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第二章その5 ~絶対守るわ!~ 熱血の鹿児島防衛編
城喰いを倒せ!
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逃げ惑う敵を切り裂き、また撃ち抜き。
誠と鶴の乗る人型重機・心神は駆け抜ける。
目指すは城喰い、ただ一点。
壮太達が時間を稼いでいる間に、あの怪物を仕留めねばならないのだ。
分厚い山椒魚のような姿。あちこちから伸びる角のような突起。
無数の足で大地を踏みしめ、城喰いは尚も鹿児島へ迫ろうとしていた。
恐らく城喰いの守り手だろう、強力な餓霊が立ちふさがるが、誠は先の鳳の戦いを思い出していた。戦いの中、一瞬で複雑な電磁式の操作を行う鳳の姿をだ。
誠は敵の攻撃をぎりぎりですり抜け、避け様に強化刀で切り付ける。
同時に制御板を指で叩き、こちらの刀の属性添加機を微妙に調整。
相手の電磁式の構造を見極め、最適な攻撃を、最適な場所に、最適なタイミングで行うのだ。
結果的に立ちはだかる強力な敵のことごとくを、一瞬で切り伏せていく。
「凄いわ黒鷹!」
喜ぶ鶴に、誠は答える。
「鳳さんの真似だよ!」
「よーし、だったら私も!」
鶴が目を閉じると、その全身を青い光が覆っていく。
同時に機体の強化刀にも光が宿った。いつにも増して激しい輝きだ。
誠は機体を高く躍らせる。
城喰いはそれに気付き、頭をもたげてこちらに咆えた。
普通なら、それだけで吹き飛ばされそうな衝撃波が押し寄せたが、誠は直感で避けなかった。
予想通り、刀の帯びる物凄いエネルギーが、城喰いの衝撃派を切り裂いていた。
心神はそのまま猛スピードで降下し、城喰いの背中へと切り込む。
水晶のような鋭い角、そして硬い外皮を切り裂かれ、城喰いは大きく身をのけぞらせた。
光のオタマジャクシが逃げ出すように、無数の邪霊が飛び出してくるが、城喰いは尚も足を踏み出した。
普通なら致命傷となる傷を負っても活動を続ける。さすがに集合霊というところか。
「さすがにしぶとい……けど!」
誠は呟いて確認するが、機体の持つ強化刀の光は、衰える事なく輝き続けている。
威力、そして持続時間ともに、今までの鶴の術とはケタ外れだった。
誠は機体の翼に慣性力を満たした。
城喰いの背中に突き立てられた刀を握り、そのまま一気に加速する。
「おおおおおおっ!!!!!」
猛烈な体感重力が誠を襲い、全身の血が後ろに引っ張られるかのようだった。
モニターを火花が埋め尽くし、光のオタマジャクシのような邪霊が、もの凄い勢いで放出されていく。
巨体の背中を一直線に切り裂かれ、城喰いの反魂の術が崩れていくのだ。
「これだけ裂ければ、消えるだろっ!!!」
不意に刀の手ごたえが消え、誠の機体はつんのめった。
城喰いの背中を通り抜けたのだ。
着地しながら振り返ると、城喰いは赤い光に包まれていた。
全身から無数の邪霊を吐き出した城喰いは、やがてあっけなく溶け落ちていったのだ。
いくら海水で弱っているとは言え、1500メートル近い集合型餓霊を、一瞬で葬り去ったのだ。
敵軍は最早総崩れとなり、僅かに残った連中が逃げ帰っていく。
「てか、すごいなヒメ子。刀の術、滅茶苦茶威力上がってないか?」
「でしょう? こないだの戦いを見てやってみたの。術ってあんなふうに使うんだって分かったから。私はやれば出来る子なのよ?」
鶴は嬉しそうに答えるが、そこで操縦席に小さな光が輝いた。
光の中から現れたのは、狛犬のコマである。
コマは鶴の肩に着地して前足を上げた。
「がんばったね鶴、黒鷹。鹿児島の方も大丈夫だよ。神使のみんなと守ってたけど、戦いの間、魔族もやって来なかったしさ」
鶴が神器のタブレットを操作し、みんなの様子を映した。
神使達は勝利の喜びに飛び跳ね、避難所の人々と一緒に叫んでいる。
画面には白衣のおばさん……宗像さんも映り、誠達をねぎらってくれた。
「あんた達、ほんとに頑張ったね! よくやったよ! 鶴ちゃんも、誠君もありがとね!」
「あ、いえ、こっちの皆さんのおかげなんで……」
誠は恐縮するが、丁度画面には、四国の第5船団の情報が入ってきた。
敵の大軍勢と接触した第5船団は、激戦の末にこれを撃退したようだ。
「良かった。第5船団も……隊のみんなも無事か……!」
誠が胸を撫で下ろすと、画面に天草が映し出された。
天草は感極まっているのか、なかなか言葉が出てこないようだ。
「……………ありがとう……!」
天草はようやくそれだけ言うが、鶴は天草に語りかけた。
「それじゃーあまちゃん、感動のところを悪いけど、大将の役目を果たさなきゃ」
誠もそこで気が付いた。
「そっか、勝ち鬨だ」
「え? え?」
誠達の期待の視線を受け、天草は戸惑っている。
「……だ、だって今回は、あなた達やみんなの頑張りだし、私は別に……」
「いいじゃないあまちゃん。私達はこっちじゃお客だもの。勝ち鬨はこっちの将がやるべきだわ」
画面には志布志隊の面々、その他の部隊の指揮官達も映し出される。
「そーだぜ司令、ここはバシッと決めて欲しいぜ!」
「お願いです、天草司令!」
「司令がやってください!」
人々は口々に天草に訴えかけ、天草は赤い顔で頷いた。
「……わ、分かったわ。それでは、いきます」
天草は少し緊張した様子で、右手の拳を握り締める。
「かっ、鹿児島防衛戦の、勝利を祝って、」
強く握られた拳が、高く高く突き上げられる。
『えいっ、えいっ、応っ!!!!!』
轟くような勝ち鬨が、南国の城砦都市に響き渡った。
勝ち鬨は幾度と無く続き、対岸にそびえる桜島までが震えているようだった。
「さあ、あとはシオヒルタマで、塩を全部海に戻して、と」
ひとしきり勝利の余韻にひたると、鶴は輝くオレンジの珠に念じる。
するとたちまち、地面から乾いた塩が浮き上がってきた。
塩はバレーボール程の大きさに固まり、ニューと手足を生やすと、自らの足で海まで戻っていった。これで塩害の心配もないはずだ。
「相変わらず無茶苦茶だよな……」
無数の塩ボールが歩く様にドン引きする誠だったが、そこでモニターに、先ほどの戦闘の映像を映し出した。
映像は、餓霊の軍勢の動きを映したものである。
上流からの水が届くより早く、餓霊の軍勢は動いていた。姿勢を低くし、慣性制御の電磁式を張り巡らせて。
「こいつら……水が到達する前に構えてる……」
それはつまり、こちらの作戦を事前に知っていたという事だ。
以前、四国の餓霊が人に化けて潜り込み、人間側の作戦を知っていた事があった。
そのため今回の作戦の全貌も、念のため天草を始めとするごく少数にしか知らせていなかったのだ。
「やっぱりこっちにも……内通者がいるのか……?」
誠は唇をかみ締めた。
(でも、どこに? ヒメ子も何も言わなかったし、神使もあれだけ駆け回って調べてるのに……見つからないなんて事があるのか……?)
しばし後、例の石造りの地下空間である。
帰還した途端、魔族どもの鎧は、たまりかねたように膝をついた。
鎧の胸部が輝くと、乗り手の魔族は次々床に降り立っていく。
よほど疲弊しているのか、彼らは荒い呼吸でへたり込んだ。
先頭に立つ若い男……つまり焔は、少し苛立った表情で部下達に言う。
「お前ら、よく生きて帰った。しばらく休んどけ。怪我人がいたら報告しろ」
部下達は一礼して立ち去っていく。
焔はその姿を見送ると、吐き捨てるように言った。
「……くそったれ、まさかあそこから攻め損じるなんてな……!」
「……由々しき失態ね」
隣に立つ燐火も、厳しい顔で同意した。
「それにしても……あんたの手駒。ダムの件は知ってたけど、海水については何も言わなかったわね?」
「……確かにそうだな。内通がばれてるって事か?」
「かも知れないわね。切り札を教えられてなかったとすれば、そうとしか考えられないけど」
「……だけどありゃあ、御前様の術を使った駒だぜ。そう簡単に見つかるかよ」
「はっきりバレてはいなくても、何かいるかも、とは思ってるんじゃないかしら。だから肝心な事は言わずに…………」
燐火はそこで唐突に言葉を止めた。
こちらに歩み寄る長身の男、不知火に気付いたからだ。
てっきり罵倒されるのかと思い、身を硬くする2人だったが、不知火は静かに口を開いた。
「………………とうとう御前様がご顕現される。受肉され、じきじきにお助け下さるそうだ」
『ご、御前様が生身になられるのですかっ!?』
焔と燐火は同時に叫んだ。
不知火は頷き、淡々と言葉を続けた。
「………………阿蘇の龍穴を使い、その力で仮のお体を作られるのだ。短時間であれば動けるとのお言葉だが……それがどれだけ御前様に負担をかけるか、分かっているだろうな……?」
焔と燐火は片膝をつき、胸に手を当てて頭を下げる。
「もちろんです、不知火様!」
「御前様のご恩に報いるためにも、次は必ず達成いたしますわ!」
2人の言葉は岩肌に木霊したが、その音が消えるのも待たず、別の声が辺りに響いた。
それは女の……しかも呻き声のようだった。
地の底から聞こえる苦悶の声と共に、岩肌が何度も軋んだ。
あの城喰いの立てた足音より更に激しく、大地そのものが怒っているかのようだった。
誠と鶴の乗る人型重機・心神は駆け抜ける。
目指すは城喰い、ただ一点。
壮太達が時間を稼いでいる間に、あの怪物を仕留めねばならないのだ。
分厚い山椒魚のような姿。あちこちから伸びる角のような突起。
無数の足で大地を踏みしめ、城喰いは尚も鹿児島へ迫ろうとしていた。
恐らく城喰いの守り手だろう、強力な餓霊が立ちふさがるが、誠は先の鳳の戦いを思い出していた。戦いの中、一瞬で複雑な電磁式の操作を行う鳳の姿をだ。
誠は敵の攻撃をぎりぎりですり抜け、避け様に強化刀で切り付ける。
同時に制御板を指で叩き、こちらの刀の属性添加機を微妙に調整。
相手の電磁式の構造を見極め、最適な攻撃を、最適な場所に、最適なタイミングで行うのだ。
結果的に立ちはだかる強力な敵のことごとくを、一瞬で切り伏せていく。
「凄いわ黒鷹!」
喜ぶ鶴に、誠は答える。
「鳳さんの真似だよ!」
「よーし、だったら私も!」
鶴が目を閉じると、その全身を青い光が覆っていく。
同時に機体の強化刀にも光が宿った。いつにも増して激しい輝きだ。
誠は機体を高く躍らせる。
城喰いはそれに気付き、頭をもたげてこちらに咆えた。
普通なら、それだけで吹き飛ばされそうな衝撃波が押し寄せたが、誠は直感で避けなかった。
予想通り、刀の帯びる物凄いエネルギーが、城喰いの衝撃派を切り裂いていた。
心神はそのまま猛スピードで降下し、城喰いの背中へと切り込む。
水晶のような鋭い角、そして硬い外皮を切り裂かれ、城喰いは大きく身をのけぞらせた。
光のオタマジャクシが逃げ出すように、無数の邪霊が飛び出してくるが、城喰いは尚も足を踏み出した。
普通なら致命傷となる傷を負っても活動を続ける。さすがに集合霊というところか。
「さすがにしぶとい……けど!」
誠は呟いて確認するが、機体の持つ強化刀の光は、衰える事なく輝き続けている。
威力、そして持続時間ともに、今までの鶴の術とはケタ外れだった。
誠は機体の翼に慣性力を満たした。
城喰いの背中に突き立てられた刀を握り、そのまま一気に加速する。
「おおおおおおっ!!!!!」
猛烈な体感重力が誠を襲い、全身の血が後ろに引っ張られるかのようだった。
モニターを火花が埋め尽くし、光のオタマジャクシのような邪霊が、もの凄い勢いで放出されていく。
巨体の背中を一直線に切り裂かれ、城喰いの反魂の術が崩れていくのだ。
「これだけ裂ければ、消えるだろっ!!!」
不意に刀の手ごたえが消え、誠の機体はつんのめった。
城喰いの背中を通り抜けたのだ。
着地しながら振り返ると、城喰いは赤い光に包まれていた。
全身から無数の邪霊を吐き出した城喰いは、やがてあっけなく溶け落ちていったのだ。
いくら海水で弱っているとは言え、1500メートル近い集合型餓霊を、一瞬で葬り去ったのだ。
敵軍は最早総崩れとなり、僅かに残った連中が逃げ帰っていく。
「てか、すごいなヒメ子。刀の術、滅茶苦茶威力上がってないか?」
「でしょう? こないだの戦いを見てやってみたの。術ってあんなふうに使うんだって分かったから。私はやれば出来る子なのよ?」
鶴は嬉しそうに答えるが、そこで操縦席に小さな光が輝いた。
光の中から現れたのは、狛犬のコマである。
コマは鶴の肩に着地して前足を上げた。
「がんばったね鶴、黒鷹。鹿児島の方も大丈夫だよ。神使のみんなと守ってたけど、戦いの間、魔族もやって来なかったしさ」
鶴が神器のタブレットを操作し、みんなの様子を映した。
神使達は勝利の喜びに飛び跳ね、避難所の人々と一緒に叫んでいる。
画面には白衣のおばさん……宗像さんも映り、誠達をねぎらってくれた。
「あんた達、ほんとに頑張ったね! よくやったよ! 鶴ちゃんも、誠君もありがとね!」
「あ、いえ、こっちの皆さんのおかげなんで……」
誠は恐縮するが、丁度画面には、四国の第5船団の情報が入ってきた。
敵の大軍勢と接触した第5船団は、激戦の末にこれを撃退したようだ。
「良かった。第5船団も……隊のみんなも無事か……!」
誠が胸を撫で下ろすと、画面に天草が映し出された。
天草は感極まっているのか、なかなか言葉が出てこないようだ。
「……………ありがとう……!」
天草はようやくそれだけ言うが、鶴は天草に語りかけた。
「それじゃーあまちゃん、感動のところを悪いけど、大将の役目を果たさなきゃ」
誠もそこで気が付いた。
「そっか、勝ち鬨だ」
「え? え?」
誠達の期待の視線を受け、天草は戸惑っている。
「……だ、だって今回は、あなた達やみんなの頑張りだし、私は別に……」
「いいじゃないあまちゃん。私達はこっちじゃお客だもの。勝ち鬨はこっちの将がやるべきだわ」
画面には志布志隊の面々、その他の部隊の指揮官達も映し出される。
「そーだぜ司令、ここはバシッと決めて欲しいぜ!」
「お願いです、天草司令!」
「司令がやってください!」
人々は口々に天草に訴えかけ、天草は赤い顔で頷いた。
「……わ、分かったわ。それでは、いきます」
天草は少し緊張した様子で、右手の拳を握り締める。
「かっ、鹿児島防衛戦の、勝利を祝って、」
強く握られた拳が、高く高く突き上げられる。
『えいっ、えいっ、応っ!!!!!』
轟くような勝ち鬨が、南国の城砦都市に響き渡った。
勝ち鬨は幾度と無く続き、対岸にそびえる桜島までが震えているようだった。
「さあ、あとはシオヒルタマで、塩を全部海に戻して、と」
ひとしきり勝利の余韻にひたると、鶴は輝くオレンジの珠に念じる。
するとたちまち、地面から乾いた塩が浮き上がってきた。
塩はバレーボール程の大きさに固まり、ニューと手足を生やすと、自らの足で海まで戻っていった。これで塩害の心配もないはずだ。
「相変わらず無茶苦茶だよな……」
無数の塩ボールが歩く様にドン引きする誠だったが、そこでモニターに、先ほどの戦闘の映像を映し出した。
映像は、餓霊の軍勢の動きを映したものである。
上流からの水が届くより早く、餓霊の軍勢は動いていた。姿勢を低くし、慣性制御の電磁式を張り巡らせて。
「こいつら……水が到達する前に構えてる……」
それはつまり、こちらの作戦を事前に知っていたという事だ。
以前、四国の餓霊が人に化けて潜り込み、人間側の作戦を知っていた事があった。
そのため今回の作戦の全貌も、念のため天草を始めとするごく少数にしか知らせていなかったのだ。
「やっぱりこっちにも……内通者がいるのか……?」
誠は唇をかみ締めた。
(でも、どこに? ヒメ子も何も言わなかったし、神使もあれだけ駆け回って調べてるのに……見つからないなんて事があるのか……?)
しばし後、例の石造りの地下空間である。
帰還した途端、魔族どもの鎧は、たまりかねたように膝をついた。
鎧の胸部が輝くと、乗り手の魔族は次々床に降り立っていく。
よほど疲弊しているのか、彼らは荒い呼吸でへたり込んだ。
先頭に立つ若い男……つまり焔は、少し苛立った表情で部下達に言う。
「お前ら、よく生きて帰った。しばらく休んどけ。怪我人がいたら報告しろ」
部下達は一礼して立ち去っていく。
焔はその姿を見送ると、吐き捨てるように言った。
「……くそったれ、まさかあそこから攻め損じるなんてな……!」
「……由々しき失態ね」
隣に立つ燐火も、厳しい顔で同意した。
「それにしても……あんたの手駒。ダムの件は知ってたけど、海水については何も言わなかったわね?」
「……確かにそうだな。内通がばれてるって事か?」
「かも知れないわね。切り札を教えられてなかったとすれば、そうとしか考えられないけど」
「……だけどありゃあ、御前様の術を使った駒だぜ。そう簡単に見つかるかよ」
「はっきりバレてはいなくても、何かいるかも、とは思ってるんじゃないかしら。だから肝心な事は言わずに…………」
燐火はそこで唐突に言葉を止めた。
こちらに歩み寄る長身の男、不知火に気付いたからだ。
てっきり罵倒されるのかと思い、身を硬くする2人だったが、不知火は静かに口を開いた。
「………………とうとう御前様がご顕現される。受肉され、じきじきにお助け下さるそうだ」
『ご、御前様が生身になられるのですかっ!?』
焔と燐火は同時に叫んだ。
不知火は頷き、淡々と言葉を続けた。
「………………阿蘇の龍穴を使い、その力で仮のお体を作られるのだ。短時間であれば動けるとのお言葉だが……それがどれだけ御前様に負担をかけるか、分かっているだろうな……?」
焔と燐火は片膝をつき、胸に手を当てて頭を下げる。
「もちろんです、不知火様!」
「御前様のご恩に報いるためにも、次は必ず達成いたしますわ!」
2人の言葉は岩肌に木霊したが、その音が消えるのも待たず、別の声が辺りに響いた。
それは女の……しかも呻き声のようだった。
地の底から聞こえる苦悶の声と共に、岩肌が何度も軋んだ。
あの城喰いの立てた足音より更に激しく、大地そのものが怒っているかのようだった。
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