潤 閉ざされた楽園

リリーブルー

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第十四章 礼拝堂にて

潤の部屋で

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 潤と瑶は、靴を脱いで家に上がり、洗面所で手を洗った。潤は、顔を洗って、新しいタオルで顔をぬぐっていた。
 潤は、乾燥機から、洗濯物を出して、かけてあったメッシュのバッグに入れて二階の自分の部屋に運んだ。瑶も後に続いた。
 潤の部屋で、潤は、洗濯物をクローゼットにしまいながら瑶に聞いた。
「瑤、どうする?  もう帰っちゃう? それとも、夕飯食べてく?」
尋ねてはいるけれど、瑶には、潤が瑶に帰ってほしくないと思っているように聞こえた。
「譲さんが車で送ってくれるって言ってたのって、本当かな?」
と瑶は聞いた。
「うん。たぶん譲でも、叔父様でも、どっちでも送ってくれると思うよ。でも、そしたら僕も同乗するよ。だって彼らは送り狼だから」
潤は声をたてて笑った。瑶が、きょとんとしているのに気づいた潤は、笑うのをやめて言った。
「もう一晩、泊まってくのもありだよ」
潤の目つきは、あからさまに媚びるような上目づかいになっていた。瑶を性的に誘っているのだと思った。
 瑶は、潤の言葉の意味に気づいて、泊まっていくと素直に答えられなくなってしまった。そんな風に誘われなくても、潤ともう少しいっしょにいたい気持ちだったのに。そんなことをするためにでなく、ただ友達として、いっしょにいたいと思っていたのに。
 昼食の時に、潤にひどいことを言われて、瑶との関係は、遊びだなんて言われて、悲しくて泣いてしまったことも思い出された。そうだ、やっぱり、潤は、自分を、もてあそぼうとしているだけかもしれない。潤の媚びた妖しい目つきに、瑶は疑いの目を向けた。
 けれど、ちゅうちょしている瑶に業を煮やしたように、
「俺は、もう少し、瑶といっしょにいたいんだけど」
と潤に言われると、
「うん、僕も」
と言わざるを得ない自分に、つくづく嫌気がさした。潤を前にすると、拒否することが、なぜかできないのだった。友達として、いっしょにいたいだけだよ、と言いたかったけれども、わざわざそんなことを言ったら、逆に何か期待しているみたいに思われやしないかと危惧して、瑶は結局何も言えなかった。

「なんなら、ずっといっしょにいたい」
潤が、さりげなく、つけたした。その目つきは、相変わらず誘うような目つきだったので、瑶は、どぎまぎした。
「え? それって、もしかしてプロポーズ?」
と瑶が聞き返すと、
「まさか。単に、一人でいたくないからだよ」
などと、瑶を、がっかりさせるようなことを、潤はあっさり言ってのけた。
 瑶は、自分の勘違いに恥ずかしくなって、照れ隠しに、潤を後ろから、羽交い締めにしてやった。
「えっ? 俺、瑤に襲われちゃうの?」
「違うよっ」
瑶は、あわてて潤を放した。
「なんだ、もう終わりなの? もっとしてよ」
潤は、瑶をからかっているのかもしれないが、そんなことを言われて、瑶は、ますます恥ずかしくなり、
「潤のヘンタイ!」
と潤を突き飛ばしてしまった。潤は、よろけてベッドに倒れた。
「わ、ごめん。大丈夫?」
瑶は、心配して、ベッドに倒れている潤に近寄った。瑶が近づくと、潤は瑶の手首をつかんで瑶を引き寄せて言った。
「したい」
潤の言葉に、今度こそ流されまいと、瑶はきっぱり断った。
「僕は、したくない」
瑶が断ると、潤はつまらなそうに、
「あ、そう」
と言って、瑶の手首を放した。瑶は、少しがっかりした気分になった。潤につきあえばよかったかな、とも後悔したけれど、そんなことばかりしすぎだろうと思ったのだ。

 潤は、瑶を挑発するように、いやらしく一人でベッドにうつ伏せになって、腰をすりつけだした。
「ちょ……ちょっと、潤……なにしてるの……」
瑶は、潤のふるまいに、あわてて、制止しようとして、とがめた。潤は、攻撃的な、いやらしさでもって、瑶の制止を無視した。
「潤、そんなこと、やめなよ……」
一人で息を荒くしている潤に、瑶は、たじろいだ。
「あっ、あぁん、コウさん、好き。コウさん、あっ、ああん、だめ、コウさんの、んんっ、だめ、兄さんに、見られちゃうよぉ。コウさんの、気持ちいいよぉ」
潤が一人で悶えていた。
「ちょっと、潤……なんで、僕の前で、コウさんなの?」
瑶は、とがめた。
「瑤でしてほしかった?」
潤が振り向いて聞いた。
「いや……なんで、僕がいるのに、コウさんなの?」
「昼食の時、思い出してたから」
潤は、あっさり答えた。
「ふうん……」
「怒った?」
「ちょっと」
「ほんと? ごめんね」
潤は、瑶の手を引っ張った。瑶は潤の隣に横たえさせられた。潤が瑶の髪を撫でていた。瑶は、潤の方を向いて聞いた。
「ねえ、潤は、コウさんが好きなの?」
「別に? そういうわけじゃないよ」
「じゃあ、誰が一番好き?」
「瑶って言ってほしいの?」
「うん……」
「じゃあ、瑶」
「じゃあ、なんて、ダメ」
「瑶が一番好きだよ」
「嘘ばっかり……」
「だったら何て言えばいいんだよ」
「言うだけじゃダメ。ほんとにそうでなければ……」
「怒ってるの?」
潤が微笑んだ。瑶は、何もかも、どうでもよくなった。あーあ、またうやむやにされてしまった。

 瑶は、愛する潤のベッドで、潤の隣で甘美な安らぎを得た。
 キルトのベッドカバーの上に、服のまま寝転がって、潤は紅色の柔らかいスローをお腹に掛けて寝息をたてていた。
 瑶は、潤がしまいそびれてあった大きな白いバスタオルにくるまった。
 潤の部屋の、窓の外の空は薄いブルーから藍色に、刻々と深みを増していた。淡い光が力を失い、再び景色が薄闇に沈んでいった。
 瑶は、そんな夕方の眠りの中で、夢を見た。愛しい恋人の側で眠りながら見る夢は、やはり、エロティックな夢だった。

 瑶と潤は、夕闇の礼拝堂の中で、妖しいセックスにふけっていた。
 身体が熱かった。燃えるようなオレンジ色の夕陽が、窓から見える空を染めていた。背徳と禁断の香り。
「あ、ああ」
深いため息のように、潤は、うめいた。
 うめき声をあげながら、潤は求めた。
「瑤、もっと、突いて」
瑶は、立ったまま、性器で潤を串刺しにした。潤の身体が、瑶の突き上げで、人形のように、ゆさゆさ揺さぶられた。
「あっ、あっ、あっ」
揺さぶられる動きに合わせて、潤の口から短い喘ぎ声が漏れた。潤の黒髪が乱れて、汗が額に浮かんでいた。
 瑶は、潤の汗の匂いを嗅いで興奮した。
潤の身体の重みで、瑶のペニスが潤のアナルに奥までぐいぐい突き刺さってしまっていた。
 人形のように揺さぶられる潤の身体は、手足の先が、ビリビリと震え痺れているように痙攣していた。
 向かい合わせで瑶のペニスを乱暴に突き上げてやると、潤は、ぐらぐらと頭も身体も手足も震えさせ、目は虚ろ、口からはよだれ、中毒患者のようないやらしい有り様をさらして絶叫しはじめた。
「アああー! アアああああー!」
「淫乱だよ、潤は、すごく淫乱。中に出してやるよ、いっぱい、嬉しい?」
「出して! 出して、瑤の、いっぱい出して!  瑤の好き、瑤の○○○ん好き、俺で遊んで、俺を玩具にして、あっアあああ」
「遊んでやるよ、遊びの関係なんだろ? 快楽地獄に堕ちよう。いいよ、潤、もっといやらしく、もっと乱れて見せてよ」
「ああああー! 見て、潤のいやらしい姿、見て。瑤に見られたい、んあぁぁ」
潤の絶叫が、空間に響いていた。
「この淫乱。潤は淫乱だよ、誰とでも寝る淫乱」
「ごめんなさい、ああぁぁ」
潤の乳首をピンと爪ではじくと、潤の下腹部からビュッと、液体が飛び出した。
 潤の胸やお腹を、潤の精液が濡らした。
「エッチな潤。出しちゃったね」
「あっ、ああんっ、出ちゃったのぉっ」
「ほんと、いっぱい、出ちゃったね」
「いやあぁぁ」
キスしてやると、ぬめぬめした舌が必死で吸い付いてきた。
 まるで本当に愛されているかのようだった。
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