの準備もなさいませ』

容赦のない、追い討ちをくらった!
この様に非常に不本意ながらも、体よく追い払われた俺達は完全に油断していたのだ。

この親愛に満ちた会合が、覆る事はもはや無いものと思ってしまった。

セバスティアンが妻の寝所でシーツと格闘している時…
アレクサンドールが浴室で床に磨きをかけている間に…
俺が妻の所望で、彼が就寝前に決まっていただく、ミルクを温めに行っている隙に…

叔母上は、秘密裏に参られた。
そして…

視作生を壊した。

俺は彼女の気配を察知する事が出来なかった。
俺の内の『推察』の力の一部が機能しなかったのだ。

それは、同じ能力者のなせる技だ。
それも、上位者にしか成らぬ。

それでも、俺は察した。
視作生が死ぬ事を、殺される直前に察したのだ!

俺は知らなかった。
貴女が隠しの御力をお持ちである事を…

『推察』の秀でた使い手として、叔母は有名で御座る。
領主の良き相方として、その能力を遺憾無く発揮なさっておいでだった。
『ルイスの並び立つ、二双が白百合』とその麗しき親交の様子を謳われる程に…

そのあなたが『昏睡』をも自由自在と操る使い手であろうとは!

『推察』は素質があれば、後天的にも研鑽の見込める能力だ。
しかし『昏睡』は生まれ持っての才能でしか機動せぬ。

叔母上は、ルイスが最上位者で座す。
貴女にその力を振るわれたら、誰一人として刃向う事はならぬ。

それでも、まさか…

『リリィ』たる『視作生』を手にかけるとは!
俺には思い、及ばなんだ。

何故なら、貴女は…
彼を愛していたでしょう。

ほんの一目…
合い間見えただけで、貴女は視作生に焦がれておいだった。

それは俺が如き若輩者にすら、察する事が出来た程です。

なのに何故、貴女は御自身を裏切ったのか!
何が貴女をその様な、狂気に駆り立てたのか!

なけなしの、力をありあわせて、貴女を視た。

…傷が、お有りだ。
遠い、過去のものだ。

それが、貴女を捕らえているのか。

…叔母上、いけません。
貴女は間違えている。

貴女様ほどの『推察』者が何という体たらくでしょう。

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