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第四章
竹春の語り 6
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教科書を取り出して鞄に詰め込むと、立ち上がって、私を無視して歩き出した。
「兄さん」
私は、三年生の絡みつく腕を振り切って、兄を追いかけた。
「おい、本当に兄弟だぜ」
ガヤガヤする声を後に、私は、古びた猥雑な鉄筋校舎の三階から階段を降りていった。
昇降口まで来て、私は、兄を見失わないように、いそいで上履きのサンダルを靴に履き替えた。
「竹秋兄さん」
私は、校門まで追いかけて、やっと追いついた。
「兄さん、歩くの早いよ」
私は、ぜいぜい肩で息をした。
兄は、何も答えずに、単語カードを繰っていた。
「ねえ、兄さん、怒ってるの?」
私は、兄の重そうな鞄を持った。
「何?」
「持つよ」
「いいよ、自分の荷物だ」
「兄さん、身体弱いんだから無理しなくていいよ」
「お前こそ、息せききって、案外弱いじゃないか」
「それは……」
「触られて、興奮してたからか?」
「そう!」
兄は、私をにらんだ。
「お前ってやつは」
「違うよ、誤解だよ。兄さんを迎えに行ったら、からまれたんだ。囲まれて。上級生殴るわけにもいかないから」
「で、触らせて、勃起させてたのか」
「に、兄さん、そんな言葉」
真昼間の人通りのある通学路で、きれいな顔した兄さんの口から、そんな卑猥な言葉が出るのは、聞く方が恥ずかしかった。
「兄さん」
私は、三年生の絡みつく腕を振り切って、兄を追いかけた。
「おい、本当に兄弟だぜ」
ガヤガヤする声を後に、私は、古びた猥雑な鉄筋校舎の三階から階段を降りていった。
昇降口まで来て、私は、兄を見失わないように、いそいで上履きのサンダルを靴に履き替えた。
「竹秋兄さん」
私は、校門まで追いかけて、やっと追いついた。
「兄さん、歩くの早いよ」
私は、ぜいぜい肩で息をした。
兄は、何も答えずに、単語カードを繰っていた。
「ねえ、兄さん、怒ってるの?」
私は、兄の重そうな鞄を持った。
「何?」
「持つよ」
「いいよ、自分の荷物だ」
「兄さん、身体弱いんだから無理しなくていいよ」
「お前こそ、息せききって、案外弱いじゃないか」
「それは……」
「触られて、興奮してたからか?」
「そう!」
兄は、私をにらんだ。
「お前ってやつは」
「違うよ、誤解だよ。兄さんを迎えに行ったら、からまれたんだ。囲まれて。上級生殴るわけにもいかないから」
「で、触らせて、勃起させてたのか」
「に、兄さん、そんな言葉」
真昼間の人通りのある通学路で、きれいな顔した兄さんの口から、そんな卑猥な言葉が出るのは、聞く方が恥ずかしかった。
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