25 / 90
第二章その2 ~助けに来たわ!~ 怒涛の宮崎撤退編
冥界から来た火の車1
しおりを挟む
「車両班、火車だっ! 止まったら終わりだ、何でもいいから突っ走れ!」
「りょ、了解!!!」
壮太の通信を受け、全ての車両がお構い無しにアクセルを踏み込む。
今までは負傷者や路面状況に配慮した速度だったが、火車が出たとあっては、逃げ切らなければ意味が無い。
強化タイヤから青い火花が飛び散り、後方の闇に吸い込まれていく。
車体が激しく上下して、荷台に固定してあった人型重機の予備バッテリーが外れ飛んだが、今はそんな事に構っていられないのだ。
「もっと飛ばせねえのか!?」
徐々に迫り来る炎を睨みながら、壮太は車両班に叫ぶ。
画面に映った車両班は、運転の衝撃に耐えながらも怒鳴り返した。
「精一杯です志布志さん! 路面が悪くて、これ以上は転倒します!」
「分かった、その調子で頼む! こっちは俺に任せとけ!」
壮太は機体を操作し、再びアサルトガンを構える。
目をやると、闇から迫る赤い炎は、ますます激しく燃え上がっていた。彼我の距離は100メートルも無いだろう。
「食らいやがれっ!!!」
刹那、壮太の重機が射撃を開始し、青い光弾が唸りを上げて殺到した。
たちまち視界が光と硝煙に塗れていく。
画面に映る残弾表示がみるみる減っていくが、火車は赤い光の幾何学模様……つまり電磁シールドを発生させ、こちらの射撃を弾いていた。
火車は次第に近付いて、燃え上がる炎の中に、人型のシルエットが見えた。
「くそっ、止まらねえ!」
だが壮太が悲壮な叫びを上げたその時だった。
「壮太、衝撃備えて! 投擲いくわ!」
湯香里が叫ぶと同時に、彼女の乗る人型重機が円盤状の何かを振りかぶった。
湯香里機がそれを投げつけると、円盤の周囲に青い光の輪が駆け巡った。
次の瞬間、猛烈な光と爆風が発生。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
壮太と湯香里の機体は、荷台に背中から叩き付けられていた。
大型の餓霊を倒すために開発された、大威力の投擲地雷が炸裂したのである。
車両は爆風を受けて蛇行しながらも、なんとか転倒を免れていた。
「……ご、ごめん壮太。さすが新型の投擲地雷ね……こんな近くで使うもんじゃないかも……」
湯香里の言葉通り、遠ざかる路面は大量の炎と煙で覆われている。
壮太は隊員達に連絡を取った。
「……ま、まあちょっとは危なかったけど、湯香里のおかげで助かったぜ。お前ら無事か?」
だが奇妙な事に、画面に映る他の隊員……晶や八千穂、キャシーやヘンダーソンの表情は強張っていた。
「……どうしたみんな?」
壮太が不思議そうに尋ねた時、晶が珍しく大声で叫んだ。
「違う壮太っ、来るぞっ!!!」
次の瞬間、道路脇、左斜め後方の廃墟が粉々に吹き飛び、巨体が姿を現した。
それは一言で言えば、バスの車体にとり憑いた怪物だった。
天井を突き破って伸びるのは、鎧武者のごとき人型の上半身。
4本の腕は長く、それぞれ剣のような武器を手にしていたし、車体下部から生えた足は、鳥喰い蜘蛛のように禍々しい。
前方の運転席部分の割れ窓からは、巨大な口がせり出していて、獲物にかぶり付こうとするサメのように見えた。
そして鎧や兜の隙間から……いや、車体の窓や底部からも、激しい炎が漏れ出して、異形の巨体を照らしていたのだ。
これこそが、九州で特1級の警戒指定をされた高速型大型餓霊『火車』である。
速度と火力、高い知能を兼ね備えた難敵で、挟み撃ちや迂回、仲間を指揮しての集団戦術も使いこなす。
こいつが避難する車列に先回りする事で、大勢の人が犠牲になったのだ。
火車は道路に進路を戻すと、そのままこちらを追いかけてくる。
壮太は素早く機体を起こし、立て続けに射撃を叩き込んだ。
「ヤドカリ野郎が、人様の車で何やってんだよ!」
だが攻撃は赤い光ではじかれ、空しく火花が飛ぶばかりだ。
画面上で晶が訴えかけてくる。
「壮太、そろそろ道幅が広がる、火力を集中させよう! 車両班、横列配置で進路を塞げ! 並ばれたらおしまいだぞ!」
晶の言葉通り、ようやく道幅の広い新区画に差し掛かったため、3台の輸送車両は並走を開始する。
火車の進路を塞ぎつつ、光を虫眼鏡で集めるように、集中砲火を行うのだ。
更に隊員達は、壮太が指示せずとも銃の属性添加機を調整していた。
連射モードから一発の威力を上げた単発モードに切り替えて、火車の魔法防御を貫くためだ。
やがて対戦車ライフルのような轟音と共に、弾丸が発射された。
先ほどより遥かに威力を増した攻撃が殺到し、さしもの火車の防御シールド……光の幾何学模様も形状が乱れたのだ。
火車は苦しむように上半身の頭を背けた。
恐らくここが好機、仕留める最大のチャンスなのだろう。
「りょ、了解!!!」
壮太の通信を受け、全ての車両がお構い無しにアクセルを踏み込む。
今までは負傷者や路面状況に配慮した速度だったが、火車が出たとあっては、逃げ切らなければ意味が無い。
強化タイヤから青い火花が飛び散り、後方の闇に吸い込まれていく。
車体が激しく上下して、荷台に固定してあった人型重機の予備バッテリーが外れ飛んだが、今はそんな事に構っていられないのだ。
「もっと飛ばせねえのか!?」
徐々に迫り来る炎を睨みながら、壮太は車両班に叫ぶ。
画面に映った車両班は、運転の衝撃に耐えながらも怒鳴り返した。
「精一杯です志布志さん! 路面が悪くて、これ以上は転倒します!」
「分かった、その調子で頼む! こっちは俺に任せとけ!」
壮太は機体を操作し、再びアサルトガンを構える。
目をやると、闇から迫る赤い炎は、ますます激しく燃え上がっていた。彼我の距離は100メートルも無いだろう。
「食らいやがれっ!!!」
刹那、壮太の重機が射撃を開始し、青い光弾が唸りを上げて殺到した。
たちまち視界が光と硝煙に塗れていく。
画面に映る残弾表示がみるみる減っていくが、火車は赤い光の幾何学模様……つまり電磁シールドを発生させ、こちらの射撃を弾いていた。
火車は次第に近付いて、燃え上がる炎の中に、人型のシルエットが見えた。
「くそっ、止まらねえ!」
だが壮太が悲壮な叫びを上げたその時だった。
「壮太、衝撃備えて! 投擲いくわ!」
湯香里が叫ぶと同時に、彼女の乗る人型重機が円盤状の何かを振りかぶった。
湯香里機がそれを投げつけると、円盤の周囲に青い光の輪が駆け巡った。
次の瞬間、猛烈な光と爆風が発生。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
壮太と湯香里の機体は、荷台に背中から叩き付けられていた。
大型の餓霊を倒すために開発された、大威力の投擲地雷が炸裂したのである。
車両は爆風を受けて蛇行しながらも、なんとか転倒を免れていた。
「……ご、ごめん壮太。さすが新型の投擲地雷ね……こんな近くで使うもんじゃないかも……」
湯香里の言葉通り、遠ざかる路面は大量の炎と煙で覆われている。
壮太は隊員達に連絡を取った。
「……ま、まあちょっとは危なかったけど、湯香里のおかげで助かったぜ。お前ら無事か?」
だが奇妙な事に、画面に映る他の隊員……晶や八千穂、キャシーやヘンダーソンの表情は強張っていた。
「……どうしたみんな?」
壮太が不思議そうに尋ねた時、晶が珍しく大声で叫んだ。
「違う壮太っ、来るぞっ!!!」
次の瞬間、道路脇、左斜め後方の廃墟が粉々に吹き飛び、巨体が姿を現した。
それは一言で言えば、バスの車体にとり憑いた怪物だった。
天井を突き破って伸びるのは、鎧武者のごとき人型の上半身。
4本の腕は長く、それぞれ剣のような武器を手にしていたし、車体下部から生えた足は、鳥喰い蜘蛛のように禍々しい。
前方の運転席部分の割れ窓からは、巨大な口がせり出していて、獲物にかぶり付こうとするサメのように見えた。
そして鎧や兜の隙間から……いや、車体の窓や底部からも、激しい炎が漏れ出して、異形の巨体を照らしていたのだ。
これこそが、九州で特1級の警戒指定をされた高速型大型餓霊『火車』である。
速度と火力、高い知能を兼ね備えた難敵で、挟み撃ちや迂回、仲間を指揮しての集団戦術も使いこなす。
こいつが避難する車列に先回りする事で、大勢の人が犠牲になったのだ。
火車は道路に進路を戻すと、そのままこちらを追いかけてくる。
壮太は素早く機体を起こし、立て続けに射撃を叩き込んだ。
「ヤドカリ野郎が、人様の車で何やってんだよ!」
だが攻撃は赤い光ではじかれ、空しく火花が飛ぶばかりだ。
画面上で晶が訴えかけてくる。
「壮太、そろそろ道幅が広がる、火力を集中させよう! 車両班、横列配置で進路を塞げ! 並ばれたらおしまいだぞ!」
晶の言葉通り、ようやく道幅の広い新区画に差し掛かったため、3台の輸送車両は並走を開始する。
火車の進路を塞ぎつつ、光を虫眼鏡で集めるように、集中砲火を行うのだ。
更に隊員達は、壮太が指示せずとも銃の属性添加機を調整していた。
連射モードから一発の威力を上げた単発モードに切り替えて、火車の魔法防御を貫くためだ。
やがて対戦車ライフルのような轟音と共に、弾丸が発射された。
先ほどより遥かに威力を増した攻撃が殺到し、さしもの火車の防御シールド……光の幾何学模様も形状が乱れたのだ。
火車は苦しむように上半身の頭を背けた。
恐らくここが好機、仕留める最大のチャンスなのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる