潤 閉ざされた楽園

第十五章 晩餐にて

間男

「へえ、じゃあ愛してるとでも？」

おじ様が、馬鹿にしたように尋ねた。

「あたりまえだろ」

潤が、ムッとした口調で答えた。

「間男の立場で、よくぬけぬけと言えるね」

おじ様は嘲笑った。

「叔父様が強要したくせに」

潤が、おじ様を睨んだ。

「強要などしていないよ。勝手に君らが、そんな関係になっていて、びっくりしたのは私の方だからね」

おじ様は、ぬけぬけと言った。

「そんなの、うそだ」

潤は、語気を荒くした。

「まあ、私は悪役になるのが好きだから、潤の思うようにしてくれて構わないけれどね。それにしても、潤が、そんなに本気で倫子が好きとは驚いたね。ばかなやつだ。二人とも」

「俺が悪いんだよ」

潤が静かに言った。

「そんな、大人をかばったりして。そんなことは、やめなさい」

おじ様は、ため息をついた。

「恋人きどりは、しなくてよろしい。お前は、息子なんだから、親をかばうことはない」

おじ様は、時々正しいことを言う。

デタラメに時々正しさが混ざっていると、余計混乱するだろう。

正しさの中に、嘘が入っていると、嘘が本当に見えるように。


「あのう、つかぬ事をお伺いしますが、これって、馬刺しですよね？」

僕は、やっぱり食べたくなってきて尋ねた。

「君は、何を言い出すんだね？」