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おじさん♡初恋でした
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ヴィクトール♡
閉ざされし扉が、開かれた。
そして逆光を背負い、偉大なる影の人は堂々と参られた。
「止せ」
熱気と混乱で澱んだ王の間に、新鮮なる風が吹きこんでくる。
「我らが妻から、離れよ」
とても低い、清廉と、落ち着き払った声音である。
…セバスティアン、君なのか。
怒りの為に君のエメラルドの瞳の虹彩が、金色を帯びている。
まるで鬼神の如き威圧を纏う彼は、余の知らぬ男であった。
そして良く通る涼やかな声が彼に続く。
「叔母上、いけません」
おお、マクシミリアン…
君の晴れ渡る空色の瞳は変わらぬ。
「…我が君。いかに貴方がお望みであろうと、この方は放しません!」
一国を担う御方が一寸、たじろがれた。
「いえ。解き放たれるのは、貴女の方だ」
君は何処までもを見通す使い手で御座したが、こんなにも底の知れぬ男であったか。
「摂政殿、貴女は癒されねばならない」
セバスティアンは静かに語りかけた。
今の彼には彼女を威圧し、制する事も出来ようがなさらない。
…深い、慈悲を感じた。
彼は若く、またα気質のきつい人だ。
で、あれば、、
いかに肉親であろうと此度の暴挙を許せよう筈が無い。
ブレンダリー殿はルイス公国で最強の能力者であられる。
しかし今の彼は、彼女を上回っている。
それは彼らの妻が夫達に愛を垂れ、力を授けたからであろう。
その偉大なる妻が、彼らの目の前で狼藉を働かれている。
これは非道であり、本来なら問答無用で成敗して然り。
しかし、ルイスが若君方は大変に分別のある態度を示されておられる。
「時は戻らぬ。そしてリリィもまた、還らぬ」
セバスティアンはゆっくりと、彼の良く知る人の肩に触れた。
「叔母上。我らは、視作生と新世界を生きるのです!」
マクシミリアンもまたゆっくりと、彼の愛する人の背に手のひらを合わせた。
「…、、リリィは、居るわ。ここに。この、この方は、私の、、、」
未だ昏い眼のままで、摂政殿はむずがった。
「全く、聞き分けの無い方だ!この人は、視作生だ。貴女は一度、彼と御話しなさい。彼もそれを望んでいる」
セバスティアンは彼らしく、横柄に言い放った。
そして、彼は妻におもむろに口付けた!
…深い、口づけだ。
妻の口腔に舌を差し込み、そこいら中に這わせている。
そうして湧いた唾液を、喉奥に注ぐ。
白く滑らかな喉が、上下した。
すると、目に見えて『御人形』が生身を取り戻す。
やがてすっかりと生気を取り戻した視作生は、花が綻ぶ様に笑んだ。
…ああ、それか。
その笑みこそが、君のものか。
なんと、可愛い人だ!
弟の忠告は本当であった。
そう、呆然と独りごちる余を置き去りに…
夫婦らは情熱的に睦愛う。
マクシミリアンが堪らずと、戻った妻を背なから抱き締める。
すると彼の妻は線の美しい首を巡らせ、彼を求めた。
そして、また…
熱い口付けを交わすのだった。
胸が焼け付く。
俺は、これ程の怒りを感じた事は無いぞ!
目を閉じ、耳を塞ぎ、、
全てを遮ってしまいたい衝動に駆られる。
…無様だ。
だが、彼らはまだ追い討ちをかけてきた!
視作生は愛する男達にしがみつき、その逞しい身体を確かめている。
二人の夫は二人とも、満身創痍であった。
だがその体躯は歓喜に満ち、精力すらかんじさせるのである。
視作生は勿論、誰よりもそれを感じておろう。
彼は徐々に目元に朱を刷き、頬を火照らせる。
それから滲む様に、また笑んだ。
その濡れて潤んだ微笑は、明らかに誘惑を意図している。
とても美しい、笑みであり…
とても残酷な、笑みだ。
この、俺に、羨望を抱かせるのだから!
彼は昨夜、この俺に唯の少しも潤んではくれなんだのだぞ!
視作生。
君は俺に復讐しておられるのか。
この酷い嫉妬に胸を焦がす苦しみは、君が意図せぬ交わりを俺が望んだ罰なのか!
なんと恐ろしい、人なのだ…
視作生は彼の夫の頬に触れ、指で優しくなぞっている。
彼はそこに、痛々しい傷を見つけた。
視作生は傷ついた顔をして、それから怒って、ほろほろと泣いた。
そんな君をセバスティアンが慰め、マクシミリアンがあやしている。
彼らは想い合うている。
正しく、番いだった。
…美しい光景であると、私は見留めた。
そして同じく、その様を認めたブレンダリー殿は…
遂に崩れ落ちた。
その身はすかさず、相方のクラウディア殿が支えたのであった。
愛あるいたわりの、なんと強き事よ!
彼らはもう、麗しい家族と成られて居る。
それは偉大なる王として立つ俺が、終ぞ恵まれなんだものだ。
今宵、俺は惨めな部外者である。
それから無様な横恋慕に、震える敗者だ。
胸に去来するのは、虚しさだけ…
…いや、それだけではない。
この胸には、未だ、初恋の感動が居座っている。
ここに至ってまでも、まだ、視作生が恋しい。
全く…
俺は何とも、いじましい男であったものだ!
\\\٩(๑`^´๑)۶////
閉ざされし扉が、開かれた。
そして逆光を背負い、偉大なる影の人は堂々と参られた。
「止せ」
熱気と混乱で澱んだ王の間に、新鮮なる風が吹きこんでくる。
「我らが妻から、離れよ」
とても低い、清廉と、落ち着き払った声音である。
…セバスティアン、君なのか。
怒りの為に君のエメラルドの瞳の虹彩が、金色を帯びている。
まるで鬼神の如き威圧を纏う彼は、余の知らぬ男であった。
そして良く通る涼やかな声が彼に続く。
「叔母上、いけません」
おお、マクシミリアン…
君の晴れ渡る空色の瞳は変わらぬ。
「…我が君。いかに貴方がお望みであろうと、この方は放しません!」
一国を担う御方が一寸、たじろがれた。
「いえ。解き放たれるのは、貴女の方だ」
君は何処までもを見通す使い手で御座したが、こんなにも底の知れぬ男であったか。
「摂政殿、貴女は癒されねばならない」
セバスティアンは静かに語りかけた。
今の彼には彼女を威圧し、制する事も出来ようがなさらない。
…深い、慈悲を感じた。
彼は若く、またα気質のきつい人だ。
で、あれば、、
いかに肉親であろうと此度の暴挙を許せよう筈が無い。
ブレンダリー殿はルイス公国で最強の能力者であられる。
しかし今の彼は、彼女を上回っている。
それは彼らの妻が夫達に愛を垂れ、力を授けたからであろう。
その偉大なる妻が、彼らの目の前で狼藉を働かれている。
これは非道であり、本来なら問答無用で成敗して然り。
しかし、ルイスが若君方は大変に分別のある態度を示されておられる。
「時は戻らぬ。そしてリリィもまた、還らぬ」
セバスティアンはゆっくりと、彼の良く知る人の肩に触れた。
「叔母上。我らは、視作生と新世界を生きるのです!」
マクシミリアンもまたゆっくりと、彼の愛する人の背に手のひらを合わせた。
「…、、リリィは、居るわ。ここに。この、この方は、私の、、、」
未だ昏い眼のままで、摂政殿はむずがった。
「全く、聞き分けの無い方だ!この人は、視作生だ。貴女は一度、彼と御話しなさい。彼もそれを望んでいる」
セバスティアンは彼らしく、横柄に言い放った。
そして、彼は妻におもむろに口付けた!
…深い、口づけだ。
妻の口腔に舌を差し込み、そこいら中に這わせている。
そうして湧いた唾液を、喉奥に注ぐ。
白く滑らかな喉が、上下した。
すると、目に見えて『御人形』が生身を取り戻す。
やがてすっかりと生気を取り戻した視作生は、花が綻ぶ様に笑んだ。
…ああ、それか。
その笑みこそが、君のものか。
なんと、可愛い人だ!
弟の忠告は本当であった。
そう、呆然と独りごちる余を置き去りに…
夫婦らは情熱的に睦愛う。
マクシミリアンが堪らずと、戻った妻を背なから抱き締める。
すると彼の妻は線の美しい首を巡らせ、彼を求めた。
そして、また…
熱い口付けを交わすのだった。
胸が焼け付く。
俺は、これ程の怒りを感じた事は無いぞ!
目を閉じ、耳を塞ぎ、、
全てを遮ってしまいたい衝動に駆られる。
…無様だ。
だが、彼らはまだ追い討ちをかけてきた!
視作生は愛する男達にしがみつき、その逞しい身体を確かめている。
二人の夫は二人とも、満身創痍であった。
だがその体躯は歓喜に満ち、精力すらかんじさせるのである。
視作生は勿論、誰よりもそれを感じておろう。
彼は徐々に目元に朱を刷き、頬を火照らせる。
それから滲む様に、また笑んだ。
その濡れて潤んだ微笑は、明らかに誘惑を意図している。
とても美しい、笑みであり…
とても残酷な、笑みだ。
この、俺に、羨望を抱かせるのだから!
彼は昨夜、この俺に唯の少しも潤んではくれなんだのだぞ!
視作生。
君は俺に復讐しておられるのか。
この酷い嫉妬に胸を焦がす苦しみは、君が意図せぬ交わりを俺が望んだ罰なのか!
なんと恐ろしい、人なのだ…
視作生は彼の夫の頬に触れ、指で優しくなぞっている。
彼はそこに、痛々しい傷を見つけた。
視作生は傷ついた顔をして、それから怒って、ほろほろと泣いた。
そんな君をセバスティアンが慰め、マクシミリアンがあやしている。
彼らは想い合うている。
正しく、番いだった。
…美しい光景であると、私は見留めた。
そして同じく、その様を認めたブレンダリー殿は…
遂に崩れ落ちた。
その身はすかさず、相方のクラウディア殿が支えたのであった。
愛あるいたわりの、なんと強き事よ!
彼らはもう、麗しい家族と成られて居る。
それは偉大なる王として立つ俺が、終ぞ恵まれなんだものだ。
今宵、俺は惨めな部外者である。
それから無様な横恋慕に、震える敗者だ。
胸に去来するのは、虚しさだけ…
…いや、それだけではない。
この胸には、未だ、初恋の感動が居座っている。
ここに至ってまでも、まだ、視作生が恋しい。
全く…
俺は何とも、いじましい男であったものだ!
\\\٩(๑`^´๑)۶////
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