【完結】君の声しか届かない〜癒し系配信者は、不器用な美形同級生でした⁉〜

リリーブルー

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番外編(大学一年生、高校時代の放送部女子視点)

モテなかった話

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 大学の昼休み。キャンパス近くのベンチに座って、コンビニおにぎりを食べながら、千歳はふと口を開いた。

「ねぇ、柊くんってさ、……なんで高校の時、あんなに“他校女子”ばっかに囲まれてたんだろうね?」

 柊は麦茶を飲みながら、無表情で答える。

「顔出ししたからじゃね?」

「いや、それはわかるけど、同じ高校の女子からは……全然キャーキャー言われてなかったじゃん」

「……あいつら、勉強しかしてなかったからな」

「うん。進学校だったしね。“モテ”とかに構ってる暇ない、って感じだった」

 ふたりで同時にうなずく。

「柊くん、席で寝てるか、イヤホンしてるか、教科書もノートも出さずに黒板を睨んでるか、しかなかったし」

「でも、テストは普通に点とってたぞ」

「そこがまた、ムカつくって言ってた女子もいたよ。“勉強してないくせに点取るのマジで許せない”って」

「してないって決めつけるの、偏見じゃん」

「してたの?」

「してない」

「でしょ」

 千歳が笑うと、柊は肩をすくめた。

「ていうか俺、高校の女子から“人間性に難あり”って言われてたらしいぞ」

「えー、失礼だなー。まあ、ちょっとわかるけど」

「わかるのかよ! あと“目つきが悪い”とか、“話しかけにくい”とか、“返事が塩対応すぎる”とか、“声が低すぎて怖い”とか、“話してるのに全然目合わせない”とか、“突然いなくなる”とか」

「たくさんあるね!?」

「ていうか全部、千歳も思ってただろ?」

「うん、第一印象、すごい怖かったもん」

「だろ。だからモテなかった」

 千歳はふふっと笑って、空を見上げた。

「でも、それも柊くんだし。高校の女子たちが放っておいてくれてよかったよ、変にモテなくて」

「……独占欲?」

「ちょっとはある。ていうか、柊くんが甘えてくれるの、僕だけだったしね」

「甘えてねーし」

「はいはい」

「……まあ、今さらだけど、俺も千歳以外に“気を使おう”って気にならなかったからな。正直、助かった。進学校、最高」

「なにその結論」

「俺を放っておいてくれる女子、高評価」

「最低じゃん。でも、ちょっとわかるかも」

 柊は空を見上げて、ひとこと。

「……あいつら、意外といい奴らだったよな」

「うん、ドライで優しいとこ、あったよね」

「“芸能界行くんでしょ、あんま関わらない方がいいかなって思ってた”って卒業式に言われた」

「それはそれで切ない」

 静かに笑い合う春の昼下がり。

 ふたりの過去には、華やかなモテ話なんてなかったけれど、それでも十分すぎるくらい、面白かった。

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