魔王の心の声が聞こえるようになった小間使いが、番になって溺愛されるようになる話

碧碧

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 結局エイリは5日休んで仕事に復帰した。案の定ヴァルゼウスの心の声は聞こえなくなっており、以前のようには尽力できているとは思えない。それでも、ザルヴァンから教えてもらったこと、これまでヴァルゼウスの心の声で聞いていたことを活かしながら、エイリなりのやり方で職務に励んでいる。


「ザルヴァン様ー、明日の会議の資料、ちょっと見てもらえませんか?」
「なんだ、最近はやけに念入りだな」

 考えていることがわからないなら、要望が動作に出ていないか観察したり、直接聞いたり、経験豊かな人に相談したりすればいい。

 仕上がった会議の資料をヴァルゼウスに手渡すと、中身に目を通し、少しの間をおいてから下がるように手で示された。

「修正するところ、ありましたか?」
「・・・いや、これでいい」

(あったかぁ~・・・どこだったんだろ。)

 ヴァルゼウスはよほどのことがない限り間違いを指摘したり、要望を出したりはしない。だから顔色を窺って察するしかないのだが、これが本当に至難の業なのである。なんとなく満足していなさそうだとはわかっても、どう改善すべきかまではわからないのだ。次こそはちゃんとやろう。落ち込みそうになる自分の顔を両手でバチンと叩き、気合を入れてからエイリは次の業務に向かった。





(エイリの様子がおかしい。まだ調子が悪いのか?)

 ヴァルゼウスも当然エイリへの違和感に気づいていた。以前ほど先回りして業務を行っていない。むしろ指示や自分の仕事への評価を求めるような素振りをする。期待通りでなかったと悟ると、すぐに「役に立たずすみません」と謝ってくる。そんなこと、微塵も思っていないというのに。
 ヴァルゼウス以外の者ともよく話すようになったらしく、随分と親しそうだ。他には、提供される食事は期待とは少し違うものが出ることが増えた。そして何より、常にこちらの様子を食い入るように観察してくる。

 最近は仕事をさせすぎないようヴァルゼウスもエイリのことを気にしているのだが、元気そうに見えてふと表情が翳ることがある。それは大抵ヴァルゼウスがエイリの仕事ぶりに違和感を覚えている時だ。

(何があったかを聞いたとして、エイリは素直に答えてくれるだろうか。)

 そう考えて、すぐに首を横に振る。これ以上仕事をさせようとしてどうする。今の働きでも十分なのだ。無理はしてほしくない。

 それでもエイリのことが気になってしかたがなかった。彼のひたむきに仕事に取り組む姿勢と屈託のない笑顔を思い出しては、ツキンと胸が痛む。「役に立てなくてすみません」と謝られるたびに、なぜだか無性に腹が立つ。まるでヴァルゼウスが、役に立たない者は無価値だと簡単に切り捨てるような人間に思われているような気がして。そもそもエイリが役に立つとか立たないとか、そんなことは関係ない。ただあの優しくて一生懸命な悪魔に自分のそばにいてほしいのだ。でも負担はかけたくない。胸を掻きむしりたくなるようなこの感情が恋慕の類いであることはわかっていた。

(魔王が色恋で悩んでいるとは、誰にも想像できまい。)

 権限でエイリを近くに置くのは簡単だ。だが、エイリの意志で自分を選んでもらいたい。前は自分の体まで差し出そうとして、少しはそういう意味で慕ってくれているかもしれないと思っていたのに、今のエイリは随分と遠くに感じる。





 仕事復帰してしばらくすると、エイリは今の自分では役に立てそうもない会議の同席や、資料作成、出張の同行などの政務を減らしてほしいとザルヴァンにお願いした。過労で倒れたということもあって、申し出はすぐに了承された。

「もったいないが、やむを得んな」
「すみません」

 まさか彼からそんなことを言ってもらえるとは思っていなかったから、なんだか少し嬉しい。

 それからは元々の小間使いの仕事に力を入れることにした。ヴァルゼウスに会える機会が減ったことは残念だが、役に立たないところを見られて失望されるのも嫌で、複雑な心境だ。

「最近秘書業はお休みか?」
「あー、俺にはこっちのほうが合ってるかなーって」
「ふーん。そういやお前、働きすぎで倒れたんだもんな。大好きな魔王様のためとはいえ、無理すんなよ」
「うっせー!でもありがと」

 同僚たちはヴァルゼウスから離れたエイリに特に何を言うでもなく、気遣ってくれた。ともすれば自分の無力さに折れそうになるのを、その優しさに救われている。



 午後3時のティータイム。

 エイリにとってこの時間は特別なものだ。大好きなヴァルゼウスと二人で美味しい茶と菓子をつまみながら、ちょっとした会話をする。この時間だけはヴァルゼウスは自分だけのものだ、なんて思える唯一の時間。それを少しでもいいものにしたくて、ヴァルゼウスの求める茶や菓子を提供したいと思っていた。

 エイリはヴァルゼウスの顔色を見ながら配膳する。昨日は紅茶だったから、今日はコーヒーにしてみた。菓子は以前気に入った様子だったローストナッツだ。

「・・・これで大丈夫ですか?」
「大丈夫とは」

 エイリの問いかけにヴァルゼウスが怪訝そうに答えた。

「今日はコーヒーの気分で合っていたかな、って。お菓子も」
「なんでもいい」

 彼はそう言って、こともなげにコーヒーに口をつけた。その様子を見てエイリが唇を噛む。

 彼にとっては茶も菓子も、なんでもいいのか。どれだけ心を砕いて選んでも、どうでもいいのだろう。毎日の朝食のように。エイリの張りつめていた神経が、ぷつんと切れたのがわかった。

「役に立てず、すみません」

 エイリは俯いて小さくこぼした。その肩が小刻みに震えている。

「・・・どうした」
「俺は、ヴァルゼウス様の求めているものがわからなくなってしまいました」
「ん?」

 静かな部屋にティーカップを置く音がやけに大きく響いた。ヴァルゼウスの問いに、エイリはぽつりぽつりと言葉を落としていく。

「前に、ヴァルゼウス様の思っていることがなんとなくわかるようになったって言いましたよね」
「ああ」
「本当に、聞こえていたんです。心の声が。あはは」
「何?」

 顔を上げたエイリの目からは涙がこぼれていた。静かに泣きながら、可笑しそうに笑っている。

「気持ち悪がられると思って、ずっと言えなくてすみません」
「・・・」
「朝食では和食が好き、特に梅干しのお茶漬けがお気に入り」
「!」
「動きやすい服がよくて、ヒラヒラしているのはあんまり好きじゃない。孤児院の子どもたちに会いたいけど、怖がられると思って会わないようにしてたことも、知ってました」
「君は本当に?」
「あはは、気持ち悪いですよね。でも安心してください、もう聞こえません。俺が間違ったあの時から、聞こえないんです」

 ぽろぽろと涙が落ち、エイリのズボンに染みを作った。

「たまたま心の声が聞こえていただけで、俺の能力が高かったんじゃない。今ではもう、あなたが寒がっているのか、暑がっているのかもわからない。だから空調を適温にすることさえできません。コーヒーより緑茶がよかったですか?しょっぱいものよりも甘いものの方がよかった?何もわかりません。俺は役立たずです」
「エイリ・・・!」
「それでも、あなたをそばで支えたかった。役に立ちたかった。あなたの隣にいるのは、俺がよかった」
「エイリ、それは」
「俺はこのティータイムがとても大切でした。この時間だけはあなたは俺だけのもの。だからあなたの気にいるものを準備したかった。・・・でももう無理ですね」
「エイリ、私は、君を」
「みっともないけど、この城にはいさせてください。元通り、小間使いとしてちゃんとあなたの役に立てるようにがんばります」
「・・・っ」

 エイリは袖で涙を拭い、ズッと鼻を啜ってから立ち上がった。呆然としているヴァルゼウスに微笑み、一礼をして部屋を出る。



 部屋を出てからはあてもなく城内を歩いた。途中で会った同僚に、執務室の食器を下げてほしいとお願いした。

(あんなに、俺なりにがんばってヴァルゼウス様を支えるって意気込んでたのに、この様かよ。かっこ悪い。)

 ふらふらと彷徨ってたどり着いたのは医務室だった。扉を開けると、薬品の匂いが鼻を刺す。前に倒れてここで目覚めた時のことを思い出して少しだけ苦い気持ちになった。

「あれ、エイリくん?」
「フィンデル先生。すみません、なんか、気づいたらここに来てて」
「いいよ。ほら、入って」

 促されて部屋に入り、椅子に座る。

「お茶でいいかい」
「あ、すみません。ありがとうございます」

 温かいお茶を啜ると、喉元から食道、胃の中が順番にぽかぽかと温まるのが心地いい。ほう、と息をついて目を瞑った。

「エイリ君はお茶、好き?」
「うん。なんか落ち着く」
「わかるわかる。僕もあったかい緑茶が好き」

 両手で湯呑みを包み、冷たくなった指先が温まっていく心地よさに浸る。

「・・・俺、心の声が聞こえてたこと、ヴァルゼウス様に言っちゃったんすよね。今では聞こえなくなったことも」
「・・・魔王様は何て?」
「驚いてたけど、話し終わってすぐに俺が逃げてきちゃったから、どう思ったのかはわかんない」
「そっか」
「うん」

 湯呑みを机に置き、血色が良くなった自分の手のひらを見つめる。

「俺なりに役に立ちたいって思ってるのに、なかなか上手くいかなくて。がんばろって思ったはずなのに、失敗して凹んで、落ち込んでられないって思うのに、またすぐ失敗して」

 手をグーパーグーパーしていると、温まった手のひらから指の先まで熱が行き渡り、ピンクに染まっていく。

「しかも、そうやって色々考えて動いても、あの人にとってはどうでもいいんだろなーって思っちゃって。特別だと思ってたのは俺だけだったんだなぁとか。はぁー・・・」

 視線を上げると、穏やかに微笑んでいるフィンデルと目が合った。一人で勝手に自分の内側を晒している状況に急に冷静になって、顔が熱くなる。

「うわ、すみません、俺、一人で恥ずかしいこと言ってる」
「いいんだよ。僕はエイリくんの話が聞きたいんだから」

 フォローされると余計にいたたまれない。両手で顔を覆ってフィンデルの視線を必死に遮る。



「エイリくんから見た魔王様って、どんな人?」

 急に問いかけられて、顔を覆っていた両手を離し頬杖をついた。そしてこれまで聞いてきた心の声や、見てきた行動を思い出す。
 常にこの世界の秩序を維持し、平和を守ろうとする姿勢。子ども達を見つめる眼差し。あの時羽織ってくれた外套の温かさ。言葉は少ないけれど、あの人はーーー。

「いっつも仕事のことを考えてる、不器用だけど、めちゃくちゃ優しい人・・・?」

 フィンデルはふふふ、と笑った。心の声を聞くことのできたエイリだけが知っているその胸の内。

「魔王様は、自分の損得だけで切り捨てる人?人の努力をなんとも思わない人なの?」
「いや、」
「一回失敗しただけで見切りをつける?」
「・・・」
「ね、エイリくん。君のやり方で、君のスピードで、魔王様に寄り添えばいいんじゃないかな。心の声が聞こえなくなったことばかりじゃなくて、エイリくん自身の気持ちも大事にしてほしいな」

 フィンデルの言葉が静かに胸に響く。確かに、心の声を頼りにしていた頃の方が楽だったかもしれない。でも、それに頼りすぎていたことで、自分自身の判断や気持ちを見失っていたような気もする。

「魔王様のそばにいたいと思うなら、今の君のままで十分だと思うよ。無理をする必要はない」
「・・・うん」

 体がぽかぽかと暖かくなったのは、きっとお茶だけのおかげじゃない。フィンデルの言葉が染み渡って、背筋がピンと伸びるのを感じた。

「あと、普通は心の中なんて見えないんだからさ、君も魔王様も、もっと言葉を大切にした方がいいと思う」

 今までヴァルゼウスが要望も何も伝えてくれないせいで困っていた同僚達の顔が思い浮かぶ。

「言葉が関係を繋ぐんだよ。僕はこうやってエイリくんが話してくれたから、君がどんなことを思って、悩んでいるのかを知れた。君がお茶を好きなこともね」
「うん」
「言葉には嘘もあるけど、伝えたいことや知って欲しいことはやっぱり言葉にする方がいいと思うよ。動作や表情でわかることもあるけどね」

 そう言うと、フィンデルが突然エイリの耳元に口を寄せ、「エイリくんが魔王様のこと、番になりたいくらいに大好きなこととかさ」と囁いた。あまりの羞恥にわけのわからない叫び声を上げながら、フィンデルの胸元を掴んでブンブンと振り回す。

「違っ、俺は、そん、うわあああああ!先生のバカ!あほ~~~!」
「あはは、脳みそが揺れる~」

 ひとしきり騒ぐと、二人はなんだか今の状況がやけに可笑しくなってゲラゲラと大笑いした。胸のつっかえがすっかり取れて、清々しい。

「あ~~、笑った」
「ふふふ。僕も楽しかったよ」
「先生、ありがとね」

 笑顔で礼を言うエイリの頭をフィンデルが優しくポンポンと撫でた。子ども扱いにむず痒くなって首を振る。

「いつでも恋バナしにきてください」
「それ話すの俺だけじゃん!先生のも準備しといてよ」
「どうでしょうねえ」
「え?先生って好きなやついんの?」
「あはは、勘弁してください」

 強引に話を切り上げて立ち上がったフィンデルの後を追ってエイリも立ち上がる。外はすっかり暗くなっていた。

「そろそろ夕食の準備を手伝わないとだ。先生またね、あんがと」
「ええ、またいつでも」

 フィンデルに手を挙げ、医務室を出る。その足取りは随分と軽くなっていた。







 その夜、エイリは自室に戻りながら、これからどうヴァルゼウスに接していくかを考えていた。以前のように心の声を頼らず、自分の観察と判断でヴァルゼウスの気持ちを探っていこう。そしてヴァルゼウスに心の内を言葉にしてもらえるようがんばろう。それができるようになれば、もっとヴァルゼウスにとって本当の「支え」になれるかもしれない。

 一方、エイリが去った後の執務室で、ヴァルゼウスは静かに考え込んでいた。

(心の声を聞かれていた?本当に?)

 驚きとともに、自分の心の中がエイリに伝わっていたことに戸惑いを感じていた。彼の前では随分と恥ずかしいことを考えていたような気がする。ただ、そんなことよりも、エイリの涙と苦しんでいる姿が脳裏から離れない。

(私は、エイリに何をしてやれるのだろうか。)

 ヴァルゼウスの胸には、これまで感じたことのない温かさと切なさが広がっていく。心の声を聞かれていたことは驚きだったが、それでもエイリをそばに置きたいと思う気持ちは変わらない。いや、それ以上に彼の存在が自分にとってどれほど大切かを、改めて実感し始めていた。


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