ぽっちゃり童貞の俺、ガチムチスパダリに変身してかわいい上司(男)をお嫁さんにする〜一緒に生活するダイエットから目指す新婚生活〜

あさ田ぱん

文字の大きさ
16 / 25

16.頭痛の種

しおりを挟む
 俺は吐き気で目を覚ました。なんとかぎりぎり、トイレで吐くことができたが…危なかったー!一通り吐いて、腕時計を確認すると想像よりも時間が経っていない。まだ深夜である。
 あ~最悪…。胃が痛くて、おれは項垂れた。

 トイレで臥せっていると、足音がする。しまった。ここ、牧くんの部屋だった。

「高木くん、大丈夫?」

 牧くんは便器にうずくまる俺の背中をさすった。優しい手のひら。俺は思わず涙が出てしまった。だって…俺のこと、新田を巡る恋敵だと思ってんだろ?それなのに優しくして、なんなんだよ、もう…!俺は思わず手を振り払った。

「余計、気持ち悪かった?…水は飲めそう?」
 
 気持ち悪くない…そうじゃない…。

「…つらくて…。すみません… 」
「うん…。高木くんダイエットもしてたから、胃が弱ってるのかもね?一回ダイエットはお休みしてみたら?」
 いや、だからそういうことじゃない。それに…。

「ダイエットやめたら俺、またすぐアンパンマンになっちゃいます…。」
「そんな…。少しだったら大丈夫だよ。ダイエット中はカロリー制限を身体に慣れさせないために定期的に食べる日を作った方が良いんだって。それを“チートデイ”って言うらしいよ 」
「へえ…それって、食べてすぐ寝てもいいんですか?」
「いいんじゃない?詳しくはないけど… 」
「牧さんも、付き合ってくれます?」
「うん。いいよ 」
 牧くんは俺に水を手渡して、笑った。
 本当にそれが出来たら幸せだ。好きな人とご飯をお腹いっぱい食べて、そのまますぐ眠りたい。俺の夢、叶っちゃう…?

 その後調子に乗った俺は牧くんに水を飲ませてもらい、布団に寝かせてもらい、ついでに牧くんに絡むふりして牧くんを抱きしめながら眠った。


 翌朝俺は奇跡的に出勤した。
 絶対起きられないと思ったのに…ひとえに俺の嫁、牧くんのファインプレーである。俺を手厚く看護した上、朝起こしてくれて水、胃薬…。
 もーなんなの?!結婚して!!

 しかもお昼休み…いつも昼は食べない牧くんから昼食を食べようと連絡がきた。俺たちは社員食堂に行ったのだが…。

「高木くん、今週末空いてる?」
「空いてます 」

 牧くんの質問に俺は食い気味で答えた。言わずもがな、牧くんの誘いなら空いてなくても空けるつもりなのだから。

「じゃ、チートデイ、今週末にしよう!いいところ見つけたんだ!」
「いいところ?」
「うん。たくさん食べてすぐ眠れて、あとストリーミングメディアプレーヤーも無料貸し出しで大画面テレビにカラオケ…値段も安いんだよ!ここ!どう?」
  牧くんはメッセージアプリでリンクを送ったようだ。俺にリンクを開くよう促す。おれはメッセージのリンクをタップして、驚愕………! 

「女子じゃないけど、いいよね?」
「は、はぁ…………。」

 俺はすぐに返事ができなかった。タップした先には、なんと”ラブホ女子会プラン”の文字が躍る…。フードメニューも充実、ジェットバスあり、だって。何それ、何目的?!俺たち男だけど女子会?!

「あ、嫌だった?」
 牧くんはしゅん、として俺を見た。ちょっ、何その反応?!
「え、あーーーいや、嫌じゃないです!面白そうではあります!」
「だよね?!大きいジェットバスも付いてるんだよ。それでこの値段、破格だよね?!すごいよねー、知ってた?ラブホ女子会って!」

  俺は絶句した。ここは社員食堂だ。周りの人に聞かれたらどーすんだ?!保守派のお膝元、金融機関の社員食堂inジャパンですよ?!お願いたがらもっと小声で話して!

 牧くんは、やましい気持ちは特にないのか、堂々と”ラブホ女子会プラン”について説明しながらテキパキと予約を入れてしまった。
 あなたは何ともなくても…牧くん、一緒に行く男は…やましいことだらけだよ!!危ないよ!?分かってる?!いや分かってたらラブホ女子会プランなんか予約しないな!男は狼なのよっ、気をつけなさい!!

 てゆーか、大丈夫か、俺の理性?!



 ーー試されている…。

 牧くんと別れて自分のフロアに戻った。二日酔いで今日は頭が痛いから事務仕事だけするつもりで。席に着いたとたん、内線がけたたましく鳴った。俺が戻ったの、見てた?!ちょ……、怖いんだけど…。

 電話の相手は総務部、であった。



「高木くん、はいこれ。」
 俺を内線で呼び出したのは総務部の長谷川さんだった。長谷川さんは真面目そうな黒髪ストレートの女子で、俺と同期である。
 長谷川さんが差し出した用紙を見て、本日二度目…驚愕~からの絶句。でもこれは聞かなければならない!俺は声を絞り出した。

「退寮勧告…って…。まだ俺、三十歳になってないけど?!」
「半年前に通知しないといけない決まりだから。あと半年で住むところ決めてください。実家や持ち家でなければ補助がでますから、その申請についてはこちらです 」
 理解が追い付かない俺に、長谷川さんは容赦なく次々に書類を手渡してくる。まだ寮を出ていきたくない。もっと、牧くんと一緒にいたいんだ…。
「結婚すれば、社宅に移ることもできますよ?だからこのタイミングで決める人、多いですね。」
「相手がいればそうしてます 」
「誰もいないんですか?同じ部署の人とうわさになってたりしてるけど… 」
 長谷川さんはなんとなく赤くなっている。それになんだ、同じ部署って…。違う、俺は…。

「誰もいません… 」

 そうなのだ。思い人は俺を同性の友達としか思っていなくて、ラブホ男子会を開催しようとしているのだから。

 頭痛はひどくなるばかりだ。

 しかし寮に帰ったらまた牧くんにかいがいしく世話をやかれいつの間にか頭痛は治っていた。頭痛を起こすのも治すのも牧くんだ。俺は今日も牧くんの部屋で寝た。でも、酔っていなかったからどさくさに紛れて牧くんを抱きしめることは出来なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

処理中です...