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番外編 獣の眼差し
しおりを挟む「あ、んっ、んん・・・っ」
「エイリ、っ、イイか?」
「んッ、そこ、きもちい、っはぁ、ヴァルッ」
魔界統一記念祭が無事に終わり、魔王城に日常が戻ってきた。エイリは魔王ヴァルゼウスの番としての公務などが増え、慣れない毎日を送っている。
「も、むり、イッちゃう!ああ、ヴァル、奥、ぐちゅぐちゅしてッ」
「っ、ゆっくり、嵌める、ぞ」
「お゙、お゙ぉ゙ー・・・あ゙ッ、ヴァル、も、イく、イく、イッていい・・・っ?」
「いいぞ。私も、出す・・・っは」
そして毎夜ヴァルゼウスに求められ、骨の髄まで吸い取られるような濃厚な交尾をしているーーとは言えなかった。
「は、ぁ゙、ヴァル、もう一回、する?」
「いや、今日はもう寝よう。明日も来客の予定が入っていただろう」
「でも、ヴァルの、まだ」
「気にするな。じきに治まる」
それならせめて口でさせてとエイリがせがむが、ヴァルゼウスはその唇を唇で塞ぎ、抱き上げて浴室へ連れて行く。キスでとろとろになったエイリは抵抗することもできない。こうして今日の交尾も、エイリだけが一方的に蕩けされられて終わってしまった。
「だから、ちゃんと寝られてます!けど!」
「眠れているならいいんだけどね」
「よくないっす!」
湯呑みを置き、エイリがフィンデルに向き直る。以前過労や心労で何度か倒れてから、定期的に会ってお茶をしながら話をするようになったのをいいことに、最近のエイリは同じ愚痴を吐き散らしていた。
「我慢しないでって言ってんのにー!」
「それだけエイリくんのことが大切なんでしょう」
「それはわかってるけど、口でもダメとか・・・俺がいいって言ってんのにさぁ」
口を尖らせ、足をぷらぷらと揺らす。すっかり拗ねているエイリの様子に、フィンデルは困ったように笑った。
「魔王様、前に過労で睡眠不足になってエイリくんが倒れてしまったのが忘れられないんだろうね。番った日の翌日もザルヴァン様に結構叱られたみたいだし」
「でもたまにはさ・・・」
「エイリくんは欲求不満てこと?」
「いや、そういうわけじゃ、ない、けど」
エイリが思わず赤面して俯く。欲求不満、というわけではない、と思う。毎晩頭が真っ白になるくらい満足させてもらってはいる。ただ、自分だけ一方的に甘やかされるのではなく、ヴァルゼウスにも満足してほしかった。それに。
(ヴァルにがっつかれたい、のは、ある・・・。)
番になった日、ヴァルゼウスに貪られるようにしつこく抱かれたのが忘れられない。本能に支配されるがまま、気絶するまで遠慮なく犯された。あの獰猛な目でまた見つめられたい。
「俺が抜群に魅力的になって、ヴァルに我慢できなくなってもらうしかないかぁ」
「魔王様も大変だなぁ」
「フィンデル先生はどういうのに興奮して襲いたくなんの?参考に教えて」
「勘弁して・・・」
しつこく食い下がるエイリを扉へと押し出しながら、フィンデルは大きくため息を吐いた。
「医者と話していたんだな」
「うん。お茶して話聞いてもらってた」
ヴァルゼウスとエイリは横に並んで応接室へと向かっている。今日は天界から天使が派遣されてくるということで、番で挨拶をすることになっているのだ。
「俺、天使に会うの初めてだからちょっと緊張する。ヴァルは何度も会ったことあるんだよな?」
「ああ。親睦のために数カ月に一回向こうからやってくるから」
天使の住む魔界と、悪魔の住む魔界。かつて絶え間なく戦争を起こしていた二つの世界は、ヴァルゼウスが魔王になってから停戦し、和平交渉を続けている。
「どんな天使が来るんだろ。ちょっと楽しみ」
「大抵はセラフィエルという大天使が来るんだが」
大天使と聞いてエイリの眉がぴくりと動いた。
「大天使相手にわざわざ魔王のヴァルが会うの?ナメられてない?」
「いや、最初は熾天使が来ていたんだが、癖の強い者ばかりでトラブルになりかけたんだ。これでは和平と親睦のための交流にならないという話になって、セラフィエル殿が親善大使的な役割に抜擢されたと聞いた。彼の番は悪魔だから選ばれたのだろう」
「天使と悪魔が番?!」
ヴァルゼウスを軽んじる天使達への怒りは、衝撃の言葉にたちまち消えてしまった。いくら停戦中とはいえ、天使と悪魔は仲がいいとは言えない。そもそも会うことなどほとんどないというのに。
「気になるか?もし今日来るのがセラフィエル殿だったら、それとなく聞いてみるといい。何を考えているか読めない男だが、誠実な男だし話してくれるかもしれない」
その言葉に、エイリの緊張が少し解ける。期待のこもった笑顔で頷くと、ヴァルゼウスに頭を撫でられた。
しばらくしてたどり着いた応接室の前、ヴァルゼウスが大きな扉を開けると、そこにいたのは少しチャラそうで、正直言えばあまり誠実そうに見えない男だった。
「初めまして、魔王ヴァルゼウス様。私はアザリエルと申します。本日急用でセラフィエルが来れなくなったので、延期のお願いに参りました」
さすが天使、胡散臭くても笑顔はキラキラと眩しい。
「そうか、わざわざご苦労だった。せっかくだからコーヒーでも飲んでいけばいい」
「あれ?ありがとうございます」
アザリエルが一瞬不思議そうにヴァルゼウスを見た後、その眩しい笑顔のまま、お言葉に甘えますと頷いた。
「アザリエル殿、こっちは私の番、エイリだ」
「はじめまして、エイリです」
「はじめまして、エイリ様。そういえばご結婚されたんでしたね。おめでとうございます。・・・なるほど」
まるで人間のように結婚などと表現されると擽ったい。アザリエルの最後の呟きには気づかないまま、エイリは緩みそうになる頬を引き締め、礼を言った。
「俺、いや僕、天使の方に会うのが初めてで。もしよければ天界のこととか、色々と教えてもらえませんか」
給仕に来た職員に礼を言ってワゴンを受け取ると、エイリがそう言いながらカップにコーヒーを注ぐ。
「私でよければ。ってか、敬語使わなくてもいいですよ。俺、そういうの苦手で。ああもう取り繕うの無理だ、すんません」
コーヒーに口をつけながら、あっけらかんと言うアザリエルの態度に、エイリは毒気を抜かれた気分だった。笑顔が胡散臭いのはそうだが、チャラいというよりは神経が図太いと言った方が正しいか。
「セラフィエルが急用とは珍しいな」
ヴァルゼウスの言葉を聞いてアザリエルがああ、とため息を吐いた。
「恋人が今朝急に発情期に入ったらしいんす。だから一週間くらいは住処から出られないって言ってました」
「そうか。こちらは気にしていないから、また適当に日を決めてくれればいいと伝えてくれ」
「はーい、了解です」
恋人って例の悪魔の・・・。エイリが好奇心にうずうずしていると、応接室にノックの音が響いた。
「お話し中すみません。魔王様、ちょっと急ぎの用件が・・・」
「来客中だ。後にできないのか」
「魔王様、いいっすよ。俺たちで話しときますから。ね、エイリさん」
急に話を振られて、エイリは一瞬戸惑いながらもヴァルゼウスに笑顔を向け、頷く。
「・・・すまない、すぐ戻る」
ヴァルゼウスが渋々といった様子で立ち上がると、エイリの額に軽くキスを落とし、部屋から出て行った。後ろ姿にいってらっしゃいと声をかけるが、流石にアザリエルの前でキスをされるのは恥ずかしくて、今は彼の方を向けそうにない。
「見せつけられたな~」
「あ、いや・・・なんかすみません」
手元のコーヒーカップを手に取り、温くなったコーヒーで喉を潤す。砂糖を入れ忘れていて、苦さに顔を顰めた。
「魔王ってすげー怖いって聞いてたからビビってたけど、結婚して丸くなったんだな」
「え、そんなことないと思うけど」
「どーせ、元々優しかったんです~ってオチだろ?いやー、ゴチソウサマ」
うぇーっと舌を出して肩をすくめるアザリエルに、エイリが思わずケラケラと笑う。飾り気のないアザリエルを見ると、なんだか少し親近感が湧いてきた。
「俺の方こそ、天使って怖いやつらだと思ってたけど、アザリエルさんはなんか親しみやすいな」
「あ、そっちが素?いいじゃん。俺のことはアザリエルって呼び捨てでいいぜ、エイリ」
「わかった、アザリエルね」
ぴんと伸ばしていた背筋を緩め、ソファーにもたれかかる。それを見たアザリエルも足を組んだ。
「やっぱ恋愛っていいもんなんだ?セラフィエルとガルファもめちゃくちゃ幸せそうでさ。あ、ガルファってセラフィエルの彼氏で、インキュバスなんだけど。男同士なうえに天使と悪魔でカップルになるとか、苦労すんだろうな~ザマァって思ってたら、毎日イチャコラして、悩みもなーんにもないって顔してんの」
「あ、男同士なんだ。ほんとすごい組み合わせだな。どうやって出会ったとか知ってんの?」
そこからは主にセラフィエルの番の話で盛り上がった。思わず耳を塞ぎたくなるような破廉恥な内容もあり、エイリが赤面するのを面白がってアザリエルの話はどんどん過激になっていく。知らぬ者が見れば完全にアザリエルの方が悪魔のようだった。
「今も発情期真っ只中で、散々ヤリまくってんだろうなぁ。俺を働かせてといて、クソ」
「・・・いいなぁ」
「あ?」
ぼそりと呟いたエイリの声は、アザリエルの耳に届いてしまったらしい。慌ててなんでもないと誤魔化すも、アザリエルは面白いものを見つけたと言わんばかりの顔でエイリに詰め寄る。
「なーーーに?エイリって、新婚なのに、抱いてもらえてねぇの?」
「違ッ!違うから、そんなんじゃねぇから!」
「魔王が不能とか?めちゃくちゃ下手とか、早漏とか?」
「違ぇよ!ヴァルはすげぇ上手いし毎日どちゃくそ優しく抱かれてるわ!」
言ってから、やってしまったと固まる。顔はだんだん茹っていき、広げた手がぷるぷると震えた。
「や、ちが・・・」
「へーぇ?エイリは毎日甘ーく抱かれてどろどろになってんだ?じゃあ何が不満なんだよ、んん?言ってみ?」
「ぅ゙、ぁ゙・・・」
頭を抱えてうずくまるが、アザリエルが許してくれるはずもなかった。ここまで言ったらもう隠す必要なんてないだろうと押されると、エイリはテーブルに顔を伏せたまま口を開く。
「・・・かり、・・・の、嫌だから」
「ん、何?」
「だから!俺ばっかり気持ちいいのが嫌だって言ってんの!まだやり足りないくせに無理に我慢して終わるし、俺がフェラするって言ってもやらせてくんねーの!」
「あー、なるほどね?エイリってばマグロなんだ」
「違ェよ!そうならないようにしたいのに、こっちばっかり責められると力抜けて体動かねぇし、触ろうとしてもそんなことしなくていいって言われるんだってば!」
ヤケクソになって地団駄を踏みながら喚き散らした。アザリエルが腹を抱えて笑っているのが余計に腹立たしい。こっちはこんなに悩んでいるっていうのに!
「お前が言えって言うから言ったのに、そんな笑う?!こっちは真剣に悩んでんのによぉ!」
「ははは、悪ィ、悪ィ」
一通り笑った後、アザリエルがポケットから小瓶を取り出してエイリに見せた。手元で振ると濃いピンク色の液体が中でたぷたぷと揺れる。
「魔王の種を一滴残さず搾りとりたいエイリちゃんに、俺の秘薬、あげてもいいぜ?」
「なッ!?」
「エイリは、出なくなるまで、なんなら出なくなっても、魔王にケツを犯し続けて欲しいんだよな?」
「いや、そんッ、俺は・・・!」
「これ、強力な媚薬なの。一瓶飲めば一晩発情しっぱなしの勃ちっぱなし。エイリが泣いても喚いても腰振り続けて抜いてくれねぇよ」
アザリエルが耳元に口を寄せて囁いた。びくりと揺れる肩を手で押さえ、擽るように手を動かす。
「ぁ、やめ、ッ」
「なんなら今俺が魔王のコーヒーに入れてやろうかぁ?」
「だめだ!ヴァルに変なもの飲ませんな・・・っ」
薬に、コーヒー。かつて自らがしてしまった過ちを思い出し、エイリが身を捩った。手を払いのけ、アザリエルを突き放そうと腕を伸ばす。
「わかったわかった、ごめんって。じゃあどうすんだ?フェラの練習でもすんのか?」
「はぁ?!いや、結局させてもらえねぇから意味ない、って、近寄んな!」
「俺で練習してもいいぜ?エイリ可愛いから勃ちそうなんだけど」
「やめろ、キモい!」
にじり寄ってくるアザリエルに後退りをしていると、ガチャっと扉が開いた。振り向く前にエイリの背中が温もりに包まれる。
「随分と親しくなったようだな」
「・・・お早いお戻りで」
肩をすくめたアザリエルの顔には、はっきりと残念だと書かれていた。元のソファーに腰掛けながら、ヴァルゼウスが彼を睨む。エイリは慌てて温かいコーヒーを注ぎ直した。
「私の番にあまり近づいてもらっては困る。いくら証に守られているとはいえ、気分はよくない」
「うわ、魔王様もそんなことしてんのか・・・怖い怖い」
独占欲が強すぎる男は嫌われますよ、なんて魔王に言っているアザリエルはなかなかの心臓の持ち主だと思う。エイリが冷や汗をかきながら二人を見遣った。
「さて、用件は伝え終わったんで、俺はそろそろ帰りますね」
そう言ってコーヒーを流し込むと、アザリエルが立ち上がる。ヴァルゼウスとエイリもそれに続き、城の出口までエスコートをしようと前を歩いた。後ろに続くアザリエルがふとエイリに近づき、首元に手を持っていく。
「・・・っひゃ!」
「あ、ごめん、飲んでた水かけちゃった」
「え、ぁ、大丈夫」
どこから取り出したのかペットボトルの蓋を閉めながらアザリエルが謝った。とろりとした液体がエイリの服の中、首筋から背筋を通り、尻尾の上までを伝っていく。通ったところがジンジンと熱を持ったのがわかった。
「ぁ、これ・・・」
慌てて服で液体を吸わせようとするが、もう肌に吸収されてしまったようだ。アザリエルが小声で「これ、肌からでも効くから。今夜は楽しんでな」と笑った。
「何をしている」
「あーいや、なんでも!」
アザリエルが慌てて「見送りはここでいいです。ご馳走様でした!」と言い残し、空へと飛んでいく。「エイリ、がんばれよー!」と両手を振るその姿は、憎たらしいほどに天使だった。
エイリが立っていられたのはアザリエルの姿が見え無くなるまでだった。ふらりとよろけたエイリを、ヴァルゼウスが支える。
「エイリ、どうした!・・・これは、媚薬か?」
「ヴァル、背中、熱い・・・はあっ、ヴァル、ヴァル」
「クソ、天界に抗議にーー」
アザリエルを追って天界まで行きそうなヴァルゼウスに縋りつき、離れないでほしいと泣きついた。
「アザリエルは、悪くない、からっ」
「なぜヤツを庇う!・・・いや、一旦いい、部屋に戻ろう」
エイリの尋常ではない様子に少し冷静になったヴァルゼウスが翼をしまう。そのまま抱き抱えられ、歩く少しの揺れでさえ感じてたまらない。エイリは必死に漏れそうな声を押し殺し、ヴァルゼウスの胸に顔を埋めた。
部屋のベッドにうつ伏せに寝かされ、服を脱がされる。背中にそっと手が触れただけで、エイリは体を仰け反らせてびくびくと体を痙攣させた。
「・・・ッ!はあっ、はあっ!ああ、ッ」
「エイリ、達したのか」
「わかんな、ぃ、あつい、ヴァル、もう、俺・・・っ」
潤んだ瞳でヴァルゼウスを見上げ、疼く後孔を見せつけるように腰をくねらせる。エイリの陰茎からベッドのシーツに透明の汁がどろどろと垂れていた。ヴァルゼウスは目の眩むような光景に唇を噛みながら手荒く自分の服を脱ぐ。
腰だけを抱えられ、ぴとりと剛直が押し付けられた。それが欲しくて欲しくて、後孔が勝手に吸い付くのがわかる。奥まで一気に貫いてもらえるのを今か今かと待っていた時、ぺろ、とうなじを舐められた。媚薬が染み込んで空気が触れるだけでも肌が粟立つところを、ヴァルゼウスの温かい舌が何度もなぞり上げる。
「あ、あ、あーー!ヴァル、そこ、やめッ、あ゙あ゙ッ」
「は、っ、吸われる・・・っ」
甘く噛まれた瞬間、ぞくぞくとした痺れがうなじから頭までを貫き、エイリの背が大きく反り上がる。そのまま硬直し、弾けた快感に体を跳ねさせた。
「あ゙ーーー!イ゙、ぐ、や、ぁ、あ゙あ゙ッ」
「ぅ゙、エイリ、ッ、はあっ」
「ぁ、いま、だめ、あああっ!」
絶頂に悶える中、ヴァルゼウスが背中を舐め続ける。敏感な尻尾の根本を吸われると、エイリが涙を流しながら頭を振り乱した。どれだけ身を捩っても体を押さえつけられ、次から次へと絶頂に襲われる。それなのに、疼く後孔にはさっきからヴァルゼウスの濡れた先端を擦り付けられるだけで、埋めてもらえない。あまりの切なさと苦しさにエイリが絶叫した。
「そこ嫌ああああ!!も、無理ッ!はやく、入れてよぉ!お尻、はやく!あ゙、イくッ、あ゙あ゙あ゙!」
「っ、まだだめだ。エイリ、なぜやつを庇った」
「あ、あ、あ、イッてる、やだ、お尻、ここ、入れて、入れて・・・」
ヴァルゼウスも吸い付いてくる蜜壺を犯したくてたまらないのだろう。短く息を吐き出しながら、絞り出すようにエイリに問う。必死にヴァルゼウスの陰茎に腰を擦り付け、泣いて自分を求める姿に劣情が煽られるが、それもアザリエルのせいだと思うと心にどす黒い霧がかかった。
「言うまでは入れない。ほらエイリ、きちんと言葉にして」
「は、ぁ、うーー・・・」
エイリがぷるぷると震えながら振り返ってヴァルゼウスを覗き見る。興奮から額に汗を浮かべ息を荒げる彼を視界に捉えると、脳内が甘く痺れて尻尾までシビビと電流が走った。
「うあ、ッんん!はあっ、ん!」
ピーンと立って震える尻尾をヴァルゼウスが優しく掴む。それを口元に持ってきて、唾液を纏わせた舌で縁をなぞるように舐めた。
「ひっ!あ゙、ぁ゙、ッ、ゔーーー!」
「ほら、言いなさい」
「そこ、らめ、イくぅ・・・ッ!イクイク、らめ、ヴァル、イッてるからぁ、ッあ゙ーーー!」
ヴァルゼウスが尻尾を口に含み、くちゅくちゅと舌で弄ぶ。吸いながら先端を扱くようにされると、ぞわぞわと体中に快感が染み渡り、無意識に腰を振って極まってしまう。変なイき方をしているのか陰茎から出るのは透明な汁ばかりで、腰の奥に渦巻く熱が解放を求めてぐるぐると煮え続けていた。こんなの、話したくても話せない。
「ヴァル、言う、言うからぁ!尻尾、やめ、てぇ・・・ッ!」
その言葉に、やっと尻尾が口から解放された。ただ、人質のようにぴくぴくと脈打つそこを握られ続けている。
「ぁ・・・俺が、ヴァルに、いっぱい気持ちよくなって、ほしいって相談したから、あ゙あ゙ッ!」
消えそうな声で話し始めたエイリの声を聞こうと、ヴァルゼウスが顔を口元に寄せた。前傾したせいで、ぷちゅ、と濡れた音を立てて後孔に亀頭の先が埋まる。蕩けきったそこが狂ったように奥へ奥へと促すように蠢動した。
「あっ、あっ、あっ、あああ!」
「は・・・続けて」
「ぁ゙、ぅ、奥、まで、入れてよおッ」
「だめだ。全部、はやく、言いなさい」
ヴァルゼウスも、突き入れてぐちゃぐちゃに掻き回したいのを必死に我慢しながらエイリを急かす。
「はぁっ、俺だけ、いっつも気持ちよくて、ヴァルが、ぁ、満足、してな、から・・・ッ、あ゙!」
「満足しているが」
「だめッ!もっと、俺のこと、求めて、ほし、い、のッ!番った、ときみたいに・・・っ!ヴァルの、余裕ない、あの、獣みたいな、かっこいい、目で、見られたかった、ッ」
「・・・っ」
「だから、アザリエルに、言ったら、媚薬あげるって、ッ、ヴァルに飲ませたら、一晩中、せーえき、出なくなるまでシてくれるって、言ってたけどぉッ、俺、もうヴァルに、変なの、飲ませたくない、からぁあ゙あ゙あ゙!あ゙ーーー!!!」
そこまで聞いて、ヴァルゼウスはどろどろに溶けた蜜壺を一気に貫いた。エイリの陰茎からは壊れたように精液が噴き出している。
「はぁっ、ここであいつの名を呼ぶな」
「そ、んな・・・ッ、話せって、言うから、ッ!あ゙、だめ、また、イクイク、だめ、イ゙、ぐ・・・ッ!」
待ちに待ったヴァルゼウスの熱に埋め尽くされ、エイリは絶頂から降りて来られなくなった。立てていた膝が崩れて完全にうつ伏せになったのを、体重をかけて上から押し潰される。膨れきったしこりも、ぱんぱんの精嚢も、ぐずぐずになった結腸口も、ヴァルゼウスの剛直が全て蹂躙していった。エイリは声にならない声で絶叫しながら四肢をじたばたと暴れさせては、シーツに大量の精液を染み込ませていく。
「お゙ーーー・・・っ、ぉ゙、ぉ゙、ん゙ぉ゙ーーー!」
「理性を失った姿など、番である君に、見せたくなかった、のに」
「あ゙、が・・・ッ!ん゙お゙ぉ゙っ」
「エイリ、君は、本当に、いじらしくて、可愛いッ、はあっ、出す、ぞ・・・っ」
絶頂で激しく痙攣し続ける蜜壺に、ヴァルゼウスも限界を迎えた。大きく腰を使い、カリ首の下までを結腸に埋める。エイリが一段と激しく身悶え、両脚をピンと伸ばした。きつく締まる肉ひだに絞られるまま、ヴァルゼウスが射精する。少しでも奥に、細胞一つ一つまで自身の精液が染み込むよう、何度も体重をかけて注ぎ込んだ。射精の脈動はエイリの絶頂を引き延ばしているのか、何度も呻きながら全身を硬直させている。
ヴァルゼウスにも自分と同じくらい気持ちよくなってほしい、理性を捨てて精液が出なくなるまで抱いてほしい、それでもヴァルゼウスに毒になるものを飲ませたくない。そんなエイリがたまらなく愛おしい。エイリそのものがヴァルゼウスにとっての媚薬のようなものなのに。その言葉一つで脆い理性など簡単に吹き飛んでしまうというのに。
「ぁ゙、ヴァル、もっとぉ・・・!」
ぐちゃぐちゃになった顔を向け、エイリがねだる。前から何も出なくなっても、体の熱が冷めないのだ。ヴァルゼウスが一度陰茎を引き抜き仰向けにさせると、シーツにはエイリが漏らした体液がぐっしょりと広がっていた。
栓がなくなったせいで空気の混ざった精液が音を立てて後孔からあふれ出る。エイリは蕩けきった思考ながら、腹の中から温かくて愛しいものがなくなっていく感覚に酷く寂しくなった。無意識にヴァルゼウスの精液を漏らし続ける後孔に指を這わせ、蓋をするようにそっと埋める。
「ひぅ、ぁ゙、ぁ゙!」
浅く埋めただけでも薬で昂った体には気持ちいい。精液をこぼさないように入れたはずの指は、次第に快感を追って蜜壺を掻き回し始める。ヴァルゼウスのものを絡ませ、ぐちゅぐちゅと泡立てながら夢中でしこりを抉った。何度も前から潮を噴き出しながら、痺れるような快感に浸る。
「エイリ、一人で愉しむつもりか?」
見ればヴァルゼウスの陰茎はまた硬く天を衝き、グロテスクなほどに血管が浮いている。腸液と精液でテラテラと光っているのが艶かしく、エイリはたまらず涎を飲み込んだ。
「あぅ、そぇ、ちょうらい」
後孔の快感とヴァルゼウスの色気にあてられて、エイリは完全に惚けてしまった。指を後孔に埋めたまま起き上がり、先端から蜜をこぼすヴァルゼウスの陰茎に口を寄せる。
「おいっ」
「ぁ、ん、ん」
舌先で蜜を掬い上げる。口の中で転がすように味わうと、まるで甘露のように甘い。もっと欲しくなったエイリは、それにしゃぶりついた。
「エイリ、っう、あ」
「は、は、うぁる、はぁっ、こぇ、もっろ、らしえ」
じゅるじゅると吸いつきながら鈴口に舌を潜り込ませる。尿道を犯す勢いで抉られ、ヴァルゼウスが逃げるように腰を引いた。
「ああ、エイリ、そんなに先端ばかり・・・っはぁ!」
逃さないとばかりに空いている手で腰を抱え込み、ぱんぱんに張った亀頭を口に含む。吸いつきながら全体を舌で覆い、小刻みに擦ると大好きな蜜がどんどん漏れ出してくることに気づいたエイリが、夢中で亀頭を愛撫し始めた。
「はっ、エイリ、ぉ゙、だめだッ」
ヴァルゼウスは敏感な先端ばかりを執拗に責められ、体をびくびくと震わせる。エイリはしつこく陰茎の先を擦りたてながらヴァルゼウスを見上げた。目を閉じて苦しげに眉根を寄せ、低い喘ぎ声をこぼしながら、腰を振りたいのを理性で堪えている。
ずっと見たかった愛しい者の乱れた姿。くらくらと目眩がするほどの興奮に、ついにエイリが喉を開けて長大なそれを飲み込んだ。突然襲ってきた待望の快感にヴァルゼウスが目を開ける。
「はぁッ、エイリ!あ゙あ゙っ」
「ご、ッ、お゙、ぉ゙、っ」
涙を浮かべたエイリが、ヴァルゼウスのそれを半分ほど飲み込んで吸い上げている。喉仏のあたりまで異様に膨らみ、先端が完全にそこまで埋まっているのがわかった。嚥下する動きできゅうきゅうと粘膜が締まり、腰の奥から熱が駆け上がってくる。
エイリは苦しいのに耐えながら必死に舌を動かし、飲み込めない根本の方を手で扱く。ぽたり、と顔に何かがかかり、そちらを見上げると、快感に耐えるヴァルゼウスの口元から涎が垂れていた。ぽたぽたとそれらがエイリの顔を汚していく。思わず息を呑むと、また喉が締まったのかヴァルゼウスが大きく呻いた。
「ああエイリ!だめだ、ッ、もう出る、はぁっ!」
「ん゙、ん゙、ぉ゙」
射精欲に支配され理性を失ったのか、ヴァルゼウスがエイリの頭を押さえつけ、がつがつと喉奥を犯す。きつく締まる喉輪で亀頭からカリ首を扱き上げ、込み上げてきた精液を食道に直接ぶちまけた。
「お゙、ん゙ん゙ッ!ゔ、ゔ、まだ出るッ、あ゙あ゙っ」
苦しさからエイリがえずくが、その動きも吐精中の陰茎にとっては強すぎる快感でしかない。どぷどぷと勢いの止まらない射精の快感に顔を歪めながら、ヴァルゼウスは腰を振り続けた。
「けほっ、ごほっ」
「すまない、大丈夫か」
「ぅ゙、ぁ」
ずる、と口内から陰茎を引き抜かれ、エイリが咽せる。ヴァルゼウスに頭を撫でられ、その手に擦り寄りながら、もっかい、と呟いた。
「ん?」
「もっかい、しゅる・・・」
そう言ってエイリがぬめった陰茎に手を伸ばす。後孔を弄っていた手も止め、両手でそれを掴んで先端を口に含んだ。
「エイリ、もういい」
「らめ、もっろ、のむ、ん、ん」
まるでおしゃぶりを離さない赤子のように、エイリがそれに吸い付く。亀頭全体をぐるぐると舐め回すと、一旦口を止めてヴァルゼウスを見上げた。
「これ、ゔぁる、しゅき?」
「ゔ、どうした」
「こぇ、しゃきっぽ、ん、ん、こやって、ぐるぐる、しゅき?」
「っ、ああ、気持ちいい、ぞ、ッ」
「んふっ」
ヴァルゼウスがそう答えると満足そうに笑い、その動きを繰り返す。次はまた鈴口に割り入って尿道を抉るようにし、ヴァルゼウスの反応を確かめている。
「こぇ、は?ん゙、ん、きもひい?」
「それ、はッ、だめだッ」
「うそらぁ、こぇも、いっぱいあまいの、でてくりゅ」
「あ゙、あ゙、ゔ!」
抉るたびにびくびくと跳ねるヴァルゼウスを面白がってか、エイリがしつこく尿道を責めた。
「エイリ、くびれのところ、も、してくれるか・・・っ」
「んぁ?ここぉ?」
ヴァルゼウスが腰を揺すりながらねだると、気をよくしたようにカリ首に舌を這わせた。特に反応のいい裏側を擦り上げながら気持ちいいかと尋ねてくる。
「いい、っ、ペニスが、溶けそうだッ」
「こぇは、こぇは?ゔぁる、ん、ん」
「ゔッ!もう少し、吸いながら、くびれを、唇で、・・・あ゙あ゙ッ!そう、だ」
「んふっ、んんっ」
エイリは、ヴァルゼウスの好きな愛撫を習得しては嬉しそうに笑った。その笑顔がたまらなく可愛くて、ヴァルゼウスは今すぐにでも後孔に突き入れて抱き潰したくなる。ただ、自身に吸い付くエイリはあまりにも楽しそうで、淫猥で、これはこれでたまらない。ヴァルゼウスはまた腰の深くから精液が昇ってくるのを感じた。
エイリはヴァルゼウスが好きだという動きを一生懸命に実践する。吸い上げながら唇でカリ首を締めながら小刻みに揺すり、舌先で亀頭や鈴口を嬲る。亀頭の刺激に耐えられずにヴァルゼウスが腰を振り始めたら、もう少し深く咥えて上下しながら裏筋を舌表面のざらざらで擦る。それを続けるとヴァルゼウスが唸りながらエイリの頭に手を置いてくれた。
「エイリ、だめだ、ッ、また、出る、ッ」
「ん゙、ん゙、らしてぇ」
手で根本を扱きあげながら、もう一度カリ首を唇で擦り立てた。じゅうじゅうと激しく吸いつき、亀頭全体を擽って射精を乞う。
「あ゙!エイリ、出る、ッ!ゔ、あ゙あ゙!ッは、は、ぉ゙ぉ゙・・・ッ」
「んっ、れたぁ!んん、う!」
さすがに量は減ったが、勢いよく精液がエイリの口内を汚していく。尿道に残った分まで吸い取り、エイリが恍惚としながらそれを舌の上で転がした。
「吐き出し、なさい・・・っ」
「やら、ゔぁるの、おいし、んーー」
ぐちゅぐちゅと下品な音をたてながら掻き混ぜ、その青臭さを味わう。大好きで愛しい番が、エイリで気持ちよくなってくれた証。すぐに飲んでしまうのはもったいなくて、少しずつ少しずつ飲み下していく。ねばつきが喉に絡むのすらも嬉しかった。
「ゔぁる、んん、すき、すき」
「私も愛している」
「うれし・・・ん、ん、せーえき、ぜんぶ、のんじゃった・・・もっかいだしてぇ」
「今日はもう終いだ」
「やらぁ!!!」
すっかり幼児返りしてしまったエイリが、じたばたと癇癪を起こす。抱きしめようと伸ばされたヴァルゼウスの手を引き、ベッドに押し倒した。
「おれ、まだ、からだあちゅい・・・おくちだめなら、こっちでのませてぇ」
ヴァルゼウスの胸に跨り、脚を広げ、後孔を掻き混ぜるのを見せつける。前立腺を捏ねると、半勃ちの陰茎がびくんびくんと上下に振られ、口淫の時からあふれていた透明な蜜がヴァルゼウスの胸に垂れた。ヴァルゼウスがそれを指で掬い上げ、舐めとっていく。ちらりと覗く赤い舌が艶かしく動くのを、エイリは恍惚とした目で見つめた。
「ゔぁる、えっちだぁ・・・おれ、もうだめ、いれる・・・」
ヴァルゼウスの陰茎は、愛しい番の卑猥な姿にまたしっかりと勃ち上がっていた。エイリは嬉しそうにそれを掴み、照準を合わせて腰を落としていく。ぬかるんだそこが長大なそれを、ぬぷぷ、と簡単に飲み込んでいった。
「はあぁ・・・っ!ん゙、あ゙あ゙ッ」
「ぅ゙、エイリっ」
結腸口に亀頭が嵌ると、二人で息を吐いてぶるりと体を震わせる。疼いてしょうがなかったそこがヴァルゼウスの熱に絡みついて離れない。
「ゔぁ、る、ッ、おれ、は、ここ、すき、ッ!ここ、ひっかけて、もらったらぁ、あ゙あ゙ッ、あたま、へんになってぇ、かってに、びくびくして、おしり、とけるの、あ゙あ゙ぁ゙っ」
「それじゃあ、たくさんひっかけて、やろうな」
今度はエイリが自分の気持ちいいところを教えるつもりらしい。結腸口にカリ首がひっかかるように、ヴァルゼウスが下から突き上げる。ぐずぐずに蕩けたその弁がカリ首に纏わりつき、ヴァルゼウスも下肢が溶けるかと思うほどの快感に襲われた。
「あ゙、ッんん!あ、ゔぁる、ちんこも、さわってい・・・っ?」
そう言うやいなや、許可をもらっていないのに陰茎に手を伸ばす。カリ首に指の輪を嵌めると、小刻みに揺すり始めた。気持ちいいのか後孔がきつく食い締まる。
「あああああ!おれも、ここ、すきぃッ!ゔぁると、おそろい・・・ッ、ん゙ー!!」
くちくちと自身の漏らした液体を絡めながら扱く。ぞわぞわと快感が背中を駆け上がり、後孔が激しく収縮しだした。
「あ゙ー!ゔぁる、おれ、いきそ、いきそぉ!あ゙あ゙んん!」
「ん゙ッ、いいぞ、私も・・・っ」
「あ、あ、あ、あ!イ゙ぐ、ゔぁる、いく、いく!ん゙あ゙ーーー!!!」
エイリが限界まで仰け反り、がくがくと体を痙攣させる。握った陰茎から申し訳程度の飛沫が飛んだ。絶頂の最中、うねる蜜壺を射精寸前の張り詰めた怒張が穿っていく。もうこれ以上ないと思っていた快感の頂点から、さらに押し上げられた。
怖いほどの絶頂を必死に乗り越えようとしている中、突然ヴァルゼウスの手のひらに陰茎の先端を包み込まれた。目を見開いてヴァルゼウスを見ると、少しだけ口の端が上がっているのが見える。エイリ歯がガチガチと鳴るのと、亀頭を擦り立てられるのは同時だった。
「ーーーッ!!!」
「はッ、締まる・・・っ!エイリ、私も、出すよ、ッ」
「ん゙ぎぃーー!あ゙ーー!!」
結腸の深くまで埋まった陰茎が激しく脈動し、温かいもので満たされていく。エイリもヴァルゼウスの手の中に潮を吐き出しながら、あふれる幸福感に突き動かされてヴァルゼウスの唇を吸った。射精の快感に呻き息を乱しながらキスに応えてくれるのが愛おしい。もっと、もっと自分を求めてほしい。枯れ果てるまで注いでほしい。エイリはうっとりとヴァルゼウスを見つめたまま、また腰を振り始めた。
「エイリ・・・っ」
「ゔぁる、もっかい・・・」
「もう、知らない、からな!」
やっとヴァルゼウスは理性を手放したらしい。がばりと起き上がってエイリを組み敷き、後孔に激しく腰を振り立てる。その目は、求めてやまなかった、エイリを喰らおうとする者の獰猛な目。それから、部屋にはただ荒い息と言葉にならない呻き声が響いていく。
泣いても叫んでも、気を失っても、その獣のような交尾は朝まで終わらなかった。
エイリが目を覚ましたのは、もう夕刻だった。
都合よく記憶を失えるわけもなく、昨夜の自分の乱れっぷりはほとんど覚えている。ふと自分の体を見ると、ヴァルゼウスが洗ってくれたのか綺麗になっていた。申し訳なく思いながらも、腹の中も綺麗にされてしまったのかと少し寂しくなる。そうしてエイリが起き上がると、こぷりと後孔から何かが漏れた。もしやと思って手で掬ってみれば、それは明らかに精液の匂いがする。
「ぁ、なんで・・・」
「掻き出そうとしたが、君が泣いて拒んだんだ」
声に振り返ると、ベッドの横にヴァルゼウスが立っていた。重い体を引きずって近寄り、ぎゅうっと抱きつく。彼の手はすぐにエイリの背中に回された。
「診てくれた医者が、後遺症などはないだろうと言っていたが、体は大丈夫か」
「う、ん。ちょっとだるいだけ」
「そうか。無理をさせたな、すまない」
フィンデルにこの姿を見られたのかと恥ずかしくなったが、それよりも。
「謝んなよ!俺が、してほしかったんだから。あんなヴァルを見られて、媚薬かけられてよかったかも、って思っちゃったぐらい」
「君は、本当に・・・」
ヴァルゼウスが呆れたような、照れたような、なんとも言えない声色で顔を俯けた。
「俺、ヴァルにがっついてもらえると、すげー嬉しいの。理性飛ぶくらい俺に欲情してほしい。気遣ってくれるのも嬉しいし、次の日の仕事のこともわかるし、優しい交尾も大好きだけど、たまに、また昨日みたいに、そういうの忘れてめちゃくちゃに抱いてほしい・・・んだけど。俺今めっちゃ恥ずいこと言ってる、やば」
途中からどんどん声が小さくなって、赤くなっているだろう顔をヴァルゼウスの肩に埋める。そんなエイリを、ヴァルゼウスが一層きつく抱きしめた。
「君のことを優しく抱きたいと思うのに、ぐちゃぐちゃに壊したくもなるんだ。昨日散々抱いておいてから、ふと君を見るとぐったりしていて・・・ついに壊してしまったかとパニックになった。それくらい、一度タガが外れてしまうと抑えが効かない。だから必死に理性を失わないようにしているんだ。君を壊すかもしれないと思うと・・・怖い」
エイリがそこにいることを確かめるように、その温かさを少しでも感じたいというように、ヴァルゼウスの手が背中に食い込む。見たことのないほど弱々しいその姿に、エイリは優しく頭を撫でた。
「俺なら大丈夫!ほら、ピンピンしてるだろ?あんだけやっても、腰ダルいなーくらいなんだから、安心して、ヴァル。壊れないから、大丈夫」
ヴァルゼウスの顔を両手で挟み、目と目を合わせてにっこりと笑う。彼は無表情のはずなのに、なんだか泣きそうに見えた。
「・・・エイリ、愛している」
「俺も!ヴァルだけ、愛してるよ」
そっと唇を重ねる。啄むようなキスと、昨日の名残が後孔からあふれて太ももを伝う感覚に、エイリの意識が淡いピンク色に染まった。
「じゃあもう、君を好きにしていいんだな」
「ふぁ?」
「エイリ、今から抱く」
「え、ぇ?」
ヴァルゼウスが戸惑うエイリを抱え上げ、まだ温かいままのベッドに押し倒す。膝を割り体をすべりこませた後、もう一度キスが始まると、エイリが慌てて藻搔いた。
「ん゙、ん゙!ヴァル、今は、ッ、あ゙っ?!」
「もう我慢しないと約束する。はぁッ、まだ柔らかいな。このまま入れるぞ」
「やッ、ヴァル、待って、あ゙、あ゙、ん゙ん゙ん゙!」
精液でぬかるむ後孔に腰を突き込まれつつ、エイリはほんの少しだけ「早まったかも」と思っていた。どうせ一回では済まないわけで、明日は間違いなく立ち上がれないだろう。下半身の感覚を失い始めたのを感じながら、ザルヴァンにまた怒られるなぁ、なんてぼんやりと考えていると、「他の男のことを考えるな」と一層激しく責め立てられた。
エイリが「たまには我慢して」とお願いする日も遠くない。
番外編「獣の眼差し」、終わり。
セラフィエルとガルファ、アザリエルは、「精をください、大天使様!」というお話に出てくる三人です。アザリエルには毎度こういう立ち位置になってもらって申し訳ないと思っています。
セラフィエルとガルファの馴れ初めなど、気になる方はぜひそちらもご覧くださいませ。
番外編までお読みくださり、ありがとうございました。
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