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春物語
思い出のヒーローは初恋の人
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「これが神様? 神様ってあたし達みたいな人間の姿をしてるんだね? 本当にこの人、神様なの?」
「そう聞かれると、私も困るんだけど、私が出会った神様は、そんな見た目をしてたの」
「ふ~ん」とから返事をしながら、莉乃はスケッチブックを捲って行く。
その度にスケッチブックに描かれていたのは、神様の寝ている姿ばかり。様々な角度から描かれているものの、基本的には寝ているものが多かった。
「ねぇ葵葉ちゃん、どうして寝てる所ばっかりなの?」
「それはね、神耶君は怠け者の神様で、基本寝てる事が多かったからかな。ふふふ」
神様との思い出を思い返しているのか、葵葉さんは柔らかな笑顔を浮かべていた。
更にページを捲って行くと――
「あれ? これは学生時代の葵葉ちゃん? なんかちょっと、絵の雰囲気が違う」
今度はまだ幼い顔をした葵葉さんの寝顔が描かれたページが出てきた。
「あぁ、それはね、神耶君が描いた私のスケッチ画だよ。凄く上手でしょ」
「うん。葵葉ちゃんのも上手だけど、こっちはなんか、影とかも入ってて、よりリアルって言うか、今にも動き出しそう。葵葉ちゃん、昔は髪の毛短かめだったんだね。これって15歳の葵葉ちゃん?」
「ううん、確かこの絵は、私が高校1年生の時だったから、16歳の時かな~?」
「15歳に出会って、何年くらい神耶君と一緒にいたの?」
「出会ったのは15の夏だったんだけど、さっき話した神耶君に命を助けて貰ったって話が15歳の夏の話なのね。で、その後すぐに私は、本気で病気と向き合ってみようと思って、もともと住んでいた東京に戻ったの。東京の病院で一年くらい治療に専念して、16歳の秋頃にまたこっちに戻って来た。この絵はその時の絵かな。でも再会してまたすぐに神耶君とは会えなくなっちゃったから、過ごした時間はそんなに多くないんだ」
先程の柔らかな笑顔から一転、口元は笑って見えるのに、目元はどこか悲しんでいるような、なんだか切ない表情を浮かべる葵葉さん。
その表情の変化に俺は何となく、葵葉さんはこの神様の事が好きだったのかなと思った。
莉乃も同じ事を思ったのか、「葵葉ちゃんは、その神様の事が好きだったの?」と、遠慮なく聞くものだから、俺は慌てて莉乃を制した。
「バカ、そこは心の中に止めておけって」
「え~? 何で~? お兄ちゃんは気にならないの?」
「何でって……」
会えなくなったって事は、きっと恋は成就しなかった。葵葉さんにとってはほろ苦い思い出でもあるのだろう。
なんて、子供に言っても理解できるわけないか。
莉乃の気をどうやって他へ反らすべきか俺が考えあぐねていると、葵葉さんは少し恥ずかしそうに笑いながら、「そうだね。私は神耶君の事が大好きだったよ。神耶君は、私の初恋の人」と、素直に気持ちを打ち明けた。
「やっぱり!」
葵葉さんからの返答に、莉乃は目をキラキラ輝かせながら、更なる質問を投げ掛けた。
「そう聞かれると、私も困るんだけど、私が出会った神様は、そんな見た目をしてたの」
「ふ~ん」とから返事をしながら、莉乃はスケッチブックを捲って行く。
その度にスケッチブックに描かれていたのは、神様の寝ている姿ばかり。様々な角度から描かれているものの、基本的には寝ているものが多かった。
「ねぇ葵葉ちゃん、どうして寝てる所ばっかりなの?」
「それはね、神耶君は怠け者の神様で、基本寝てる事が多かったからかな。ふふふ」
神様との思い出を思い返しているのか、葵葉さんは柔らかな笑顔を浮かべていた。
更にページを捲って行くと――
「あれ? これは学生時代の葵葉ちゃん? なんかちょっと、絵の雰囲気が違う」
今度はまだ幼い顔をした葵葉さんの寝顔が描かれたページが出てきた。
「あぁ、それはね、神耶君が描いた私のスケッチ画だよ。凄く上手でしょ」
「うん。葵葉ちゃんのも上手だけど、こっちはなんか、影とかも入ってて、よりリアルって言うか、今にも動き出しそう。葵葉ちゃん、昔は髪の毛短かめだったんだね。これって15歳の葵葉ちゃん?」
「ううん、確かこの絵は、私が高校1年生の時だったから、16歳の時かな~?」
「15歳に出会って、何年くらい神耶君と一緒にいたの?」
「出会ったのは15の夏だったんだけど、さっき話した神耶君に命を助けて貰ったって話が15歳の夏の話なのね。で、その後すぐに私は、本気で病気と向き合ってみようと思って、もともと住んでいた東京に戻ったの。東京の病院で一年くらい治療に専念して、16歳の秋頃にまたこっちに戻って来た。この絵はその時の絵かな。でも再会してまたすぐに神耶君とは会えなくなっちゃったから、過ごした時間はそんなに多くないんだ」
先程の柔らかな笑顔から一転、口元は笑って見えるのに、目元はどこか悲しんでいるような、なんだか切ない表情を浮かべる葵葉さん。
その表情の変化に俺は何となく、葵葉さんはこの神様の事が好きだったのかなと思った。
莉乃も同じ事を思ったのか、「葵葉ちゃんは、その神様の事が好きだったの?」と、遠慮なく聞くものだから、俺は慌てて莉乃を制した。
「バカ、そこは心の中に止めておけって」
「え~? 何で~? お兄ちゃんは気にならないの?」
「何でって……」
会えなくなったって事は、きっと恋は成就しなかった。葵葉さんにとってはほろ苦い思い出でもあるのだろう。
なんて、子供に言っても理解できるわけないか。
莉乃の気をどうやって他へ反らすべきか俺が考えあぐねていると、葵葉さんは少し恥ずかしそうに笑いながら、「そうだね。私は神耶君の事が大好きだったよ。神耶君は、私の初恋の人」と、素直に気持ちを打ち明けた。
「やっぱり!」
葵葉さんからの返答に、莉乃は目をキラキラ輝かせながら、更なる質問を投げ掛けた。
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