【完結】竜王陛下に囁かれて、異世界で恋人契約結ばれました。~元社畜秘書、今では夜の寵愛係!?~

リリーブルー

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3.終わらない夜と覚醒の胎動

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「――っ、ん、く、……っ」

律の唇が震え、か細い喘ぎが部屋の中に広がる。
ゼルに貫かれた身体は、ただ快楽に翻弄されていたわけではなかった。
それは“魔力との融合”だった。

ゼル=ドラグリスの魔力は、竜王の証。
それを身体に受け入れるということは、一個人として“存在変質”を起こすに等しい。

「律……感じているな……。お前の核が、我の魔力と混ざり合っていく……」

「魔力が……? な、なにか、お腹の奥が……熱くて……っ」

(この声……知ってる)

ゼルが名を呼んだ瞬間、胸の奥が強く疼いた。
あの夢の中で、耳元に囁かれたのと、まったく同じ――
低くて、熱を含んだ声。律の魂にまで染み渡るような、甘く支配的な響き。あの声。

「――律」

……そうだ。この声は、たしかに夢の中で、僕を縛った――“あの人”の声だ。

魔力と肉体の融合。その深い接触のなかで、魂の奥に封じられていた記憶が、自然と浮かび上がってきた。

ゼルの名を呼ぶ声が重なるたび、夢の輪郭が現実に溶け込んでいく――。

ゼルの身体が律の奥を満たすたび、まるで魔法陣のように、律の肌に薄く浮かび上がる模様。
腹部に宿るそれは、“契印”と呼ばれる聖紋。
――竜王の番である証であり、同時に、律がもう“普通の人間ではない”という刻印だった。

(このまま、俺……)

心も身体も、自分の意思を超えて変化していく。
けれど律は、恐れよりも、深い場所で安堵を覚えていた。

(僕は、もう“ただ使われるだけの人間”じゃない)

愛され、求められ、必要とされている。
たとえそれが、竜という異形の存在に“喰らわれる”形であったとしても。

そしてその夜――律の魔力核は覚醒した。



数日後。
王都は、騒然としていた。

「竜王陛下が、“人間の男”と番契約を結んだらしい……」

「しかも、相手は“異界からの来訪者”だと……?」

「──異例すぎる。国家の根幹に関わる問題だ」

王国の中枢、四大侯家と大司祭庁の間で会議が開かれる。
竜王の番は、“竜族の政治的安定”そのものであり、特に“子を成す可能性”もある存在。
その番が同性の人間――しかも、異界からの存在――というのは、国を揺るがす一大事だった。

「ゼル陛下は、確信的にやったのだろう。あの男に“力”があることを見抜いていた」

「しかし、魔力核が覚醒したという報告は異常です。異界の者が、竜の魔力に適合するなど……」

「もはや“竜喰い”の器である可能性すらある。もし彼が暴走すれば……陛下すら制御できなくなる」

静かに、だが確実に、律への反発と不安が王宮に渦巻き始めていた。




そしてその夜、律はゼルの執務室でその事実を知る。

「……僕が、危険だって……?」

「そう言われている。だが心配するな。お前が“暴走”するような器ではないことは、我が一番知っている」

「でも、ゼルさん……僕、確かに“何か”が変わったんです。
 人の感情に敏感になったり、触れた人の“想念”がぼんやり伝わってきたり……怖くて」

ゼルが近づき、律の頭をそっと抱き寄せた。

「それは“感応系の魔力適応”。お前の核が、我の本質に触れたことで新しい属性に目覚めたのだろう。
 ――本来なら、誰も制御できない力だが。律、お前なら……」

ゼルは、律を、じっと見つめて言った。

「……お前なら、大丈夫だと信じられる」

その声に、律は不意に胸を締めつけられるのを感じた。

(誰かに“信じられる”なんて……僕は、いつ以来だったろう)

あの冷たい社長室。
誰にも必要とされず、透明人間のように働き続けた日々。
今の自分は、あの頃とは違う。

「ゼルさん。……僕、自分の力と向き合いたいです。逃げたくない。
 あなたの番として、あなたの隣に立てるようになりたい」

「……律」

「そのために、“僕自身”の役目をください」

ゼルが、ゆっくりと律の名を呼ぶ。

「――律」

その一言に、律の心の奥がひどく震えた。
どこかで、聞いたことのある声――そう思った瞬間、
かすかに思い出す。あの夢。
黒いソファ、耳元に囁かれたあの低い声。

(……そうだ。この声は、あのときの――)

けれど今はもう、怖くない。
あの夜の声とは違う。同じ名前を呼ばれても、
“縛られる”のではなく、共に立つ者として呼ばれているのだと、確かに感じられた。


ゼルの目が静かに見開かれる。

そして、少しだけ、微笑む。

「ならば、お前に王命を与える。“王族直属の諜報補佐官”として、力を磨け。
 王に属しながら、王を律する役目だ。番の器にしかできぬ、特別な任務だ」

律の目に、決意の炎が灯る。

「はい。お受けします、陛下――いいえ、ゼルさん」

王の番であると同時に、
愛する男の隣に並ぶため。

律の旅路は、今まさに、“個人”として始まった。

---

 🐉次章予告:第四章「王命と秘密の任務」

番契約を公にし、律は王直属の諜報補佐官として新たな立場へ。
だが、律を試すために送り込まれた“新任護衛騎士”の登場に、ゼルの独占欲が再燃。
政治と嫉妬、信頼と快楽――律の試練が始まる。

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